67 / 243
67ー猪瀬
しおりを挟む
~~~~~~~~~~~~~~~~
65,66を読めなかった方の為に。
65,66のあらすじ。
陸を催眠状態にする為にピレニーズを利用した京極だったが、ピレニーズが陸の催眠状態を解こうとしたため、ピレニーズを排除した
宮下と管理人はピレニーズの遺体とともに、下山する。
~~~~~~~~~~~~~~~~
宮下と管理人が、バギーで山を下っていく。
管理人はまだいい。何度も通い慣れた道だ。だが、宮下は……。いくらαといえど初見に近い山道を夜中にバギーで進むのは危険だ。今の管理人に宮下を気遣う余裕もない。
ピレニーズを離してしまった罰なのだ。
管理人にはピレニーズの命を。宮下には……自身の命を。運が良ければ、若しくは宮下の能力が高ければ無傷で生き残れる。
ここは先代が番を閉じ込める為に整備した島だ。潮の流れも早く、どれほど遠泳が得意でも人力では出れない。難攻不落と言われる某刑務所よりも脱走は不可能だろう。宮下がこの島を出るには、貴嗣様の了承を得るしかないのだ。だから暗闇の中でも宮下は出発した。
……あの時、青島の催眠が解けていたら宮下には運試しの機会すら与えられなかっただろう。
温情、といえない事もない、……のか?
俺は、社会的だったり物理的だったりの抹殺を指示したことはある。だが、今までは書類上の人間であって直接親交のある者に対しては無かった。ましてや宮下は同じ貴嗣様に仕えるという同じ目的を持っていた仲間だ。だから俺には……。
けれど、貴嗣様に躊躇いは無かった。
『躾の出来てない犬などいらない』
貴嗣様は俺ですら、切る。アレは俺の今までの功績を認めてなされた警告だ。
先程以上に皆が緊張する。
そうだ、俺達は無慈悲な神の下で働いているのだ。
今はひたすらに息を殺し存在を消す時だ。
何事も無かったかの様に、貴嗣様が質問を続ける。
「陸、陸はどうして今回来てくれたの」
「猪瀬さんに脅された。来なければ コンちゃんについて調べると」
「そう、陸はコンちゃんを守りたかったの」
「うん。コンちゃんを守る。京極様には渡さない。それに、この今回のお金でコンちゃんの首輪を買う」
「そう、私が払ったお金でコンちゃんにプレゼントをする予定だったんだね」
「うん」
…………恐ろしい事を。催眠状態なだけに真実だ。貴嗣様は内心怒り心頭だろう。だが、今はその時ではない。柔らかい声で口調で催眠状態を保持しなければならない
「次、コンちゃんに会うのはいつ?」
「決まっていない」
「どうやって連絡を取るの」
「コンちゃんからの連絡待ち」
「コンちゃんから連絡はどうやって来るの?」
「……」
青島が呻き出した
「陸、コンちゃんから連絡はどうやって来るの?」
「……」
「陸」
「…………」
自身を抱きしめる青島の手に力がはいる。
これ以上はおそらく無理だろう。油汗も浮いているし、 これ以上続けても変な覚醒するだけだ。
ならば……と、貴嗣様がパンと手を叩いた。
青島が覚醒する。
…………結局、何も得られなかった。ピレニーズも宮下も犠牲になったと言うのに。
「あれ?俺?あれ?タカツグがいない」
キョロキョロしながら、青島が言う
「もう時間も遅いからタカツグは管理人と家に帰った」
「そっかぁ。残念。明日帰る前に会えるかな 」
………………
無理だ
「会えるよ」
貴嗣様がそうおっしゃった。
…………管理人は2匹犬を飼っていた。 兄弟犬だから、おそらくそっくりなのであろう。ただ、このあとの管理人のことを思うと 気の毒だ。
そう思ったのが表情に現れたのか、千葉がナッツを俺の額に飛ばしてきた。地味に痛い。
……安い同情はよせ、そういうことだろう。
何が自分の一番大切なものなのかを見極めなければいけないのだ。優先順位を見誤ってはいけないのだ。
「あれ?宮下は?」
青島が言った
「もうしばらくしたら戻ってくる。」
答えられない俺たちに代わって貴嗣様が答えた
本心からそう仰っているのか、青島を宥めるためなのか……俺には全く見分けられなかった。
65,66を読めなかった方の為に。
65,66のあらすじ。
陸を催眠状態にする為にピレニーズを利用した京極だったが、ピレニーズが陸の催眠状態を解こうとしたため、ピレニーズを排除した
宮下と管理人はピレニーズの遺体とともに、下山する。
~~~~~~~~~~~~~~~~
宮下と管理人が、バギーで山を下っていく。
管理人はまだいい。何度も通い慣れた道だ。だが、宮下は……。いくらαといえど初見に近い山道を夜中にバギーで進むのは危険だ。今の管理人に宮下を気遣う余裕もない。
ピレニーズを離してしまった罰なのだ。
管理人にはピレニーズの命を。宮下には……自身の命を。運が良ければ、若しくは宮下の能力が高ければ無傷で生き残れる。
ここは先代が番を閉じ込める為に整備した島だ。潮の流れも早く、どれほど遠泳が得意でも人力では出れない。難攻不落と言われる某刑務所よりも脱走は不可能だろう。宮下がこの島を出るには、貴嗣様の了承を得るしかないのだ。だから暗闇の中でも宮下は出発した。
……あの時、青島の催眠が解けていたら宮下には運試しの機会すら与えられなかっただろう。
温情、といえない事もない、……のか?
