【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

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…………
まさかの姫抱っこ！
これでも、下位とは言えαなんだけど！
とは言え、文句いえる立場でもない。暗くなった沢を下りるのは危険だ。

京極様は俺を抱えたまま沢を下る。少しずつ水の勢いも強くなってきた。岩や滝の中を進むたびに、顔に水がかかる。
水が強い勢いで降り注ぐ中、岩場を素早く下っていくのは京極様でも大変だったようで、おんぶに変更された。手足の力を使いながら、滑らないように気を張っているのが伝わってきた。
「陸、もっとちゃんとしがみついて」
足場が不安定なところもあるのに、ハーネスといった物を使わずに下っていく。バランスが命だ。邪魔にならないようにピッタリと張り付く。


…………
………………
楽、楽だよ？
でも、股関節が限界です。ずっと足を開きっぱなしは無理がある

「京極様、もう、自分で移動できます。お疲れでしょうし、俺も大丈夫です」
「ん？ああ。だが、まだ私は大丈夫だが」
「いえ、もう…」
「明日もあるし、今日は休め」
…………話が通じない！部下思いもここまでくると…………ええい、旅の恥は書捨て！
「いえ！ありがたいのですが！おんぶだと足を開きっぱなしで股関節も下半身も痛くて、限界なんです！」

そう、ピッタリくっついていたから、京極の背中と俺のジュニアがジャンプの度に擦れたりとかしていて、限界だったのだ。
「あ、ああ…………」
珍しく京極様がしどろもどろになる。顔も少し赤い。いや、言ってる俺のほうが恥ずかしいんですけど!
京極様は俺を下ろし、
「千葉、この先に滝があったな。私は先に行くから、後を頼む」
と言って、こっちも見ずに走って行かれた
「「「「………………」」」」
そうだよなぁ。親切にして頂いたのに失礼だったよな。痛いのは事実だけど、助けてくれた人にコレはない。あとで謝らなければ。

先に行かれた京極様の事は全く気にせず、千葉さんは、一定のペースを守って下っていく。
途中、滝から流れ落ちる天然の滑り台にも挑戦して、子供のようにはしゃいで遊んだ。一緒に笑い転げながら滑り台を滑り降りると、皆との距離が少し縮まった気がした。