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35-猪瀬
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「陸……」
貴嗣様が、青島にビールグラスを差し出す。青島がビールを注ぎ、そして貴嗣様が青島に注ぐ。
「私も陸に注ぎたい」
ナニを?ビール、ですよね?
下ネタいう貴嗣様なんて想像したくありません…
ニコっと笑ってグラスを合わせて飲むふたり。貴嗣様に漂う柔らかい空気……。
完全に二人の世界。
俺らもいるんですが。
でも、まぁその方が平和で俺たちには都合がいい。居心地がいいと言えないけれど。
コレが続いてくれれば………
そして、人はこれをフラグという。
いや、フラグ云々ではないか。青島と貴嗣様が共にいる以上、ここは常にクレー射撃場だ…………
つまり。
「うわ~。このビール、ホント美味いっすね。猪瀬さんもどうですか?」
と、俺に酌をしてこようとしたのだ!
マジか、コイツ……。
皆が恐る恐る貴嗣様を見る。青島は隣だから見えないだろうが、青島を挟んで一つ隣の俺からは貴嗣様の酷薄な笑みが……
「猪瀬も飲むといい」
…………
あらゆる意味で飲みたくない。
『ドットラベルのノンアルコールビールをもってくるように』
貴嗣がメイドに命じていた。銘柄を指定している時点で何らかの意図でもって用意したビールだ。宮下あてなのか青島あてなのか。単なるアルコールビールだといいのだが…。
恐る恐る飲んでみると……単なるビールのようだ。
安堵のあまり、ふぅと息を吐き出した。
貴嗣様は、青島を酔わせたいだけのようだ。昨夜のリベンジ。青島からスマートウオッチを奪い取る。
そして、俺は昨日の宮下の代役。二人の、いや貴嗣様の至福の時間を奪ったから。
……いや、好きで奪ったんじゃありません!なんなら、青島からきたし!むしろ被害者です!
そんな事を思っても誰も助けてはくれない。
さしつさされつつ……
青島がだいぶ酔ってきたようだ。
「陸はアルコールに弱いんだな。アルコールフリーとなっていても完全にゼロという訳ではないから、気をつけるように。私がいない所では飲むなよ」
イヤイヤ、何千倍ですが。なんなら、通常のよりアルコール度数高いから!そして、あなたが一番まずい相手です。
「んあ?」
…………駄目だ、コイツ。貴嗣様の肩にもたれかかって船を漕ぎはじめた。
「分かった?」
「は~い」
…………理解、全部はしてないな。まぁ、これくらいがちょうどいい。コイツがしているスマートウオッチは取り外しに暗証番号が必要だ。無理矢理奪い取られると回路をショートさせる機能つきだ。
コンちゃんとやらの手掛かり。酔いつぶれても無意識にスマートウオッチを撫でる青島に、貴嗣様は妬心を隠さない。
「そのスマートウオッチがそんなに大事か?」
「うん、繋がってるって感じる……」
「「「………………」」」
ヲイ
繋がってる、は不味い。青島の事だから性的な意味はないんだろうけど、貴嗣様は…………
「陸」
威圧の籠もった声に皆がビクりとする中、酔っぱらいは通常運転だ。
「コンちゃん……ひどいよ…………」
酷い?
喧嘩でもしたのか?
「宮下」
「はははははい!」
「陸から聞き出せ。私は先に部屋に戻る」
青島がコンちゃんの話をすることはほぼない。酔いつぶれている今が絶好の機会ではある。
けれど、貴嗣様は苛立ちのあまり尋問出来ないから青島が心をわりと許している宮下に託すのだろう。
…………
青島がわりと心を許している…貴嗣様よりも。
……宮下、コレが終わったら始末されるんじゃ??
貴嗣様が、青島にビールグラスを差し出す。青島がビールを注ぎ、そして貴嗣様が青島に注ぐ。
「私も陸に注ぎたい」
ナニを?ビール、ですよね?
下ネタいう貴嗣様なんて想像したくありません…
ニコっと笑ってグラスを合わせて飲むふたり。貴嗣様に漂う柔らかい空気……。
完全に二人の世界。
俺らもいるんですが。
でも、まぁその方が平和で俺たちには都合がいい。居心地がいいと言えないけれど。
コレが続いてくれれば………
そして、人はこれをフラグという。
いや、フラグ云々ではないか。青島と貴嗣様が共にいる以上、ここは常にクレー射撃場だ…………
つまり。
「うわ~。このビール、ホント美味いっすね。猪瀬さんもどうですか?」
と、俺に酌をしてこようとしたのだ!
マジか、コイツ……。
皆が恐る恐る貴嗣様を見る。青島は隣だから見えないだろうが、青島を挟んで一つ隣の俺からは貴嗣様の酷薄な笑みが……
「猪瀬も飲むといい」
…………
あらゆる意味で飲みたくない。
『ドットラベルのノンアルコールビールをもってくるように』
貴嗣がメイドに命じていた。銘柄を指定している時点で何らかの意図でもって用意したビールだ。宮下あてなのか青島あてなのか。単なるアルコールビールだといいのだが…。
恐る恐る飲んでみると……単なるビールのようだ。
安堵のあまり、ふぅと息を吐き出した。
貴嗣様は、青島を酔わせたいだけのようだ。昨夜のリベンジ。青島からスマートウオッチを奪い取る。
そして、俺は昨日の宮下の代役。二人の、いや貴嗣様の至福の時間を奪ったから。
……いや、好きで奪ったんじゃありません!なんなら、青島からきたし!むしろ被害者です!
そんな事を思っても誰も助けてはくれない。
さしつさされつつ……
青島がだいぶ酔ってきたようだ。
「陸はアルコールに弱いんだな。アルコールフリーとなっていても完全にゼロという訳ではないから、気をつけるように。私がいない所では飲むなよ」
イヤイヤ、何千倍ですが。なんなら、通常のよりアルコール度数高いから!そして、あなたが一番まずい相手です。
「んあ?」
…………駄目だ、コイツ。貴嗣様の肩にもたれかかって船を漕ぎはじめた。
「分かった?」
「は~い」
…………理解、全部はしてないな。まぁ、これくらいがちょうどいい。コイツがしているスマートウオッチは取り外しに暗証番号が必要だ。無理矢理奪い取られると回路をショートさせる機能つきだ。
コンちゃんとやらの手掛かり。酔いつぶれても無意識にスマートウオッチを撫でる青島に、貴嗣様は妬心を隠さない。
「そのスマートウオッチがそんなに大事か?」
「うん、繋がってるって感じる……」
「「「………………」」」
ヲイ
繋がってる、は不味い。青島の事だから性的な意味はないんだろうけど、貴嗣様は…………
「陸」
威圧の籠もった声に皆がビクりとする中、酔っぱらいは通常運転だ。
「コンちゃん……ひどいよ…………」
酷い?
喧嘩でもしたのか?
「宮下」
「はははははい!」
「陸から聞き出せ。私は先に部屋に戻る」
青島がコンちゃんの話をすることはほぼない。酔いつぶれている今が絶好の機会ではある。
けれど、貴嗣様は苛立ちのあまり尋問出来ないから青島が心をわりと許している宮下に託すのだろう。
…………
青島がわりと心を許している…貴嗣様よりも。
……宮下、コレが終わったら始末されるんじゃ??
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