【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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91ー猪瀬

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「陸に警戒されている」
………………何を今更。
「だから、直接、青島累と会う。あの男は何かを知っているはずだ。」
…………。
「鷹司には触れない方が……」
視線だけで牽制された。もう貴嗣様に俺の言葉は届かない。
千葉家程ではないが青島累の伴侶の鷹司家もまた争うには面倒な相手だ。大分狂ってきている。


青島に指定されたレンタルルームに向かった。既に先方は着いていた。
…………この男が青島累か。
隣から牽制するような圧を感じる。鷹司たかつかさ蓮、京極程ではないが、これまた優秀な家系だ。Ωでもないのに兄弟でまた上位αを捕まえたもんだ。いや、捕まったもんだ、が正解か。
べったりべったりとそのどろりとしたモノをつけていて、よく息が吸えるな。
鈍さは血筋か。
だが、青島は天真爛漫、兄の方はどこか陰を帯びていて淫靡な雰囲気すらある。長く男に愛されたという色香か。
「……っ!」
鷹司の圧が俺を貫く。
「…部下が、失礼をした」
鷹司様が謝罪をするのに合わせて俺も頭を下げた。
「申し訳ありません。」
「…………」
欲を乗せて観察したわけではないが、俺がどう評したかが伝わって不快だったのだろう。薄幸の美青年。思わず手を差し伸べたくなる様な雰囲気がある。まあ、実際にはこれだけマーキングされてる男に手を差し出すαはいないだろうが。いるとすればβか。鷹司も心が休まらないだろうな。
青島累は何が起きたのかよくわかっていないようだった。
「別に……」と俺にだけ応えた。貴嗣様には 警戒心も露わと言った様子だ。いや、憎しみか?
「で、何の用?」
「実はあなたの弟君……陸さんに私が避けられているようなんです。理由をご存知ないかなと思いまして」
貴嗣様が下手にでてる。まだ一応理性は残っているのだと思うと少し安堵する。
「俺が知る訳ないだろ」
青島累が貴嗣様を睨みながら言う。ソレは知っていると同意語だ。
「教えて下さい。私がこうして頼んでいるうちに」
…………理性、残って無かった。
「俺の累に手を出すか?」
貴嗣様よりは下位だが、敵に回すべきではない。
鷹司蓮に千葉、青島の周囲は番狂いばかりか。しかも番が青島を守る方向を向いている。
「出したくは無いですね。僕の義兄になる人ですし。」
貴嗣様の言葉にカッとして青島累が叫んだ!
「陸はαだ!」
…………つまり、青島は貴嗣様に狙われてると認識したという事だな。それで貴嗣様を避け始めたと。
「そうですね。でも、私が貰う事になっている。コンちゃんとやらとも別れたらしいし丁度いいタイミングなのでは?」
「いけしゃあしゃあと!お前のせいだ!お前にだけは…!」
「累!」
『お前にだけは陸はやらない』そう続けようとしたであろう青島累を鷹司が抱き締めてやめさせる。貴嗣様に累を敵認識をさせない為だ。穏便に済ませたいのはお互い様だ
「もう良いだろう。これが俺の最大の譲歩だ。」
累の耳を押さえて言った。弟を守りたい番には自分の謀を知られたく無かったのだろう。
所詮、α。番の拒絶が怖くて策を練る。
階級社会において、鷹司は貴嗣様に従わざるえない。だが、自分が貴嗣様に情報を漏らしたとなれば累に反感をもたれてしまう。最悪の場合、番が離れていく。だから、取り乱した累に漏らさせた。後日、累は己の失態を責めるだろうが、鷹司を非難することにはならない。
番の心が傷付いても、側にいれる方を取る。それがαだ。…………傷つかないにこしたことはないけれど。
「そう、ですね。あと一つだけ。陸はどうして気がついた?」
「……俺達の巣に、俺より上位のニオイをつけて遊びに来た。だから、誰にマーキングされてんだ、ソレを落とせと。」
「つまりは、貴方が原因と」
「かわりに、この場を用意した」
己が貴嗣様に処罰されたら、青島累はフリーになる。これだけ艶麗な男だ。マーキングを数日出来ないだけでわんさかαがよってきて、その体を暴くだろう。それはこの男には耐え難いことのはずだ。
「……わかりました。」
割に合わないが、それでも貴嗣様は引き下がった。
らしくない、と思う一方で、納得もする。
貴嗣様は鷹司の拘泥に理解と計算をしたのだ。
ヤツは貴嗣様処分されるならば累を道連れにする。それを青島にどうにか伝えるだろう。
青島の、兄に対する想いは強い。コンちゃんに続き、兄まで奪えば青島の心は更に頑なになる。









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