【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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荷物を持ってヘリポートにいくと、管理人さんとタカツグがいた。
「お~タカツグ、お見送りにきてくれたのか~~」
管理人さんがペコリとし、タカツグが尻尾をブンブン振った。
荷物を起き、タカツグに抱きつこうとして……

「あれ、タカツグじゃない?タカツグそっくりさん、お前は誰だぁ?」
顔をあげて管理人さんに訊こうとして……押し黙った。管理人さんの目が腫れてる?
「あの、大丈夫ですか?」
よくよく見てみると、顔色も悪い。
「だ、大丈夫です」
…………大丈夫そうに見えないけど……。あんまり触れてほしくなさそうだ。
「タカツグは?」
なんでこのコなんだろ?
「あ、えっと……」
「昨日の疲れが出たんだろう。タカツグはそれなりの歳だからな」
京極様の言葉にちょっと反省する。犬は結構おバカな所もあって、はしゃぎ過ぎて心臓発作をおこしたりすることもある。人間側が常に気遣ってあげなければいけないのだ。
「そうなんですね。このコの名前は?」
「コタロウです。」
「コタロウか。いい名前だな」
抱きついてワシャワシャした。う~ん。ピレニーズ、いいな、やっぱり!
「陸は、コタロウが気に入ったのか?タカツグは彼の叔父が引き取る事になったから、ウチでコタロウを引き取ってもいいと話していたのだが……」
「…………はい。コタロウを見てくれる方を探してまして……」
管理人さんが泣きそうな顔で言う。うん、辛いよね、手放さなきゃなんないの。どんな事情があるのかはわからないけれど、こんなにちゃんと躾けられたコという事はそれだけ愛情を持ってしっかり世話をしたという事だ。
大型犬は長時間散歩をさせなきゃならない。有名なのはハスキー犬、彼ら若いうちは毎日4時間は散歩させないとストレスになる。大型犬の躾はそれらをクリアして成立するのだ。愛情が無きゃこんなにいいコには育たない
「でも、東京は遠いでしょう。もう少し管理人さんと近い方がコタロウも嬉しいのでは?」
「…………そうだね。コタロウも淋しいがるかな。陸が会いに来てくれれば違うかもな?」
「あはは、考えておきます」
遠回しに断った。タカツグだったら迷いはするが、コタロウは京極様というリスクを冒してまで会いたいとは思わない
「そうか。まあ、ウチはどちらでも良かったからな。…………もう暫く、預け先を探してみてはどうだ?」
「はい!はい!」
…………
妙に嬉しそうだな、管理人さん。
「コタロウ、タカツグによろしくな」
コタロウがブンブンしっぽを振る
「コタロウとタカツグは仲がいいんですね。タカツグって言うとコタロウがすごく喜ぶ。俺もタカツグ大好きだから仲間だな。タカツグに会ったらよろしくって伝えてね」
「……あの!」
コタロウを見つめていた管理人さんが、突然顔をあげて俺に叫んだ
「ノブユキは!」
ノブユキ?
「時間が無くてキャンプ場は片付けずに出てきてしまった。すまない」
京極様が管理人さんの言葉を遮っていう。出発まで時間がないからか?確かにあの状態まま放り出して謝罪しないのは問題だよな。いくらそれが仕事とはいえムカつくもんな。ホントに部下思い
「ボウガンも放りだしたままだ。後で別荘の壁に飾っておいてくれるか」
「……………………はい」
管理人さんは京極様の気遣いに感極まったのか、ポトリと涙をこぼした。手も震えている。
「陸、時間だ、行こう」
「ありがとうございました」
管理人さんの手を握ってお礼を言った。彼は俺から目をそらした………。その唇が動いた。音は拾えなかった。


ヘリが飛び立つ。
眼下の美しい海に目を奪われた
顔 そちらに移す時にちらりと白いものが写った、コタロウだ
…………
………………
昨日 同じようなことがなかったか?
目の端に白いものが飛んでいく姿が写った気がする。
いつだ?いつだろう……
覚えていないということは大したことではないのだろう、そう思うのに思い出さなければいけないと感じる
考えても考えても分からない。
管理人さんも不思議な人だった。最後に彼は何を言ったのだろう……
ヘリコプターのエンジンの音はヘッドフォンで消され、振動のみが身体に心地良く響く……

「りく…?」
つかれた……
「り……」
なぁに………









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