50 / 245
50
しおりを挟む
「貴嗣様だ」
滝つぼに京極様がいた
下を覗き込み、宮下たちが次々にジャンプしていく。千葉さんと俺が取り残された。
…………マジか。泣きたい。
高さに恐怖しか無いんだけど!?
「陸、意外と簡単だ。こい」
首をぶるぶるふると、後ろからドンと押された。
「うわぁ!」
空中に放り出され、一瞬ふわりとしたあと……落下!
ドボン!
滝壺でパニクる前に京極様が俺を捕まえて顔を水面から出させてくれた。本当いい人だ。
一回滝を飛び降りれば、次からは恐怖もなくなり自分の限界を超えて飛び込むことができた。水しぶきが全身にかかる感覚は、最高に爽快で、色々なものを忘れる瞬間だった
川は、所々水の勢いが強くて、足を取られそうになる。その度に京極様が支えてくれて、バランスを保ちながら進んでいた。
…………こういうのをスパダリって言うんだろうな。
気がそれて、岩につまづいてしまい、京極様まで水中に巻き込んでしまった。ヤバっ!
「…………」
「はは…」
俺の慌てる様子に京極様が笑った。
つられて俺も笑ってしまった。
「これもいい思い出になるな」
と言いながら京極様が立ち上がり、俺に手を差し伸べてくれた。
………………
完敗だよ。
ホント。
何処も勝てない。
でも、それでも、俺はコンちゃんを諦めきれない。
…………コンちゃん。上位αが番のΩを外に出したがらないその心が、初めて理解出来たよ。奥に、座敷の奥に隠しておけば、自分より上位のαの目に止まることはない。奪われたりしない。
…………コンちゃん
『オメガだからって、社会で何もできないって決めつけられるのは嫌なの』
そう、君には実力がある。俺なんかよりも地頭はいい。世界に名を残す研究者にだってなれる。
京極様は世界でも稀に見る上位のαだ。けれど、京極様の上に誰もいないわけじゃない。上位αである京極様番への執着は一層強い。番を奪われないために、奥に奥に、屋敷の奥に君を囲うだろう。君は研究もできなくなる。 それを恐れているから、運命であるはずの京極様を怖がっているんだよね。
俺ならそんなことはしない。自由なコンちゃんが魅力的だと思っているから。自信に満ちたその眼差しを見るのが好きだから。
そう思っていたのに、俺の唯一のアドバンテージだと思っていたのに。
俺も一緒だ。君を奪われたくないから、囲いたい。けれど、けれどそれは君の望みじゃないし、君なら俺程度振り切れてしまう。諦めて、君の望みを聞いて外に出せば、俺は君を奪われる恐怖の毎日におかしくなるだろう。下位なのにな、下位のなのに…
コンちゃん、君に俺は執着している。
手を伸ばさない俺に焦れたのだろう、 京極様は俺の腕をぐいっと引っ張った。厚い胸板に激突する。
「陸、私の気は長い方ではない。覚悟しておけ」
京極様の腕の中に体を拘束され、髪を強く引っ張られて頭が痛い。無理やり上を向かされて見えた京極様の顔は恐ろしいほどに無表情だった。
滝つぼに京極様がいた
下を覗き込み、宮下たちが次々にジャンプしていく。千葉さんと俺が取り残された。
…………マジか。泣きたい。
高さに恐怖しか無いんだけど!?
「陸、意外と簡単だ。こい」
首をぶるぶるふると、後ろからドンと押された。
「うわぁ!」
空中に放り出され、一瞬ふわりとしたあと……落下!
ドボン!
滝壺でパニクる前に京極様が俺を捕まえて顔を水面から出させてくれた。本当いい人だ。
一回滝を飛び降りれば、次からは恐怖もなくなり自分の限界を超えて飛び込むことができた。水しぶきが全身にかかる感覚は、最高に爽快で、色々なものを忘れる瞬間だった
川は、所々水の勢いが強くて、足を取られそうになる。その度に京極様が支えてくれて、バランスを保ちながら進んでいた。
…………こういうのをスパダリって言うんだろうな。
気がそれて、岩につまづいてしまい、京極様まで水中に巻き込んでしまった。ヤバっ!
「…………」
「はは…」
俺の慌てる様子に京極様が笑った。
つられて俺も笑ってしまった。
「これもいい思い出になるな」
と言いながら京極様が立ち上がり、俺に手を差し伸べてくれた。
………………
完敗だよ。
ホント。
何処も勝てない。
でも、それでも、俺はコンちゃんを諦めきれない。
…………コンちゃん。上位αが番のΩを外に出したがらないその心が、初めて理解出来たよ。奥に、座敷の奥に隠しておけば、自分より上位のαの目に止まることはない。奪われたりしない。
…………コンちゃん
『オメガだからって、社会で何もできないって決めつけられるのは嫌なの』
そう、君には実力がある。俺なんかよりも地頭はいい。世界に名を残す研究者にだってなれる。
京極様は世界でも稀に見る上位のαだ。けれど、京極様の上に誰もいないわけじゃない。上位αである京極様番への執着は一層強い。番を奪われないために、奥に奥に、屋敷の奥に君を囲うだろう。君は研究もできなくなる。 それを恐れているから、運命であるはずの京極様を怖がっているんだよね。
俺ならそんなことはしない。自由なコンちゃんが魅力的だと思っているから。自信に満ちたその眼差しを見るのが好きだから。
そう思っていたのに、俺の唯一のアドバンテージだと思っていたのに。
俺も一緒だ。君を奪われたくないから、囲いたい。けれど、けれどそれは君の望みじゃないし、君なら俺程度振り切れてしまう。諦めて、君の望みを聞いて外に出せば、俺は君を奪われる恐怖の毎日におかしくなるだろう。下位なのにな、下位のなのに…
コンちゃん、君に俺は執着している。
手を伸ばさない俺に焦れたのだろう、 京極様は俺の腕をぐいっと引っ張った。厚い胸板に激突する。
「陸、私の気は長い方ではない。覚悟しておけ」
京極様の腕の中に体を拘束され、髪を強く引っ張られて頭が痛い。無理やり上を向かされて見えた京極様の顔は恐ろしいほどに無表情だった。
125
お気に入りに追加
1,573
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻の死で思い知らされました。
あとさん♪
恋愛
外交先で妻の突然の訃報を聞いたジュリアン・カレイジャス公爵。
急ぎ帰国した彼が目にしたのは、淡々と葬儀の支度をし弔問客たちの対応をする子どもらの姿だった。
「おまえたちは母親の死を悲しいとは思わないのか⁈」
ジュリアンは知らなかった。
愛妻クリスティアナと子どもたちがどのように生活していたのか。
多忙のジュリアンは気がついていなかったし、見ようともしなかったのだ……。
そしてクリスティアナの本心は——。
※全十二話。
※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください
※時代考証とか野暮は言わないお約束
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第三弾。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる