【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「大学、行きたくないな……」
 でも、今日は行かなければならない。今日休んでしまえばこのままズルズルと休み続けてしまう。一度逃げ出したらそのままだ。
『私は陸がどれだけ頑張って帝都大に入ったか知ってる!なのにヤツは…!αが多い帝都に通わせたくないからって…!陸も陸よ!ヤツの策に嵌って中退なんかして!』
『イタタ。コンちゃん、殴らないで!俺まだ帝都大に入学すら出来てないんだから!』
 あれは高2の頃だ。コンちゃんに勉強を教えて貰ってる時だったか。こんなに頑張っているのに帝都大生になれた俺が中退なんてする訳ないのにって思った記憶がある。
 ……休んだら駄目だ。今日休めば、明日行けばいいを繰り返して講義についていけなくなる。留年を二回繰り返したら自動的に退学だ。
「行かなきゃ…」
 思惑通りになんて動いてたまるか。

 けれど、最寄り駅を降りて大学に向かう足は重い。
 気配を探ればこちらを監視している存在いる事も分かる。京極の者だろうな。今まで、蓮兄さんの者と思って気に留めないようにしてきた。スルースキルが身に付いてしまっていたから、ずっと監視されていた事に気がついてなかった。

 頭がグラグラする。気持ち悪い
 道路の端にしゃがみ込みうずくまった。
「青島!大丈夫か?」
 ふわりと漂うミントの香りに少し楽になる。顔をあげると西野だった。
「医務室まで歩けるか?肩を貸すか」
「ありがとう。でも、大丈夫だ」
 ここで西野を頼ったら西野はどうなってしまうのか。
 それに、自分の足で大学に行かなきゃ駄目なのだ。
 なんとか立ち上がり歩き始めた。そのまま講堂に向かう。
「青島、医務室は?」
「うん、大丈夫。授業を受ける。」
 西野のミント臭に救われている。この時点で自分だけの力ではないけれど、それでもたどり着けないよりはまだマシだ。
「西野…………ありがとうな」
「……おう」
 ミント臭か…。西野のソレがわかるようになってしまったのだ、自分の変化を認めざるえない。
『一週間ほど体温が38度近く出て、陸は完全にΩに切り替わるわ』
 まだだ。まだ、熱は出ていない。

 講義が終わると直ぐにドアが開いた。京極だ
「陸!体調を崩したと聞いた。」
 まだだ。まだ俺が京極の思惑に気がついたと、京極に気取られてはならない。
 笑え、笑え!
「そうなんですよ~。旅行ではしゃぎ過ぎたのかもしれません。」
「疲れが出たか。熱は?」
 俺の頬に手あて自分の方へ引き寄せて額と額をくっつけた。
「…………問題ないようだな、良かった」
「ご心配おかけして申し訳ありません。」
 暫く前なら、上位αなのに底辺の俺を心配をしてくれるなんて出来た人だと感動していただろう。今は違うと分かる。俺のΩ化が進んでいるかの確認なのだ
『陸、熱が出ても京極にバレないようにして。ヤツは陸の熱が下がり次第ヒートを誘発させて番うから。』
 俺に熱がないことを確認して、京極の眉尻が少し下がる。その安堵顔すらも演技なのか。
『あのαは陸が第三形態になってから毎日熱を確認していた。他のαに噛ませる為に陸をΩしたわけじゃない。たとえ噛まれても上書きできるとはいえ、そんな事はあってはならない。だから、ヤツはしつこい位陸の体調の変化を気にしてた』
 突然のヒートで事故番にならないために……。

「陸?」
 俺の笑顔が引き攣っていたのか、戸惑ったように京極が聞いてきた。
「いえ、疲れが出たのだと思います。暫くA1に伺うのはやめておきますね」
「え……」
 呆然といった様相の京極を見て、嗤いそうになる。俺と空き時間を過ごせないのがそんなにショックですか。こんなにも露骨だったのに俺はよく気が付かなかったのだ。
もっとも、Ω化計画に影響するからかもしれないが。
「り、陸……」
「青島、疲れが取れないなら医者を手配しておくからA1に来い。」
「給仕係も務まらないので、行かないでおきますよ。実務中の皆様に申し訳ないので。疲れが溜まっただけなので、ゆっくり休むのが一番です。」
猪瀬さんが、京極が手配する医師など怖すぎる。















 
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