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目が覚めると病院にいた
兄が俺の手を握っていた
「陸、目が覚めたのか。良かった…」
むしろ兄の方が……兄の目は腫れ上がっていて多分たくさん心配をかけた
無意識に首に手が伸びて、硬さで気が付いた。大丈夫、首輪はついている
「俺はそんなに頼りないか」
兄が責めるように俺を見た
ピッチングされたあの日、大学までついてきてほしいと言わなかったことを言っているのだろう、今回の事、予想がついていたなら何故頼らなかった、と。
けれど、兄がいたところで大して事態は変わらなかったと思う。むしろ蓮兄さんが大変なことになっていたはずだ。京極はそれだけの力を持っている。俺はできる範囲で最善を尽くしたはずだ
「兄さんは力になってくれたよ。この首輪をちゃんと俺に届けてくれた。だから俺は まだ未契約のΩがいれている。京極と番っていたら、 こんな風に過ごしたりはできなかったよ」
「……その首輪、随分ととお前にぴったりだな」
「うん、コンちゃんが俺の為に選んでくれたんだ。本当は 俺がこんちゃんに首輪をプレゼントしたかったのにな……」
「ソレが用意されたのはだいぶ前だ!こんな事になると分かっていたなら、こんなの送るよりももっと他の対応が出来たはずだろう!コンちゃんとやらは何を考えてるだ!」
『陸、これあげる。ロックを設定したら、おにいさんの所に預けておいてね!』
帝都大合格祝い会の時に渡された首輪。しかも二つ。
『いやいやコンちゃん!俺α。君に贈る立場!』
2つとも有名メーカーのだ。けれど……
『コンちゃん、コレ…』
賛否両論あった……いや、発売当初から非難が集中した首輪を持ち上げると、
『安心感やつけ心地は悪く無いんだけどね。ウケ狙いだよ。本命はこっちだから。』
そう言ってもう一つの方を指指した。
…………でも、曖昧な笑顔。コンちゃんがしているネックガードは俺が手に持ってるコレなのだろう。
β達がひいた首輪、他の者の番になるくらいなら死んでしまえ、そんなαの妄執を体現したような機能の首輪に嫌悪感を抱く。
思わず顔をしかめた俺に コンちゃんがふふっと笑った
『陸らしいね。でもね、意外に思うかもしれないけれどΩ受けはいいのよ。コイツとだけは死んでも番いたくないってΩが、自ら買うこともあるんだから』
『いや、でも、番契約の解除だって大変だけど出来るじゃないか!こんな選択は間違っている!』
『そうだね。でも世の中はそんなにΩに優しくない。だったら破れかぶれでも一矢報いたいじゃん?』
納得できなかった。こんなネックガードをコンちゃんがつけなきゃならない社会にも、コンちゃんがコレで安心を得ていることも。
『ねぇ、俺にネックガードプレゼントさせて?』
最高級品を送ろう、最大の防犯機能がついたネックガードを。分かってる、コンちゃんは裕福だ。俺が贈りたいと思ったネックガードなんて簡単に買える、だから、このネックガードはソレを越える価値がコンちゃんにとってあるのだ。
でも、納得なんてできない。
最高級品を贈ろう。
ちょっと、いや、かなり嫌だけど蓮兄さんにマーキングもお願いして。本当は俺がニオイづけしたネックガードを渡したいけれど底辺αのマーキングなんて上位には無意味だから。俺の想いよりもコンちゃんの安寧が大事だから。
だから、コンちゃん。
こんなネックガードに価値なんて見出さないで……。
その頃の俺は、傲慢だったんだ。下位とはいえαだったからΩの恐怖を分かって無かった。
Ωになって京極に狙われて初めてコンちゃんの恐怖が、このネックガードを頼ってしまう気持ちが分かった。
Ωにはこんな方法しか残ってないのだ…
「コンちゃんは最大限の事をしてくれたよ。俺が……愚かだっただけで。」
兄さんが口を開きかけて、そしてやめた。
「…………」
兄が俺の手を握っていた
「陸、目が覚めたのか。良かった…」
むしろ兄の方が……兄の目は腫れ上がっていて多分たくさん心配をかけた
無意識に首に手が伸びて、硬さで気が付いた。大丈夫、首輪はついている
「俺はそんなに頼りないか」
兄が責めるように俺を見た
ピッチングされたあの日、大学までついてきてほしいと言わなかったことを言っているのだろう、今回の事、予想がついていたなら何故頼らなかった、と。
けれど、兄がいたところで大して事態は変わらなかったと思う。むしろ蓮兄さんが大変なことになっていたはずだ。京極はそれだけの力を持っている。俺はできる範囲で最善を尽くしたはずだ
「兄さんは力になってくれたよ。この首輪をちゃんと俺に届けてくれた。だから俺は まだ未契約のΩがいれている。京極と番っていたら、 こんな風に過ごしたりはできなかったよ」
「……その首輪、随分ととお前にぴったりだな」
「うん、コンちゃんが俺の為に選んでくれたんだ。本当は 俺がこんちゃんに首輪をプレゼントしたかったのにな……」
「ソレが用意されたのはだいぶ前だ!こんな事になると分かっていたなら、こんなの送るよりももっと他の対応が出来たはずだろう!コンちゃんとやらは何を考えてるだ!」
『陸、これあげる。ロックを設定したら、おにいさんの所に預けておいてね!』
帝都大合格祝い会の時に渡された首輪。しかも二つ。
『いやいやコンちゃん!俺α。君に贈る立場!』
2つとも有名メーカーのだ。けれど……
『コンちゃん、コレ…』
賛否両論あった……いや、発売当初から非難が集中した首輪を持ち上げると、
『安心感やつけ心地は悪く無いんだけどね。ウケ狙いだよ。本命はこっちだから。』
そう言ってもう一つの方を指指した。
…………でも、曖昧な笑顔。コンちゃんがしているネックガードは俺が手に持ってるコレなのだろう。
β達がひいた首輪、他の者の番になるくらいなら死んでしまえ、そんなαの妄執を体現したような機能の首輪に嫌悪感を抱く。
思わず顔をしかめた俺に コンちゃんがふふっと笑った
『陸らしいね。でもね、意外に思うかもしれないけれどΩ受けはいいのよ。コイツとだけは死んでも番いたくないってΩが、自ら買うこともあるんだから』
『いや、でも、番契約の解除だって大変だけど出来るじゃないか!こんな選択は間違っている!』
『そうだね。でも世の中はそんなにΩに優しくない。だったら破れかぶれでも一矢報いたいじゃん?』
納得できなかった。こんなネックガードをコンちゃんがつけなきゃならない社会にも、コンちゃんがコレで安心を得ていることも。
『ねぇ、俺にネックガードプレゼントさせて?』
最高級品を送ろう、最大の防犯機能がついたネックガードを。分かってる、コンちゃんは裕福だ。俺が贈りたいと思ったネックガードなんて簡単に買える、だから、このネックガードはソレを越える価値がコンちゃんにとってあるのだ。
でも、納得なんてできない。
最高級品を贈ろう。
ちょっと、いや、かなり嫌だけど蓮兄さんにマーキングもお願いして。本当は俺がニオイづけしたネックガードを渡したいけれど底辺αのマーキングなんて上位には無意味だから。俺の想いよりもコンちゃんの安寧が大事だから。
だから、コンちゃん。
こんなネックガードに価値なんて見出さないで……。
その頃の俺は、傲慢だったんだ。下位とはいえαだったからΩの恐怖を分かって無かった。
Ωになって京極に狙われて初めてコンちゃんの恐怖が、このネックガードを頼ってしまう気持ちが分かった。
Ωにはこんな方法しか残ってないのだ…
「コンちゃんは最大限の事をしてくれたよ。俺が……愚かだっただけで。」
兄さんが口を開きかけて、そしてやめた。
「…………」
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