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D…猪瀬
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ちょっと箸休め
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大学内のレンタルルーム。梅雨明け直後の空は晴天で、気持ちいいはずなのに……苦虫を噛み潰したかのような貴嗣様。
俺達が仕事をしている中、青島がスマホを見てくふくふと笑っている。こういう時は大抵コンちゃん絡みだ。
それが分かっているから、貴嗣様の機嫌は最悪だ。
「猪瀬、書類がなってない。すぐやり直せ」
「はい」
側近候補Dの作った見積りだ。貴嗣様に提出する前に俺も確認はしているが見落しがあったようだ。…………普段は不備の箇所を教えてくださるのだが、完璧だと思っていただけにミスの箇所の想像がつかない。
貴嗣様のピリついた声に青島が顔をあげて貴嗣様を見る
「お疲れですか?」
…………お前のせいでな!
「お茶入れます?もしくはこの動画なんていかがですか?可愛いですよ?」
言いながら、青島が自身のスマホを差し出した。
なんだ。青島は動物動画を見ていただけか。貴嗣様の表情が緩む。
「陸はピレニーズが好きなのか?」
「はい。真っ白いもっふもふの巨体、良いですよね~」
「……この動画、アップされて間もないな。陸も初めて見るのか」
「はい」
「見にくいだろう」
そう言って青島の手をとりソファへと移動する。
スマホの小さい画面を二人で見る。プロジェクターもあるんですけどね!身を寄せ合うしか無くて、時折肩が触れ合って貴嗣様はご満悦だ。
「京極様」
Dが有線タイプのイヤホンを渡す。
「ありがとう」
貴嗣様が青島以外にお礼を言うとは!
「ほら、陸。音があったほうが面白いだろう」
片耳にイヤホンを差し込み、もう一方を青島の右耳に差し込んだ。
必然、二人の距離が更に近くなる。
…………アオハルですか?
だが!
D.グッジョブ!
俺達が見落した書類ミスの箇所をこれで聞き出せる!
「可愛いかったなあ。ピレニーズ…」
「陸は飼わないのか?」
「飼いたかったんですけどね。家も広くないし散歩の時間も確保できないしで諦めました」
「猪瀬」
はいはい。ピレニーズですね。いいブリーダー探しておきます。
「ん?陸はこのピレニーズしか見てないのか」
閲覧履歴を見た貴嗣様がいう。
「たまに他のも見ますけど、ほぼこのコですね。」
いや、ソレは困る。ピレニーズを買うことはできるが、特定のピレニーズは難しい。ましてやユーチューバーのなんて、そうそう手放さなしてくれないだろ
「青島はこのピレニーズの何処が好きなんだ?」
後から覗き込んで尋ねる。二人の世界に割り込んでくるな、と、貴嗣様が嫌そうな顔をしたが無視だ無視。
「頭の良さとこのサイズ感です!」
…………仔犬を買ってきてもダメなヤツじゃないか。サイズは両親の体重で想像はつくがあくまでも想像だ。頭は…これまた躾だけではどうにもならんし。どうしろと?
「そして何よりこの愛嬌!」
更に個体差があるヤツじゃないか。
へへへ……と青島が笑い貴嗣様が更にデレた。まあ、この距離で青島の笑顔は中々無いからな。
「青島、そういえばピレニーズオフ会があるぞ」
そう言って千葉が自身のスマホを貴嗣様越しに差し出した。
「ええ!」
青島が勢いよくスマホを覗き込むがその直前に千葉が身を引いた
「あ、これピレニーズ同伴が参加条件だった。」
勢いのままに青島が貴嗣様の膝の上に倒れ込んだ。貴嗣様が凍り付く。恐る恐るその手が動き青島にそっと触れる。
神々しい笑み。
「こっちぢこっち。参加条件、ピレニーズ同伴かもしくは犬を同伴していないピレニーズ好きオンリー。ほれ、見ろよ青島」
青島がそのまま手を伸ばす。
ピレニーズに夢中の青島の体は貴嗣様の膝の上に乗った状態だ。
青島はそれどころではないのだろう。 千葉 のスマホを覗き込んで操作しながら、うんうんとか唸っている
「陸……!」
太腿の上をモゾモゾ動く青島に貴嗣様が悲鳴をあげる。慌てて青島を引き剥がしてソファから立ち上がる。
「え?あ、すすみません!」
「あ、いや、そうじゃなくて」
ピレニーズに夢中になって非礼を働いていた事に気が付いた青島が慌てて謝罪する。誤解されて更に慌てふためく貴嗣様。腰がひけてる……。考えたくねぇ。
「京極」
千葉がきらりと光る何かを貴嗣様に渡す。鍵か。千葉は千葉でレンタルルームを借り上げているからそこのだろう
「ごゆっくり」
ケラケラ笑う千葉を尻目にドアへと貴嗣様が足早に向かわれる。
「あの……」
側近候補Dが貴嗣様に声をかける
「z社の業績予想!今朝のニュースで20パーを確信した。それでやり直せ!」
いや、市場予想は18で、流石に貴嗣様の20を想定しての書類作成は無理でしたよ……。
突然、出ていかれた貴嗣様に目を白黒させる青島。
「俺!謝罪してきます!」
「追いかけるなボケ!」
「でも!」
「想像さすなボケ!」
「良いねぇ、アオハル」
部屋を出ていく貴嗣様、怒鳴る俺を横目に千葉がクツクツ笑いながらいう。
…………これの何処がアオハルだ!
ちょっと箸休め
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大学内のレンタルルーム。梅雨明け直後の空は晴天で、気持ちいいはずなのに……苦虫を噛み潰したかのような貴嗣様。
俺達が仕事をしている中、青島がスマホを見てくふくふと笑っている。こういう時は大抵コンちゃん絡みだ。
それが分かっているから、貴嗣様の機嫌は最悪だ。
「猪瀬、書類がなってない。すぐやり直せ」
「はい」
側近候補Dの作った見積りだ。貴嗣様に提出する前に俺も確認はしているが見落しがあったようだ。…………普段は不備の箇所を教えてくださるのだが、完璧だと思っていただけにミスの箇所の想像がつかない。
貴嗣様のピリついた声に青島が顔をあげて貴嗣様を見る
「お疲れですか?」
…………お前のせいでな!
「お茶入れます?もしくはこの動画なんていかがですか?可愛いですよ?」
言いながら、青島が自身のスマホを差し出した。
なんだ。青島は動物動画を見ていただけか。貴嗣様の表情が緩む。
「陸はピレニーズが好きなのか?」
「はい。真っ白いもっふもふの巨体、良いですよね~」
「……この動画、アップされて間もないな。陸も初めて見るのか」
「はい」
「見にくいだろう」
そう言って青島の手をとりソファへと移動する。
スマホの小さい画面を二人で見る。プロジェクターもあるんですけどね!身を寄せ合うしか無くて、時折肩が触れ合って貴嗣様はご満悦だ。
「京極様」
Dが有線タイプのイヤホンを渡す。
「ありがとう」
貴嗣様が青島以外にお礼を言うとは!
「ほら、陸。音があったほうが面白いだろう」
片耳にイヤホンを差し込み、もう一方を青島の右耳に差し込んだ。
必然、二人の距離が更に近くなる。
…………アオハルですか?
だが!
D.グッジョブ!
俺達が見落した書類ミスの箇所をこれで聞き出せる!
「可愛いかったなあ。ピレニーズ…」
「陸は飼わないのか?」
「飼いたかったんですけどね。家も広くないし散歩の時間も確保できないしで諦めました」
「猪瀬」
はいはい。ピレニーズですね。いいブリーダー探しておきます。
「ん?陸はこのピレニーズしか見てないのか」
閲覧履歴を見た貴嗣様がいう。
「たまに他のも見ますけど、ほぼこのコですね。」
いや、ソレは困る。ピレニーズを買うことはできるが、特定のピレニーズは難しい。ましてやユーチューバーのなんて、そうそう手放さなしてくれないだろ
「青島はこのピレニーズの何処が好きなんだ?」
後から覗き込んで尋ねる。二人の世界に割り込んでくるな、と、貴嗣様が嫌そうな顔をしたが無視だ無視。
「頭の良さとこのサイズ感です!」
…………仔犬を買ってきてもダメなヤツじゃないか。サイズは両親の体重で想像はつくがあくまでも想像だ。頭は…これまた躾だけではどうにもならんし。どうしろと?
「そして何よりこの愛嬌!」
更に個体差があるヤツじゃないか。
へへへ……と青島が笑い貴嗣様が更にデレた。まあ、この距離で青島の笑顔は中々無いからな。
「青島、そういえばピレニーズオフ会があるぞ」
そう言って千葉が自身のスマホを貴嗣様越しに差し出した。
「ええ!」
青島が勢いよくスマホを覗き込むがその直前に千葉が身を引いた
「あ、これピレニーズ同伴が参加条件だった。」
勢いのままに青島が貴嗣様の膝の上に倒れ込んだ。貴嗣様が凍り付く。恐る恐るその手が動き青島にそっと触れる。
神々しい笑み。
「こっちぢこっち。参加条件、ピレニーズ同伴かもしくは犬を同伴していないピレニーズ好きオンリー。ほれ、見ろよ青島」
青島がそのまま手を伸ばす。
ピレニーズに夢中の青島の体は貴嗣様の膝の上に乗った状態だ。
青島はそれどころではないのだろう。 千葉 のスマホを覗き込んで操作しながら、うんうんとか唸っている
「陸……!」
太腿の上をモゾモゾ動く青島に貴嗣様が悲鳴をあげる。慌てて青島を引き剥がしてソファから立ち上がる。
「え?あ、すすみません!」
「あ、いや、そうじゃなくて」
ピレニーズに夢中になって非礼を働いていた事に気が付いた青島が慌てて謝罪する。誤解されて更に慌てふためく貴嗣様。腰がひけてる……。考えたくねぇ。
「京極」
千葉がきらりと光る何かを貴嗣様に渡す。鍵か。千葉は千葉でレンタルルームを借り上げているからそこのだろう
「ごゆっくり」
ケラケラ笑う千葉を尻目にドアへと貴嗣様が足早に向かわれる。
「あの……」
側近候補Dが貴嗣様に声をかける
「z社の業績予想!今朝のニュースで20パーを確信した。それでやり直せ!」
いや、市場予想は18で、流石に貴嗣様の20を想定しての書類作成は無理でしたよ……。
突然、出ていかれた貴嗣様に目を白黒させる青島。
「俺!謝罪してきます!」
「追いかけるなボケ!」
「でも!」
「想像さすなボケ!」
「良いねぇ、アオハル」
部屋を出ていく貴嗣様、怒鳴る俺を横目に千葉がクツクツ笑いながらいう。
…………これの何処がアオハルだ!
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