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湯船に浸かっていると、ドアがノックされた。
「陸、ここが一番安全だからここで話す」
「…………昨日、京極と合ったんだね。それで、どこまで兄さんに話させたの?」
「お前が京極に狙われている事を自覚したこと。婚約者と別れたこと。俺達はコンちゃんに合ったこともないし何の情報を持ってない事」
…………別れてないし。連絡が取れないだけだし
思わず天を仰ぐとお湯がちゃぽんと揺れた。柑橘系の香りがふわりと漂った。宮下のコロンと思っていたあれは、フェロモンだったんだな。既にΩ化は開始していたのだ。
「俺のΩ化の件は」
「そこは止めた」
そこは、ね
本当に上位αというものは腐っていると思う。
泣きはらした兄の目。伴侶に嫌われる位なら、伴侶の心を傷つけることも厭わないのだ。バレなければいいのだ。蓮兄さんは完璧に隠すだろう。俺のΩ化の件を止めたのも、その為だ。兄は過剰な程、自責主義だが、キャパを超えた時点で他責というか、正しく過失割合が見れるようになる。兄は俺のΩへの変化を漏らしてしまった自分を許さない。なぜ、自分がそんな事をしてしまったのか分析し、そして蓮兄さんの思惑に気が付いたはずだ。
α社会で、京極という最上位αに報告をしなければならなかった蓮兄さん。けれど、兄さんは俺を売り飛ばした蓮兄さんを許さない。だから、兄さんに暴露させるという手段を取ったのだと気がついたはずだ。
「クズいね」
「どうとでも言え」
…………
取り敢えず、俺に自覚があることが京極に知られて無いのは救いだ。
「それから…ウチに暫くはいてもいいが、気配が現れれば追い出すからな。」
蓮兄さんが言いたかったのはこれだろう。俺の疑問に答えるのが目的ではなくて。
「分かっているよ。兄さんの幸せを邪魔したいわけじゃない」
ちゃぷん、湯が揺れるのにあわせて香る柑橘。
蓮兄さんは、香りのあるものを嫌う。兄さんに自分が以外のニオイが付くのを嫌うのだ。それなのに、兄がこんな入浴剤を用意する事を了承してくれただけでもありがたい、ありがたい、そう思わなければならないのに……。
「自分で分かるものなのか?変化は」
「……どうだろうね…。」
ちゃぷん
腕を伸ばす。大丈夫、まだ細くななってない。
「コンちゃんを、お姫様抱っこしたかったのにな…」
結婚式。彼女を姫抱きして歩きたかった。俺の腕の中からコンちゃんがドルチェを皆に投げ与えるのだ。
『陸、どんだけ乙女なのよ!』
そういった俺に、彼女は顔を赤くし言い返したっけ。そんな彼女に気分が良くなってチャレンジしたら、10歩も歩けなくて彼女はケラケラ笑った。
それからずっと筋トレしている。毎日一回づつ負荷を増やして、大学入学前には目標距離を歩ける様になった。
『そんな事したらすっど皆にからかわれるよ!』
『大丈夫!挙式は海外って手もあるから!』
照れて顔を埋めるコンちゃんに言ったっけ。
華奢だけど身長はあるから、それなりに体重はある彼女。でも
『もっと増えていいからね!あと20キロまで大丈夫な様になるから!』
Ωのヒートはきつくて、一度で5キロ位減る人もいると聞く。バリバリに働く様になったら、こんなに細いままでは体力が持たない。だからもっと体重をつけて欲しくて体力作りに励んだ。
『陸!ちゃんと勉強しているの!?帝都大には反対だけど!でも落ちた理由が私を抱きあげる為だったなんて嫌よ!?』
『してるよしてる。俺が君を言い訳にするはずがない。だから、もうちょっと太ってね』
『女子にソレは禁句!』
むくれるコンちゃんがかわいくてずつ笑ってた。
コンちゃん……
ちゃぷん…湯が揺れる。
きついんだ。筋トレが。
怖いんだ。筋トレが。
負荷を増やすどころか、今までの回数を熟すことすら困難になってきている。
ねぇ、今の俺は君を抱き上げて移動出来るのかな…
ライムの香りが充満してる……。
「陸、ここが一番安全だからここで話す」
「…………昨日、京極と合ったんだね。それで、どこまで兄さんに話させたの?」
「お前が京極に狙われている事を自覚したこと。婚約者と別れたこと。俺達はコンちゃんに合ったこともないし何の情報を持ってない事」
…………別れてないし。連絡が取れないだけだし
思わず天を仰ぐとお湯がちゃぽんと揺れた。柑橘系の香りがふわりと漂った。宮下のコロンと思っていたあれは、フェロモンだったんだな。既にΩ化は開始していたのだ。
「俺のΩ化の件は」
「そこは止めた」
そこは、ね
本当に上位αというものは腐っていると思う。
泣きはらした兄の目。伴侶に嫌われる位なら、伴侶の心を傷つけることも厭わないのだ。バレなければいいのだ。蓮兄さんは完璧に隠すだろう。俺のΩ化の件を止めたのも、その為だ。兄は過剰な程、自責主義だが、キャパを超えた時点で他責というか、正しく過失割合が見れるようになる。兄は俺のΩへの変化を漏らしてしまった自分を許さない。なぜ、自分がそんな事をしてしまったのか分析し、そして蓮兄さんの思惑に気が付いたはずだ。
α社会で、京極という最上位αに報告をしなければならなかった蓮兄さん。けれど、兄さんは俺を売り飛ばした蓮兄さんを許さない。だから、兄さんに暴露させるという手段を取ったのだと気がついたはずだ。
「クズいね」
「どうとでも言え」
…………
取り敢えず、俺に自覚があることが京極に知られて無いのは救いだ。
「それから…ウチに暫くはいてもいいが、気配が現れれば追い出すからな。」
蓮兄さんが言いたかったのはこれだろう。俺の疑問に答えるのが目的ではなくて。
「分かっているよ。兄さんの幸せを邪魔したいわけじゃない」
ちゃぷん、湯が揺れるのにあわせて香る柑橘。
蓮兄さんは、香りのあるものを嫌う。兄さんに自分が以外のニオイが付くのを嫌うのだ。それなのに、兄がこんな入浴剤を用意する事を了承してくれただけでもありがたい、ありがたい、そう思わなければならないのに……。
「自分で分かるものなのか?変化は」
「……どうだろうね…。」
ちゃぷん
腕を伸ばす。大丈夫、まだ細くななってない。
「コンちゃんを、お姫様抱っこしたかったのにな…」
結婚式。彼女を姫抱きして歩きたかった。俺の腕の中からコンちゃんがドルチェを皆に投げ与えるのだ。
『陸、どんだけ乙女なのよ!』
そういった俺に、彼女は顔を赤くし言い返したっけ。そんな彼女に気分が良くなってチャレンジしたら、10歩も歩けなくて彼女はケラケラ笑った。
それからずっと筋トレしている。毎日一回づつ負荷を増やして、大学入学前には目標距離を歩ける様になった。
『そんな事したらすっど皆にからかわれるよ!』
『大丈夫!挙式は海外って手もあるから!』
照れて顔を埋めるコンちゃんに言ったっけ。
華奢だけど身長はあるから、それなりに体重はある彼女。でも
『もっと増えていいからね!あと20キロまで大丈夫な様になるから!』
Ωのヒートはきつくて、一度で5キロ位減る人もいると聞く。バリバリに働く様になったら、こんなに細いままでは体力が持たない。だからもっと体重をつけて欲しくて体力作りに励んだ。
『陸!ちゃんと勉強しているの!?帝都大には反対だけど!でも落ちた理由が私を抱きあげる為だったなんて嫌よ!?』
『してるよしてる。俺が君を言い訳にするはずがない。だから、もうちょっと太ってね』
『女子にソレは禁句!』
むくれるコンちゃんがかわいくてずつ笑ってた。
コンちゃん……
ちゃぷん…湯が揺れる。
きついんだ。筋トレが。
怖いんだ。筋トレが。
負荷を増やすどころか、今までの回数を熟すことすら困難になってきている。
ねぇ、今の俺は君を抱き上げて移動出来るのかな…
ライムの香りが充満してる……。
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