【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

認認家族

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36ー猪瀬

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「コンちゃん………声が聞きたいよ」

青島がポツリともらす
胸が痛くなる位切ない声、貴嗣様がいなくて良かった。

「なんで?電話すればいいじゃん」
宮下が問いかける
「番号…知らない…」
え?知らない?
「喧嘩したからすねているの?コンちゃんもスマホ変えたの?」
「知らない…」
「何を知らないの?」
「ぜんぶ……」
??
全部?
どういう意味だ
「住所を知らないの?コンちゃんの家に遊びに行ったりしてないの?」
「コンちゃんの……いえ……どこぉ…」
家を知らない?
婚約者なんだろ?
「結納はどこでしたの?」
「ゆいの……してない」
…………
妄想彼女、妄想婚約者?
「婚約っていうのは親を交えずコンちゃんと2人だけでした約束なの?」
「コンちゃんのご両親に会ったこともコンちゃんが俺の両親に会ったこともない……コンちゃん……」
うゔっと青島が泣く。

いや、何か色々……。
コンちゃんのことを調べるにあたって 青島の実家のことを調べてきたのに……一切合切、何も出てこなかった理由がわかった。
「……なあ、コンちゃんって実在するの?」
宮下が皆が疑問に思った事を聞く。
「するにきまってるだろう!…ヒック」
……大分酔っぱらってるな
「でも青島がコンちゃんとデートしてるのを見たことないなぁ」
「当たり前だ。コンちゃんを守るために大学に入ってからはもうデートをしていない!……コンちゃん、合いたいよぉ…」
泣き上戸か、コイツ。
「守る?何から?」
「京極様から。コンちゃんは京極様の運命なんだ」
「「「…………」」」
いやいや、どこからそんな誤解が。
万が一 運命だったとしても今の貴嗣 様が青島を捨てて、コンちゃんとやらを選ぶはずがない。
「コンちゃんが京極様の運命なら、引き合わせてあげるのが青島のすべき事なんじゃないの」
「コンちゃんは京極様が運命って思ってないの。」
ですよね~。
そんなアホい発想をするのはバカ島くらいだ。
「なにより!コンちゃんは俺の番になるの。俺のなの。俺もコンちゃんのものなの!」

青島が叫んだ直後にありえない程の威圧が部屋を襲った。

酔いつぶれた番を他者に預ける上位αなどいない。
宮下に託したのはコンちゃん情報がそれほどに重要と判断して理性で感情を押し込んだのだと思っていた。
けれど。
実際には待機していただけだった。
青島の危うい発言に貴嗣様の苛立ちも募っていったのだろう。そこに決定打だ。
『俺もコンちゃんのもの!』
これを番に言われてキレないαなどいない。
案の定、散弾銃の標的となった青島は完全に意識を失っている。そして俺たちも散々な状態だ。辛うじて平静を保っているのが千葉で、他はテーブルに突っ伏している。
「甘やかしすぎたな。自分が誰のものだか心にきっちり刻み込んでやろう」
そういって青島を抱き上げた。
貴嗣様、それは駄目です。
噛むだけで青島がΩ化するのであれば貴嗣様はとうにそうしていたはずだ。それこそ再会した日に噛んでいる
それを今までしてこなかったということは何かしらの理由があるはずだ
極秘事項だから俺らはその手段は知らないが、例えば青島の貴嗣様に対する信頼感とがある程度は必要だとか。
「駄目です、貴嗣様……」
「五月蠅い。コレは俺のモノだ」
「今更 一時の感情で青島のΩ化を諦めるおつもりですか……!」
呻きながらいう。
だったら最初からそうしてくれ!
我々がどれだけ青島に振り回されたか!それでも貴嗣様がより上になるのであればと、皆納得していたのに。
αのままに無理やり青島を囲えば、貴嗣様の心が満たされることはない。
より進化される事もなく、寧ろ、いつ逃げ出すかの疑心暗鬼に囚われて壊れていく。
「青島を完全に手に入れるのでしょう!!まだ青島の信頼を完全に失っていい時期ではない!」
何が正解かなんて貴嗣様だって分かっている。分かっているのだが 青島の発言はそれだけ貴嗣様の理性を打ち砕くものだったのだ。αは誰よりも理知的でそして本能的だ。上位になればなるほどそれは強く現れる
「…………」
貴嗣様がギリッと歯を鳴らした。
威圧が強く、俺もいつまで自分を保っていられるかは分からない。
「貴嗣様…!」
不意に威圧が緩んだ。
「…………千葉、青島を部屋に運べ」
「…………かしこまりました」
自分でベッドにつれていけば押さえられないのが分かっているのだろう。αが他のαに番を抱えさせるなどありえない事だが……貴嗣様はそれだけ、青島のΩ化にかけているのだ。































    
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