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「見張りの数が増えている……」
窓から表を見てため息をついた。
大学を高熱で休み続けたせいで、京極には俺がオメガ化したことはばれているようだ
先日までは一応隠れていた見張りも今では堂々とマンションの前にいた。人数も増えていた。京極はΩの俺を守っているつもりなのだろう。
『陸はね、Ωになったから、京極に頼まれたからと言って大学を中退するの。ヒートに京極を巻き込んじゃったからって。京極を事故ラットにさせて番ってしまった、本来は最も相応しいΩと番うべき人だったのにって。そんな京極に頼まれたら、のまない訳にはいかないって……。って!陸!どんだけお人好しのどんだけドアホなのよ!
京極が陸を書き換えたとも知らずに良心の呵責だぁ?このお花畑!』
『こ、コンちゃん。一応、俺君の婚約者。』
『はああ……いい?陸?あなたが 京極関係なく帝都大を辞めたいと言うならそれはそれでいい。今まで努力してきたことをあなた自身が無駄だったと判断して新しい道を行くと言うならそれはそれでいいと思うの。止めはしない。けど、京極の策略に嵌って言われるがままに退学なんて馬鹿みたいなことはしないで。脳みそお花畑って呼ぶわよ!?』
『いやいやコンちゃん、そんな仮定の話で責めないで!俺は将来コンちゃんのお婿さんになるだからね!?』
帝都大受験を大反対していたコンちゃん。 それでも合格すれば喜んでくれて、お祝い会もしてくれて、そして酔っ払ってそんなことも叫んでいたな……。
あの時はコンちゃんのその言動を不思議ちゃん、としか処理してなかった。
…………本当にΩになってしまうとは。正直なところ室内で安静にしている分にはあまり実感はない。ヒートにでもなってしまったら、思い知らされるのだろうけど、今はただ試験紙のメーターが振り切ったという事実だけ。
「さて、行くか」
重い腰を上げる
「本当にこんなかに入るのか?」
有休をとった兄さんがいう。兄はこれから3泊四日の旅行だ。そして俺はその荷物としてこの家を出る。
大きすぎるスーツケースでは怪しまれるから関節を外せば入れる、そんなサイズのスーツケースを用意してもらった。発熱初日に、兄に頼み込んだ。一週間後に旅行をしてほしいと。一種の保険。発熱がばれなければそれはそれで良かったのだが。結局、保険は有効になってしまった。
発熱3日目にして京極ばれた。解熱剤を倍飲みもしていたから体温はそれなりに下げれていた。それでなんとか3日を稼いでいた。だから京極はまだ俺が熱で寝込んでいると思っているはずだ。
見張りの数が増えたとは言え、まだ室内から出ることはかなわないターゲットならば、これから旅行の兄がやや大きなスーツケースで出て行こうと不審には思われないで済む。
中退などしてたまるか。
どれだけ俺が帝都大に入る為に頑張ってきたか。
リモート受講の申請だけはしたい。
困った事にリモート受講の申請はなぜか直接学生課に届けでなければならないのだ。
大学に行けないから、リモートの申請をするのに大学に来いって矛盾しているけれど、そんなこと俺が叫んだところで手続きが変わってくれるわけじゃない。
理想を言うなら、京極に見つかる前に申請が受理されて家に帰って来ることだ。たぶんそれはかなり難しいことだとわかっている。
見張りをまいても大学には京極のネットワークがある。変装した俺が学生課に行っても申請書に氏名を書いて提出した時点で京極の元へ連絡が行くだろう。
『陸が高熱あけてから初めて大学に登校した日に陸はポテポテと京極の借り上げてる部屋に付いてって!そしてそこで京極の誘引フェロモンによってヒートにさせられる。おバカな陸はやつが仕掛けたっていうのを気がつかないままに、そこで番ってしまうの。』
コンちゃんが言っていることは、こまごまと違う箇所もあるが、時間軸はあっている。梅雨明けに俺が京極に見つかってしまうことも言い当てた。だから。今日これから学生課に行くということは、この時に襲われる可能性は高いのだろう。
その危険は冒したくなない。行きたくはない。けれど、医師の診断書もないまま欠席をしていればいずれ退学になってしまう。リモート受講の申請だけはしなければならないのだ。
中退などしてたまるか。
関節を外す。
手がブランブランになった。痛みで脂汗が出る。
「り、陸…」
兄が泣きそうな顔で俺を見る。
「いいから、兄さん。協力して」
兄さんの心配をよそにスーツケースの中に何とか納まる。兄さんにも監視はついているが、漣兄さんのお手付き、それなりに上位αの恋人にあまり非礼を働けない。乗り換え駅のトイレに入っていく時に一緒に入るなどという事は出来ないはずだ。そこで俺はスーツケースから出て、大学に向かう予定だ。
漣兄さんにばれたら、累を巻き込んでって怒られるだろうな…
肩が熱を持ち始めた。
ここから出たら肩を嵌めないとな。
こんなことのためにクラヴ・マガ習ったわけではないんだけれどなぁ…コンちゃんを守るための武術だったんだけど…
そんなことを想いながら痛みのなか失神した。
~~~~~~~~~~~~~~
そのうち、累兄さんと鬼畜漣兄さんの話も書く予定です。(というか書いてる最中。アップはこの作品が終わってからななぁ…)
この時の陸も漣兄さん視点でさらりと書く予定…
窓から表を見てため息をついた。
大学を高熱で休み続けたせいで、京極には俺がオメガ化したことはばれているようだ
先日までは一応隠れていた見張りも今では堂々とマンションの前にいた。人数も増えていた。京極はΩの俺を守っているつもりなのだろう。
『陸はね、Ωになったから、京極に頼まれたからと言って大学を中退するの。ヒートに京極を巻き込んじゃったからって。京極を事故ラットにさせて番ってしまった、本来は最も相応しいΩと番うべき人だったのにって。そんな京極に頼まれたら、のまない訳にはいかないって……。って!陸!どんだけお人好しのどんだけドアホなのよ!
