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「陸、陸」
肩を揺すられて目が醒めた。
「え?ええ!?」
なんで?なんで二人羽織状態??
「陸が寝落ちしていたからな。シートベルトが食い込んで可哀想だったから支えていた」
「すみません!すみません!」
いや、流石に京極様をチャイルドシート扱いは駄目だろう!
「いい。それより下を外を見てみろ」
なんてお優しいんだ!座布団扱いされても怒らないなんて
「うわぁ……」
眼下に東京の夜景が広がる。綺麗だ……。飛行機小さな窓から見るのと全然違う。
「陸が好きな光景だから、起こした。」
ちょっと笑ってしまった。
「俺も好きですけど、京極様に見てほしかったんですよ」
「……私に?」
「どうせ習得するなら楽しい理由があった方が良いじゃないですか。」
暗殺だのそんな悲しい理由だけじゃなくてさ
「陸陸陸…!」
ぐぇ。後ろから羽交い締めにされる。息が苦しい。
首筋に京極様の息がかかった。……!!!
心臓が、ぎゅっと縮んだ
「京極!!」
千葉さんが怒鳴る。
「!!」
京極様が俺を強く押した。シートベルトが食い込んで、ぐぇ、と蛙が潰れたような声が漏れた。
「あ、すまない、陸」
「い、いえ…」
「青島、東京タワーだ」
千葉さんが外を指指した。
「うわ、まるでキーホルダーみたいだ」
遠くに見える東京タワーはオレンジ色にライトアップされてて、メルヘンチックな雰囲気だった。先ほどまでの心臓のバクバクも少し落ち着いてくる。
……現実感無いな……
夜景は、まるでキラキラと輝く宝石のようだ。街の中心部から郊外まで、無数の明かりが連なり、光の海が広がる。夢の中にいるような感覚で、時間の経過がわからなくなっていく……。
ヘリはタワマンの屋上におりた。
お土産をもらったので、兄の家に行くことにする。
インターホンを鳴らす。兄の伴侶がドアを開けて、俺を見て眉を顰めた。
「臭い」
…………久々に会う義弟への一言目がソレですか。
義兄はαだ。上位だとは思うがそれがどれくらいなのかまでは俺には分からない。差が凄く有ること位は分かるけど
「出直してこい」
「蓮!何を言ってんだよ。陸、よく来たな」
兄が土間で通せんぼした義兄を諌める。
「累、でもコイツ臭いんだよ。ウチにあげたくない。」
「臭い?宿で風呂に入って来たけど……」
「かなり上等なたちの悪いαのニオイがする」
「友人?の服を借りたから、そのせいかな?」
たちの悪いって……。まぁ上等ではある
αは自分の巣に自分より上位のαを入れたがらない。番が奪われるのではないかという恐怖があるのだ。α社会は実力社会の横暴社会。兄と義兄がどれだけ両思いでも、不安になるのだ。
コンちゃんのこともあるから、俺にだって理解はできる。
「脱ぐから着替えを貸してよ。」
ポイポイと服を脱いでいく。
「り、陸、せめて脱衣所でぬいだら」
「いいから、兄さんは紙袋と蓮兄さんの服を持ってきて。」
俺に服を貸すのは嫌なんだろうけど、兄のは問題外だからと、渋々義兄が頷く。
「あ、下着もね!未使用の!」
「「当たり前だ!!」」
うん、それが常識だよね。
「…………という事は、ソレも借り物なのか」
義兄がパンイチになった俺を見ながら、ため息と共に言った。
「………………諸事情がありまして……」
どんな事情だよ!って目で見られたけど、こっちだってなんて説明して良いのか分からない。
差し出された洋服を着て京極様から貸していただいた洋服は袋の中に入れた。そのまま土間に放置する。
土間ならば、ギリオッケーだろう。
義兄の脇を通り過ぎる。腕を急に掴まれた。
「まだ臭い。」
「……」
いや、もう服を脱ぎましたけれど。京極様の洋服を借りていたから、その移り香が肌に張り付いてしまったのか?
義兄が腕を思いっきり引っ張る。 185cmのその胸に激突した。
そのままうなじに鼻をくっつけられた。
「……!」
またも心臓がキュッと締め付けられた。冷や汗をかきそうになる。
「……ここからだな。累、俺の洋服は陸にかせない。悪いがその辺の店で陸の洋服を見繕って来てくれないか?」
「……わかった。」
義兄がこんな時間に兄を一人で街中に出すことはまず滅多にない。俺と2人で話がしたいということなのだろう。
たぶん、俺にとっていい話ではない。けれど聴かなければいけない話なのだろう。
肩を揺すられて目が醒めた。
「え?ええ!?」
なんで?なんで二人羽織状態??
「陸が寝落ちしていたからな。シートベルトが食い込んで可哀想だったから支えていた」
「すみません!すみません!」
いや、流石に京極様をチャイルドシート扱いは駄目だろう!
「いい。それより下を外を見てみろ」
なんてお優しいんだ!座布団扱いされても怒らないなんて
「うわぁ……」
眼下に東京の夜景が広がる。綺麗だ……。飛行機小さな窓から見るのと全然違う。
「陸が好きな光景だから、起こした。」
ちょっと笑ってしまった。
「俺も好きですけど、京極様に見てほしかったんですよ」
「……私に?」
「どうせ習得するなら楽しい理由があった方が良いじゃないですか。」
暗殺だのそんな悲しい理由だけじゃなくてさ
「陸陸陸…!」
ぐぇ。後ろから羽交い締めにされる。息が苦しい。
首筋に京極様の息がかかった。……!!!
心臓が、ぎゅっと縮んだ
「京極!!」
千葉さんが怒鳴る。
「!!」
京極様が俺を強く押した。シートベルトが食い込んで、ぐぇ、と蛙が潰れたような声が漏れた。
「あ、すまない、陸」
「い、いえ…」
「青島、東京タワーだ」
千葉さんが外を指指した。
「うわ、まるでキーホルダーみたいだ」
遠くに見える東京タワーはオレンジ色にライトアップされてて、メルヘンチックな雰囲気だった。先ほどまでの心臓のバクバクも少し落ち着いてくる。
……現実感無いな……
夜景は、まるでキラキラと輝く宝石のようだ。街の中心部から郊外まで、無数の明かりが連なり、光の海が広がる。夢の中にいるような感覚で、時間の経過がわからなくなっていく……。
ヘリはタワマンの屋上におりた。
お土産をもらったので、兄の家に行くことにする。
インターホンを鳴らす。兄の伴侶がドアを開けて、俺を見て眉を顰めた。
「臭い」
…………久々に会う義弟への一言目がソレですか。
義兄はαだ。上位だとは思うがそれがどれくらいなのかまでは俺には分からない。差が凄く有ること位は分かるけど
「出直してこい」
「蓮!何を言ってんだよ。陸、よく来たな」
兄が土間で通せんぼした義兄を諌める。
「累、でもコイツ臭いんだよ。ウチにあげたくない。」
「臭い?宿で風呂に入って来たけど……」
「かなり上等なたちの悪いαのニオイがする」
「友人?の服を借りたから、そのせいかな?」
たちの悪いって……。まぁ上等ではある
αは自分の巣に自分より上位のαを入れたがらない。番が奪われるのではないかという恐怖があるのだ。α社会は実力社会の横暴社会。兄と義兄がどれだけ両思いでも、不安になるのだ。
コンちゃんのこともあるから、俺にだって理解はできる。
「脱ぐから着替えを貸してよ。」
ポイポイと服を脱いでいく。
「り、陸、せめて脱衣所でぬいだら」
「いいから、兄さんは紙袋と蓮兄さんの服を持ってきて。」
俺に服を貸すのは嫌なんだろうけど、兄のは問題外だからと、渋々義兄が頷く。
「あ、下着もね!未使用の!」
「「当たり前だ!!」」
うん、それが常識だよね。
「…………という事は、ソレも借り物なのか」
義兄がパンイチになった俺を見ながら、ため息と共に言った。
「………………諸事情がありまして……」
どんな事情だよ!って目で見られたけど、こっちだってなんて説明して良いのか分からない。
差し出された洋服を着て京極様から貸していただいた洋服は袋の中に入れた。そのまま土間に放置する。
土間ならば、ギリオッケーだろう。
義兄の脇を通り過ぎる。腕を急に掴まれた。
「まだ臭い。」
「……」
いや、もう服を脱ぎましたけれど。京極様の洋服を借りていたから、その移り香が肌に張り付いてしまったのか?
義兄が腕を思いっきり引っ張る。 185cmのその胸に激突した。
そのままうなじに鼻をくっつけられた。
「……!」
またも心臓がキュッと締め付けられた。冷や汗をかきそうになる。
「……ここからだな。累、俺の洋服は陸にかせない。悪いがその辺の店で陸の洋服を見繕って来てくれないか?」
「……わかった。」
義兄がこんな時間に兄を一人で街中に出すことはまず滅多にない。俺と2人で話がしたいということなのだろう。
たぶん、俺にとっていい話ではない。けれど聴かなければいけない話なのだろう。
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