【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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89-猪瀬

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 青島が全く捕まらない。
 少し前まではなんとなく避けていたが今や露骨に貴嗣様を避けている。立ちんぼの件以来だから、あの妨害を怪しまれてしまったのか。
 貴嗣様は確実に禁断症状が出ている。イライラして、目も血走っている。……出会わない方が幸せだったのでないかと思ってしまう。青島と出会ってから旅行終わりまで、貴嗣様の覇気は凄まじいものがあった。帝王と評されるのも皆が納得するほど。けれど……今や狂王だ。
 唯一の救いは青島が婚約者と別れたと言う情報のみだ。
 立ちんぼの女性まで始末されるのかと焦ったが、コンちゃんとやらに関する情報をくれた礼として見逃してやったという所だろう。
 コンちゃんは女、とは思っていたが今まで確証はなかった。だが、あの女のお陰で、コンちゃんは小柄でアーモンドアイの知能指数の高い未婚Ωということが判明した。
 そうともなれば、数は限られてくる。
 恩赦といったところだ。
 後から合流した千葉は、青島が最初に声をかけたという立ちんぼを見て『俺が貰う』と言った。千葉のドストライクだったのだろう。千葉のあの目を見て、コンちゃんとやらが逃げ切れる可能性は無くなったのが分かった。
 …………青島は守れるのだろうか。守れると思っているのだろうか。貴嗣様だけではなく千葉にまで執着された婚約者を。
 千葉は、貴嗣様程ではないが俺達よりもかなり上のαだ。貴嗣様の側近という事もあって俺は数多くのαに会うが、それでも千葉より上位のαを貴嗣様以外で見たことはない。
貴嗣様が落ち着いたら、千葉は貴嗣様に交渉するだろう。何かと引き換えに彼女の酌量を。
今の貴嗣様にソレは通じない。
理性があれば、自分より下位とはいえ千葉程の大物が固執しているΩに制裁を加えようなどとは思わないものだが……。
千葉もソレが分かっている。だから俺に『言うな』と言った。何を、などとは言わなかった。けれど伝わってしまった。千葉の決意が。
だが、俺は貴嗣様の部下だ。
千葉はコンちゃんを見つけ出し次第、コンちゃんとやらを噛む。番のいるΩを傷つけるのはマナー違反、上位αのとなれば社会的批判も強くなる。幾ら貴嗣様であっても苦戦するだろう。

あの時、たちんぼと千葉が会った時に貴嗣様も同席していていれば良かったのに……。
そうすれば、俺がこんな狭間で揺れる事も無かったのに。

俺が仕えるのは貴嗣様だ。
ならば、千葉の執着を、囲おうとする意志を貴嗣様に伝えるべきなのだ。
だが……あの目。上位種の執着とはここまでおぞましいものなのか。
いや、ソレは既に歴史が証明している。
ある国王が番のΩを運命のαとやらに奪われた。
国王はそのαの祖国を蹂躙した。
そのαが国の責任者だったわけでもない、ただの一国民だったのに。国王はそのアルファが育った国を許せなかった。
その国の民が半数になっても、それでもなお残虐な行為は続いた。そのαは周囲からひどく叩かれた。懸賞金までかけられた。けれど、そのαが運命のオメガを手放すことはしなかった。
優秀だったαは、けれどβという数に負け、四肢引き裂きの刑が確定した。
Ωは運命のαの命乞いをし、王の元に戻ることで決着がついた。だが王ですら運命の番という絆に契約の上書きをすることは不可能だった。
番ではない王に触れられたΩは衰弱していく。オメガを失う恐怖に王はさらに狂っていった。オメガを治せない医者を殺し、オメガの体力をつけさせてくれない食材の生産者を殺し……王の国民が1/3になる頃、βによるクーデターが起きて王は殺された。
貴嗣様が王同様、番狂いになるまであまり時間は残されていない。
早々にかのαが番を王の元に返していれば、仇のαが死んでいれば、王もまたそこまで狂わなかったかもしれない。
貴嗣様を王の二の舞いにするわけにはいかないのだ。
供物を……捧げないと……





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自己主張の激しいパワハラ上司とこれまた自己主張の激しい下(自分よりも能力は高い)に挟まれた中間管理職って大変……(笑)


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