【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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翌朝、目が覚めたら爽やかな空気と鳥のさえずりが耳に入ってきた。
まだ薄暗く、京極様は隣でまだ眠っていた。
う~ん……
テントを出て、少し歩いて焚き火の跡を見てみると、ただの灰になっていた。何か、不思議な気分。変な夢を見ていたような……う~ん。
周りを歩いていくと、雑草が変に折れている所があった。
なんだろう……
近づこうとすると、テントから顔を出てきた猪瀬さんに声をかけられた。
「青島!……朝飯の準備をするぞ、こっちへこい」
………………
朝もはよから元気だなぁ、猪瀬さん。

井戸水を沸かしてコーヒーをいれる。
コーヒーをひく音で京極様達が起き始めた。まだ眠そうな顔をしながらも、穏やかな表情で朝の光景を楽しんでいた。
「陸が淹れてくれたコーヒーを朝一から飲めるなんて、最高だな。」
「光栄です」

アウトドア用のコーヒーミルはなんでか2人用で、まず最初に2杯淹れた。京極様と……
「あれ?宮下は?」
「まだ、戻ってないな。それよりコーヒーは?」
京極様が言う。
「2杯づつしか淹れられないミルだったので……」
「そうか、なら私と陸で飲もう」
「あ、いえ、俺は最後に。一応は皆さんの給仕係として来ているので」
そう、遊び呆けているけれど、そんでもって疲れたり酔い潰れたりで初日以外はあまり働けてないけど、給料は発生しているのだ
「「「…………」」」
…………なんか、一瞬だけど皆が微妙な顔をした。た、確かに働いた記憶無くてむしろ雇用主に迷惑しかかけてないけどっ
「陸、気にするな」
いや、その低音。そうは言ってるけどちょっと苛立ってるよな、京極様。
「陸、コーヒーに関してはそれぞれ好みの挽き方がある。各自に任せよう」
え?あ、そうなの。そんな事言って無かったけど……皆遠慮してたのか。
チラリと見ると、皆がコクコクと頷いている。
「じゃあ、今度淹れる機会があったら皆さん教えてくださいね」
京極様の言葉に甘え、朝食を食べる。ベーコンエッグとトーストだ。サラダが無いのは御愛嬌ってことで。

朝食後、京極様がボウガンを教えてくれると言ってくれたが、断った。
いや、だってボウガンの使い方なんて学んだ所で何になる
猪瀬さんを見ると、顔が引き攣ってた。そうだよな、狩猟とかもしないのにそんなん習得した所でさ……
「陸、私の忠告を聞いておけ」
「青島、せっかく貴嗣様がそう仰って下さってるんだ。甘えておけ」
「…………ハイ」
猪瀬さんの目が断わるなと言っている。俺の為に、断わるなと言ってる気がした。

ボウガンの操作はわりと単純だった。
そして、的は色々な高さだった。的が動く事が無くてホッとした。狩猟を覚えろと言われている訳ではない事に。
ただ……皆の緊張感は伝わってきた。逆に京極様は覚えろと言ったわりにおざなり感が強かった。的に当たらなくてもいい……そんな感じがした。フリスビーを教えてくれた時と全く違う。京極様も猪瀬さん達も。

「戻りました」
疲れた顔の宮下が戻ってきた。
「おかえり」
猪瀬さんが言った
「「…………」」
??
何、皆の空気?
「遅かったな。……陸にボウガンを教えていた。お前が心置きなく教えるがいい」
ポン、とボウガンを地面に放り投げて京極様が去っていく。
「え?え?」
いや、あまりにも雑じゃない?
宮下がチラリと的を見た。
「猪瀬さん、あと何時間ですか?」
「…………あと2時間が限界だ」
宮下が珍しく真面目な声で問いかけ、猪瀬さんも重々しく答えた。
「…………分かりました。青島、俺が教える。その体に叩き込め。」
………………
めっちゃスパルタだった。マジで。
猪瀬さん達が、テントの片付けやキャンプ道具の整理をしてる時もひたすらボウガンで的を射続けた。
「……宮下、疲れてるみたいだけど大丈夫か?休んだ方が……」
「そう思うなら的中率を上げろ」
取り付く島もない。
けれど……俺が上達する事で宮下が休めるようになるなら真剣に向き合おう。

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