京極が陸を書き換えたとも知らずに良心の呵責だぁ?このお花畑!』
『こ、コンちゃん。一応、俺君の婚約者。』
『はああ……いい?陸?あなたが 京極関係なく帝都大を辞めたいと言うならそれはそれでいい。今まで努力してきたことをあなた自身が無駄だったと判断して新しい道を行くと言うならそれはそれでいいと思うの。止めはしない。けど、京極の策略に嵌って言われるがままに退学なんて馬鹿みたいなことはしないで。脳みそお花畑って呼ぶわよ!?』
『いやいやコンちゃん、そんな仮定の話で責めないで!俺は将来コンちゃんのお婿さんになるだからね!?』
帝都大受験を大反対していたコンちゃん。 それでも合格すれば喜んでくれて、お祝い会もしてくれて、そして酔っ払ってそんなことも叫んでいたな……。
あの時はコンちゃんのその言動を不思議ちゃん、としか処理してなかった。
…………本当にΩになってしまうとは。正直なところ室内で安静にしている分にはあまり実感はない。ヒートにでもなってしまったら、思い知らされるのだろうけど、今はただ試験紙のメーターが振り切ったという事実だけ。
「さて、行くか」
重い腰を上げる
「本当にこんなかに入るのか?」
有休をとった兄さんがいう。兄はこれから3泊四日の旅行だ。そして俺はその荷物としてこの家を出る。
大きすぎるスーツケースでは怪しまれるから関節を外せば入れる、そんなサイズのスーツケースを用意してもらった。発熱初日に、兄に頼み込んだ。一週間後に旅行をしてほしいと。一種の保険。発熱がばれなければそれはそれで良かったのだが。結局、保険は有効になってしまった。
発熱3日目にして京極ばれた。解熱剤を倍飲みもしていたから体温はそれなりに下げれていた。それでなんとか3日を稼いでいた。だから京極はまだ俺が熱で寝込んでいると思っているはずだ。
見張りの数が増えたとは言え、まだ室内から出ることはかなわないターゲットならば、これから旅行の兄がやや大きなスーツケースで出て行こうと不審には思われないで済む。
中退などしてたまるか。
どれだけ俺が帝都大に入る為に頑張ってきたか。
リモート受講の申請だけはしたい。
困った事にリモート受講の申請はなぜか直接学生課に届けでなければならないのだ。
大学に行けないから、リモートの申請をするのに大学に来いって矛盾しているけれど、そんなこと俺が叫んだところで手続きが変わってくれるわけじゃない。
理想を言うなら、京極に見つかる前に申請が受理されて家に帰って来ることだ。たぶんそれはかなり難しいことだとわかっている。
見張りをまいても大学には京極のネットワークがある。変装した俺が学生課に行っても申請書に氏名を書いて提出した時点で京極の元へ連絡が行くだろう。
『陸が高熱あけてから初めて大学に登校した日に陸はポテポテと京極の借り上げてる部屋に付いてって!そしてそこで京極の誘引フェロモンによってヒートにさせられる。おバカな陸はやつが仕掛けたっていうのを気がつかないままに、そこで番ってしまうの。』
コンちゃんが言っていることは、こまごまと違う箇所もあるが、時間軸はあっている。梅雨明けに俺が京極に見つかってしまうことも言い当てた。だから。今日これから学生課に行くということは、この時に襲われる可能性は高いのだろう。
その危険は冒したくなない。行きたくはない。けれど、医師の診断書もないまま欠席をしていればいずれ退学になってしまう。リモート受講の申請だけはしなければならないのだ。
中退などしてたまるか。
関節を外す。
手がブランブランになった。痛みで脂汗が出る。
「り、陸…」
兄が泣きそうな顔で俺を見る。
「いいから、兄さん。協力して」
兄さんの心配をよそにスーツケースの中に何とか納まる。兄さんにも監視はついているが、漣兄さんのお手付き、それなりに上位αの恋人にあまり非礼を働けない。乗り換え駅のトイレに入っていく時に一緒に入るなどという事は出来ないはずだ。そこで俺はスーツケースから出て、大学に向かう予定だ。
漣兄さんにばれたら、累を巻き込んでって怒られるだろうな…
肩が熱を持ち始めた。
ここから出たら肩を嵌めないとな。
こんなことのためにクラヴ・マガ習ったわけではないんだけれどなぁ…コンちゃんを守るための武術だったんだけど…
そんなことを想いながら痛みのなか失神した。
~~~~~~~~~~~~~~
そのうち、累兄さんと鬼畜漣兄さんの話も書く予定です。(というか書いてる最中。アップはこの作品が終わってからななぁ…)
この時の陸も漣兄さん視点でさらりと書く予定…
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