【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「…漣兄、京極家について知ってること、教えて欲しい。」
コンちゃんと出会ってすぐ京極についてはネットで調べた。
けれど、公にされてない事もあろう。箝口令が敷かれているような情報も、上流階級のαである義兄ならば知っている可能性がある

「京極家ってあの京極だよな?お前、まさかよりによって……。京極の嫡子がお前と同じ大学なのは知っていたが…そんな…。お前と接点はなかっただろう!何が原因でそんなことになったんだよ!?」
義兄が俺の肩を掴んで揺すぶりながら言う。
「何が原因かだって!?俺が知りたいよ!」
思わず叫び返した。
その後にハッとする。これは八つ当たりだ。
「すみません……」
「いや、俺も悪かった。思わず取り乱した……。……京極家で口外されてない事といえば、…………ビッチングだ」
「………………お伽噺って兄さんは言ったけど。」
さっき、そういったじゃんか!
「ああ。確証は無い話だ。エビデンスは無い。けれど、京極の伴侶には後天性Ωが多い。後天性Ωの割合は天文学的確率だってのに京極家には度々現れる。当代奥様もそうだ。元々はかなり優秀なαだったんだが、急にΩになってしまったらしい。」
「……」
寒気がした
「ただ、Ω化を当主は望んでいなかったから、偶々後天性Ωだったのだろうとも言われている。都市伝説とか言われるのもこのせいだな」
「望んでいなかったとは?」
「急にヒートになって行きずりの下位αに番にされたらしい」
思わず自分を抱きしめた。αであった女性が、自分は強いと思っていた女性が無理矢理番にされた?
「その女性はどうなったの?」
「当代が上位αだからな。番ったαとの階級差も大きいから簡単に上書き出来たらしい。ただ……α×αだが、おしどり夫婦でも有名だった。最初に噛んだ下位αは現在も行方不明だ。」

確かに…。ビッチングが意図的に行われるものなら、自分の大事な妻をそんな目にあわせたりとかしないだろう。タイミングをはかるに決まっている。

「他に思い浮かぶことはないな。むしろお前が聞きたいことはないのか?お前の力になれるのは今の時間だけだ。おそらく京極はお前がこの部屋に寄ったことを把握している。やがて俺に接触してくるだろう。俺は累を守るためにはお前を切る。お前は累の弟だ。だから可愛いことは可愛いが、だが俺にとって一番大事なのは累だ。今だけだ、今だけは俺を信用していろいろ尋ねるがいい。逆に、この先、俺のことは信じるな」

「…その言葉、西野にも言われた。」
「ああ、西野建設の跡継ぎだったか。中堅どころだな。京極の前にはあんなの鼻息一つで吹っ飛ぶからな」
曖昧に笑うしかなかった。
『陸のために動けるのもこれが最後、俺を信用するな。コンちゃんの形跡を今すぐ消せ』
あの時点で俺はビッチングなんて警戒もしていなかったから。でも今ならわかる。
『最初に噛んだ下位αは現在も行方不明だ。』
俺の大事なコンちゃんの命を守る為だったんだ…。
西野はあれから俺に近寄ってこなくなった。京極に何かを言われたのか、それとも…俺を利用もしたくないし京極に利用もされたくない、あいつの性格上そんなところだろう。

「西野の気持ちもわかるな。何を一番に守らなきゃいけないか、俺たちαは分かってる。だから、俺はお前を見捨てる」
「俺の弟にそんなひどいこと言わないでくれるかな」
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