【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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算数のテストが返ってきた。90点だ。満点じゃない。
「なんでこんなことも理解できないんだ?」
同じクラスにいたもう一人のαに不思議そうに言われた。
「お前もαなんだよなあ?」
「……うん」
俺らの小学校に転校してきたα。同じアルファでも俺と彼は違うのだと思い知らされた。
この小学校にたった二人だけのα。でも彼と俺の間には大きな差がある

「陸はこの家初のα様だからな。」
父の口癖だ。
「α様、金儲けして俺らに恵んでくれよな?」
叔父の口癖だ。

学校の授業は楽しい。けれど、楽しくない。
βは漢字をだいたい50回くらい書いて覚える。俺は二三十回。けれど、転校生αは見ただけで覚える。
授業を受ける。転校生は寝ているがそれでも授業は理解している。突然あてられてもすらすらと答える。俺は苦手な科目以外は聞いていればなんとなく分かる。βは先生に質問をしたりして理解をする。俺も苦手な科目は質問をしようとするけれど…、αなんだからわかるよね。嫌味な事をしてはいけないわよ、と、先生に転校生をちらりと見て言われる。
なんで?俺もわからないのに教えてくれないの?

「陸はこの家初のα様だからな。累なんか目じゃねぇぞ」
父の口癖だ。
「陸、金持ちになって俺らに恩返しするんだぞ?」
叔父の口癖だ。

兄さん、授業でわからない箇所があるんだ。教えて?
「αなんだからわかるだろ。僕の勉強時間を奪うな」
なんで?なんで?俺もわからないいってるのに信じてくれないの?
「兄ちゃん、ひどい!」
「累!自分がβだからって弟をやっかむな!」
「そうそう、累。今のうちに陸に恩を売っておけ、将来養ってもらえるぞ~」
父さん、叔父さんがいう。
兄さんが渋々教えてくれる。
「……やっぱり理解は早いな」
「当たり前だろ~。累みたいな似非αとは違うんだよ。陸は正真正銘のアルファ様だからな。」
「…エセってなぁに?」
兄は困った顔をした。
……違う、あれは傷ついた顔だった。

「陸陸、大丈夫か?」
兄に揺すられて目が覚めた。
「う…」
痛みに呻いた。
小さい頃の夢。無自覚に残酷に兄を傷つけていた頃の夢を見ていた。


兄がスーツケースから出してくれた。壁を使って肩を嵌める。
…痛いなぁ。熱っぽいなぁ…無理やり関節を外したから筋繊維を傷つけたのだろう。それで発熱しているのだ。
兄が痛み止めを渡してくれた。
「ありがとう。」
ダウンを中に着込み体のボリュームを変えて変装する。
兄についている見張りと万が一すれ違ってもばれないためにだ。

「りく、やっぱり俺も大学に一緒に行こうか」
「だめだよ。」
大学で手続きをしている間に京極に見つかる可能性が高い。その時、兄は俺を守ろうとするだろう。京極のつがい契約を邪魔した兄を、邪魔しようとする兄を京極は許さないだろう。それは、俺の本意ではない。
「監視の目をごまかしたいんだ。兄さんは旅行に行って欲しい。」
京極に見つかったら俺は無傷では家に帰れない。そんなボロボロの俺を兄に見せたくない。傷ついた俺を見て、兄は
自分の不甲斐なさを呪うだろうから。
「わかった。長居をすると怪しまれるからもう行くね?気をつけて帰ってくるんだよ。」
「うん」
兄の背を見る。
いかないでと手を伸ばしそうになった。怖いんだと手を伸ばしそうになった。レイプされる恐怖を前に兄に縋りつきたくなったでもそれはダメなんだ。
スマートウォッチをぎゅっと握った。










~~~~~~~~~~~~~
記念すべき108回~♪
いや、箸休めがあったから、実際には110回かな。
いずれにしろ、感慨深い……。
飽きっぽい私がこうも続けられるとは。
読者の皆様、ありがとうございます!
皆様のお陰です!
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