俺は、社会的だったり物理的だったりの抹殺を指示したことはある。だが、今までは書類上の人間であって直接親交のある者に対しては無かった。ましてや宮下は同じ貴嗣様に仕えるという同じ目的を持っていた仲間だ。だから俺には……。
けれど、貴嗣様に躊躇いは無かった。
『躾の出来てない犬などいらない』
貴嗣様は俺ですら、切る。アレは俺の今までの功績を認めてなされた警告だ。
先程以上に皆が緊張する。
そうだ、俺達は無慈悲な神の下で働いているのだ。
今はひたすらに息を殺し存在を消す時だ。
何事も無かったかの様に、貴嗣様が質問を続ける。
「陸、陸はどうして今回来てくれたの」
「猪瀬さんに脅された。来なければ コンちゃんについて調べると」
「そう、陸はコンちゃんを守りたかったの」
「うん。コンちゃんを守る。京極様には渡さない。それに、この今回のお金でコンちゃんの首輪を買う」
「そう、私が払ったお金でコンちゃんにプレゼントをする予定だったんだね」
「うん」
…………恐ろしい事を。催眠状態なだけに真実だ。貴嗣様は内心怒り心頭だろう。だが、今はその時ではない。柔らかい声で口調で催眠状態を保持しなければならない
「次、コンちゃんに会うのはいつ?」
「決まっていない」
「どうやって連絡を取るの」
「コンちゃんからの連絡待ち」
「コンちゃんから連絡はどうやって来るの?」
「……」
青島が呻き出した
「陸、コンちゃんから連絡はどうやって来るの?」
「……」
「陸」
「…………」
自身を抱きしめる青島の手に力がはいる。
これ以上はおそらく無理だろう。油汗も浮いているし、 これ以上続けても変な覚醒するだけだ。
ならば……と、貴嗣様がパンと手を叩いた。
青島が覚醒する。
…………結局、何も得られなかった。ピレニーズも宮下も犠牲になったと言うのに。
「あれ?俺?あれ?タカツグがいない」
キョロキョロしながら、青島が言う
「もう時間も遅いからタカツグは管理人と家に帰った」
「そっかぁ。残念。明日帰る前に会えるかな 」
………………
無理だ
「会えるよ」
貴嗣様がそうおっしゃった。
…………管理人は2匹犬を飼っていた。 兄弟犬だから、おそらくそっくりなのであろう。ただ、このあとの管理人のことを思うと 気の毒だ。
そう思ったのが表情に現れたのか、千葉がナッツを俺の額に飛ばしてきた。地味に痛い。
……安い同情はよせ、そういうことだろう。
何が自分の一番大切なものなのかを見極めなければいけないのだ。優先順位を見誤ってはいけないのだ。
「あれ?宮下は?」
青島が言った
「もうしばらくしたら戻ってくる。」
答えられない俺たちに代わって貴嗣様が答えた
本心からそう仰っているのか、青島を宥めるためなのか……俺には全く見分けられなかった。
123
お気に入りに追加
1,572
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる