【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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「陸、来なさい」
京極様は時々エスパーかと思う。心読まれてる?
「おぶされ。風景を見る余裕ができるぞ」
「え、いや、大丈夫です」
さすがにそれはちょっと……
「青島、貴嗣様の仰ることを聞け。時間が押している。このままだと昼飯に間に合わなくなる。 千葉が背負っている肉が天然熟成された肉に変わってもいいなら別だが。ただしキャンプ場に簡易トイレは1つ、その優先順位は明白だが、覚悟はあるか??」
…………
それは大惨事だ。
バギーでも割と安全運転で来たから、確かにもう12時を回っている。
猪瀬さんは俺の運転が遅いと言っているのだ。まあ、事実だけれど。

京極様にすみませんと謝って、おぶって送っていただくことになった。

…………
早い 早い 早い!
いやいや、こんな状態で景色を見る余裕なんてないにきまってる。
必死になって京極様に捕まるが、京極 様も自分1人じゃない分、バランスを取るのが少し難しそうだ。
地面の凸凹に体がはね、脚が緩んで京極様から浮く
「…………!」
後輪がスリップしかけた。俺がズルッといってバランスを保てなかったから。
やはりこんな道を2人乗りするのは無理がある。かと言って俺が乗ってきたバギーは置いてきてしまった。
…………寧ろ、宮下のバギーで二人乗りした方が正解だったのでは?一人乗りようだけど。でも、それを言うならバイクだってそうだけどっ。
「京極、おんぶは限界だ。安全を考えて抱っこに切り替えるべきだ」
千葉さんが言う
「…………陸。そうしよう。他に手段はない」
………………
いやいや、と、抵抗したい。
でも 、この状態で天然熟成、発酵?された肉なんて、食中毒のロシアンルーレットだ。しかもトイレは一つ。
「…………お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いします。」

赤ん坊みたいに京極様に抱っこされている。
「しっかり掴まれ」
言われて脚を京極様の背中に絡ませる。さらに千葉さんが抱っこ紐のようなもので、俺と京極様をくくりつけた。あれ? そんなのがあるなら、おんぶの状態でも良かったんじゃないのか。
と思ったけれど、これまた違っていた。京極様はカーブ の際には片手はハンドルに、もう片手は俺を引き寄せて重心が一体化するようにした。
重心がブレるくらいだったら、片手ハンドルの方がまだマシ、と言ったところなのだろう
ぐっと引き寄せられると、京極様のコロンの香りがする。
…………甘い甘い香りだ。タールのようにまとわりついて離れない。
頭の芯を麻痺させるような…………
「陸?ちゃんと捕まっていろ。飛ばすぞ」
こ、これ以上?

………………
死んだ。
ありえない速度で移動した。休みなく ジェットコースターに乗り続けた気分だ。ぐったりだ……
とはいえ、キャンプ地は割と開けた丘で、高台から見る海の風景は圧巻だった。地球は丸い!には流石にならなかったけど。

本来は テントの設営とかにも、俺も参加しなければいけなかったんだが 体力的に無理だった。
まあ、京極様も抜けているからちょっとだけ許される?いや、下っぱとトップは違うけどな

京極様が飛ばしたおかげで肉は熟成肉にならずに済んだ。
バーベキュー…うまい。

食事を終えて とりあえず俺のバギーを取りに行くことになった。
俺がバギーを運転して、京極様が俺の後ろに立つ。
本当にどんな運動神経をしているのだろう。一人乗り用バギーだよ?
「そういえば 千葉さんこっちに戻ってきたんですね。用事は大丈夫だったんでしょうか」
「そうだな。済んだらしい。東京にいても意味がないからこっちにもどってきたらしい」
…こっちのほうが楽しいということだろうか。

ほどなくして、おいてきたバギーの所についた。
先ほど恐怖体験をしたせいか、スピード感にも慣れてそれなりの速度で運転できた。ショック療法みたいなもんか。
戻りは、京極様が先導してくれた。
急な上り坂や下り坂では、バギーのエンジンのパワーをフルに引き出さなければならなくて、でも、そのタイミングも京極様が合図を送ってくれた。昼前に比べたら大分スムーズに進めた。おかげで深い森や草原、滝などを見る余裕ができてかなり楽しめた。

「楽しいか、陸」
「はい!ありがとうございます!」
…ほんと、コンちゃんのことさえなければいい人なんだけどなぁ…





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さて、京極様はテントの設営をせず、一人ナニをしに消えたのでしょうか((笑))

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