75 / 243
75
しおりを挟む
「陸、陸」
肩を揺すられて目が醒めた。
「え?ええ!?」
なんで?なんで二人羽織状態??
「陸が寝落ちしていたからな。シートベルトが食い込んで可哀想だったから支えていた」
「すみません!すみません!」
いや、流石に京極様をチャイルドシート扱いは駄目だろう!
「いい。それより下を外を見てみろ」
なんてお優しいんだ!座布団扱いされても怒らないなんて
「うわぁ……」
眼下に東京の夜景が広がる。綺麗だ……。飛行機小さな窓から見るのと全然違う。
「陸が好きな光景だから、起こした。」
ちょっと笑ってしまった。
「俺も好きですけど、京極様に見てほしかったんですよ」
「……私に?」
「どうせ習得するなら楽しい理由があった方が良いじゃないですか。」
暗殺だのそんな悲しい理由だけじゃなくてさ
「陸陸陸…!」
ぐぇ。後ろから羽交い締めにされる。息が苦しい。
首筋に京極様の息がかかった。……!!!
心臓が、ぎゅっと縮んだ
「京極!!」
千葉さんが怒鳴る。
「!!」
京極様が俺を強く押した。シートベルトが食い込んで、ぐぇ、と蛙が潰れたような声が漏れた。
「あ、すまない、陸」
「い、いえ…」
「青島、東京タワーだ」
千葉さんが外を指指した。
「うわ、まるでキーホルダーみたいだ」
遠くに見える東京タワーはオレンジ色にライトアップされてて、メルヘンチックな雰囲気だった。先ほどまでの心臓のバクバクも少し落ち着いてくる。
……現実感無いな……
夜景は、まるでキラキラと輝く宝石のようだ。街の中心部から郊外まで、無数の明かりが連なり、光の海が広がる。夢の中にいるような感覚で、時間の経過がわからなくなっていく……。
ヘリはタワマンの屋上におりた。
お土産をもらったので、兄の家に行くことにする。
インターホンを鳴らす。兄の伴侶がドアを開けて、俺を見て眉を顰めた。
「臭い」
…………久々に会う義弟への一言目がソレですか。
義兄はαだ。上位だとは思うがそれがどれくらいなのかまでは俺には分からない。差が凄く有ること位は分かるけど
「出直してこい」
「蓮!何を言ってんだよ。陸、よく来たな」
兄が土間で通せんぼした義兄を諌める。
「累、でもコイツ臭いんだよ。ウチにあげたくない。」
「臭い?宿で風呂に入って来たけど……」
「かなり上等なたちの悪いαのニオイがする」
「友人?の服を借りたから、そのせいかな?」
たちの悪いって……。まぁ上等ではある
αは自分の巣に自分より上位のαを入れたがらない。番が奪われるのではないかという恐怖があるのだ。α社会は実力社会の横暴社会。兄と義兄がどれだけ両思いでも、不安になるのだ。
コンちゃんのこともあるから、俺にだって理解はできる。
「脱ぐから着替えを貸してよ。」
ポイポイと服を脱いでいく。
「り、陸、せめて脱衣所でぬいだら」
「いいから、兄さんは紙袋と蓮兄さんの服を持ってきて。」
俺に服を貸すのは嫌なんだろうけど、兄のは問題外だからと、渋々義兄が頷く。
「あ、下着もね!未使用の!」
「「当たり前だ!!」」
うん、それが常識だよね。
「…………という事は、ソレも借り物なのか」
義兄がパンイチになった俺を見ながら、ため息と共に言った。
「………………諸事情がありまして……」
どんな事情だよ!って目で見られたけど、こっちだってなんて説明して良いのか分からない。
差し出された洋服を着て京極様から貸していただいた洋服は袋の中に入れた。そのまま土間に放置する。
土間ならば、ギリオッケーだろう。
義兄の脇を通り過ぎる。腕を急に掴まれた。
「まだ臭い。」
「……」
いや、もう服を脱ぎましたけれど。京極様の洋服を借りていたから、その移り香が肌に張り付いてしまったのか?
義兄が腕を思いっきり引っ張る。 185cmのその胸に激突した。
そのままうなじに鼻をくっつけられた。
「……!」
またも心臓がキュッと締め付けられた。冷や汗をかきそうになる。
「……ここからだな。累、俺の洋服は陸にかせない。悪いがその辺の店で陸の洋服を見繕って来てくれないか?」
「……わかった。」
義兄がこんな時間に兄を一人で街中に出すことはまず滅多にない。俺と2人で話がしたいということなのだろう。
たぶん、俺にとっていい話ではない。けれど聴かなければいけない話なのだろう。
肩を揺すられて目が醒めた。
「え?ええ!?」
なんで?なんで二人羽織状態??
「陸が寝落ちしていたからな。シートベルトが食い込んで可哀想だったから支えていた」
「すみません!すみません!」
いや、流石に京極様をチャイルドシート扱いは駄目だろう!
「いい。それより下を外を見てみろ」
なんてお優しいんだ!座布団扱いされても怒らないなんて
「うわぁ……」
眼下に東京の夜景が広がる。綺麗だ……。飛行機小さな窓から見るのと全然違う。
「陸が好きな光景だから、起こした。」
ちょっと笑ってしまった。
「俺も好きですけど、京極様に見てほしかったんですよ」
「……私に?」
「どうせ習得するなら楽しい理由があった方が良いじゃないですか。」
暗殺だのそんな悲しい理由だけじゃなくてさ
「陸陸陸…!」
ぐぇ。後ろから羽交い締めにされる。息が苦しい。
首筋に京極様の息がかかった。……!!!
心臓が、ぎゅっと縮んだ
「京極!!」
千葉さんが怒鳴る。
「!!」
京極様が俺を強く押した。シートベルトが食い込んで、ぐぇ、と蛙が潰れたような声が漏れた。
「あ、すまない、陸」
「い、いえ…」
「青島、東京タワーだ」
千葉さんが外を指指した。
「うわ、まるでキーホルダーみたいだ」
遠くに見える東京タワーはオレンジ色にライトアップされてて、メルヘンチックな雰囲気だった。先ほどまでの心臓のバクバクも少し落ち着いてくる。
……現実感無いな……
夜景は、まるでキラキラと輝く宝石のようだ。街の中心部から郊外まで、無数の明かりが連なり、光の海が広がる。夢の中にいるような感覚で、時間の経過がわからなくなっていく……。
ヘリはタワマンの屋上におりた。
お土産をもらったので、兄の家に行くことにする。
インターホンを鳴らす。兄の伴侶がドアを開けて、俺を見て眉を顰めた。
「臭い」
…………久々に会う義弟への一言目がソレですか。
義兄はαだ。上位だとは思うがそれがどれくらいなのかまでは俺には分からない。差が凄く有ること位は分かるけど
「出直してこい」
「蓮!何を言ってんだよ。陸、よく来たな」
兄が土間で通せんぼした義兄を諌める。
「累、でもコイツ臭いんだよ。ウチにあげたくない。」
「臭い?宿で風呂に入って来たけど……」
「かなり上等なたちの悪いαのニオイがする」
「友人?の服を借りたから、そのせいかな?」
たちの悪いって……。まぁ上等ではある
αは自分の巣に自分より上位のαを入れたがらない。番が奪われるのではないかという恐怖があるのだ。α社会は実力社会の横暴社会。兄と義兄がどれだけ両思いでも、不安になるのだ。
コンちゃんのこともあるから、俺にだって理解はできる。
「脱ぐから着替えを貸してよ。」
ポイポイと服を脱いでいく。
「り、陸、せめて脱衣所でぬいだら」
「いいから、兄さんは紙袋と蓮兄さんの服を持ってきて。」
俺に服を貸すのは嫌なんだろうけど、兄のは問題外だからと、渋々義兄が頷く。
「あ、下着もね!未使用の!」
「「当たり前だ!!」」
うん、それが常識だよね。
「…………という事は、ソレも借り物なのか」
義兄がパンイチになった俺を見ながら、ため息と共に言った。
「………………諸事情がありまして……」
どんな事情だよ!って目で見られたけど、こっちだってなんて説明して良いのか分からない。
差し出された洋服を着て京極様から貸していただいた洋服は袋の中に入れた。そのまま土間に放置する。
土間ならば、ギリオッケーだろう。
義兄の脇を通り過ぎる。腕を急に掴まれた。
「まだ臭い。」
「……」
いや、もう服を脱ぎましたけれど。京極様の洋服を借りていたから、その移り香が肌に張り付いてしまったのか?
義兄が腕を思いっきり引っ張る。 185cmのその胸に激突した。
そのままうなじに鼻をくっつけられた。
「……!」
またも心臓がキュッと締め付けられた。冷や汗をかきそうになる。
「……ここからだな。累、俺の洋服は陸にかせない。悪いがその辺の店で陸の洋服を見繕って来てくれないか?」
「……わかった。」
義兄がこんな時間に兄を一人で街中に出すことはまず滅多にない。俺と2人で話がしたいということなのだろう。
たぶん、俺にとっていい話ではない。けれど聴かなければいけない話なのだろう。
98
お気に入りに追加
1,572
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる