【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

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「兄さん、大丈夫？救急車呼ぶ？」
タオルだけ巻いて兄に話しかける
「大丈夫だ。」
「分かった。じゃあタクシーよぶ」
「病院には行かない」
「…………なんで」
これだけの流血。
肉だってえぐれている。…………もう少しズレていたら頸動脈だった
「この家の中に盗聴器はなくても、外には俺らを監視しているヤツがいるんだろ」
「…………だから？」
「何かがあったって、バレてしまうだろう」
「そんなことより病院に行こう。膿んだりしたら大変だ」
「陸、俺が蓮を選んだことを後悔させないでくれ。これ以上、 情報漏れはしたくないんだ」
「…………」
兄さんは気がついていたんだ、蓮兄さんの企みに。それでも目をつぶっていた。京極がすんなり帰った事で違和感を覚え、自分がしてしまった事に気が付いたのだろう。
「それにしても、お前、本当にΩ化ぐ進んでいるのか？蓮をのせる位なんだから勘違いなんじゃないか」
…………
そうだったらどんなに良かったろう
「俺の香りにつられてこっちに来たでしょ。そのくらいには進行しているよ。蓮兄さんをのせたのは、…………名残りと蓮兄さんが隙だらけだったからだよ。」
兄が痛ましそうに俺を見た。俺がコンちゃんを守る為に受験勉強と平行して道場に通ってたことも知っているから。
…………悔しい。理不尽に書き換えられて、俺の今までを無かったことにされて、更にその上、未来まで奪うつもりなのだ、あのαは。
「……なぁ、蓮が言っていた手段はどうなんだ。先に番う。」
「…………京極は最上位種だ。よっぽどの上位種か運命でもない限り、上書きされるのがオチだ。」
「…………蓮なら？」
「兄さん、番契約がどうするものか分かっているよね？本気で言っているの。蓮兄さんに俺としろって？」
「否定しないんだな」
…………可能性はある。番契約の上書きは大差がないとできないと言われている。蓮兄さんより京極のほうが確実に上だが、上書きできる程の差があるかは不明だ。
「さっきの見たでしょ。蓮兄さんは俺としない」
「俺が頼めば別だ。」
…………。そうだろうな。いや、そうだろうか。
兄さんに別れをちらつかされたら、蓮兄さんは俺と番うかも知れない。兄さんのソレは脅しみたいなものだ。
けれど、一方で。
京極は蓮兄さんを許さない。
最上位αの番予定者を、最上位が予約済と公言した者を奪いとればα社会で生き残れはしない。
それに……
蓮兄さんとの番契約を上書きできたとしても、俺の処女を奪ったものを京極は許さない。俺だって、コンちゃんがそんな事になっていたら、相手のαを許せない。……コンちゃんが願ったというなら、思う所はいっぱいあるけど受け入れるしかないのだろうけど。ただ、京極は違う。俺が蓮兄さんに頼んだという事実があったとしても、自分と同じ苦しみを味あわせる為に、兄さんを誰かにレイプさせるだろう。
それが、蓮兄さんには分かっている。だから……
兄さんに言われても蓮兄さんは動かない。俺も兄をそんな目に合わせたくはない。
でも……
ヤツに俺の全てをくれてやる必要もないのだ。