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33ー猪瀬
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夕食は中華料理。回転テーブルが置かれて10人で一つのテーブルについた。当然ながら、貴嗣様、青島、俺の座席だ。
宮下はなんとか体調を整え……てはいないが、諦めて飲む事にしたらしい。
適度に青島に酒を勧める役に徹するのだろうが、席が離れているから青島のもとまで来て立って酌をしろという事だ。地味~に貴嗣様の嫌がらせ。まぁ、この程度で済んだだけでも有り難いと思わないとだ。
…………いや、この程度ではすまないかもしれん。
青島が心配そうに宮下を見ている。貴嗣様には不快だろう。
「自業自得だ」
貴嗣様がきっぱりと言う。いや、宮下に何の業が……
「飲む飲まないは個人の自由だ。それを私が制限するのは違うだろう?」
「「「……」」」
いや、飲みたくないって言ってました…………
貴嗣様が深い深いため息をついた。
青島の視線を独り占めしていることが許せないのだろう、貴嗣様は方針変更し宮下がノンアル飲めるように手配された。
助かったな、宮下。……助かった、のか?執着心の塊が許すものなのか?
俺の不安をよそに青島は通常運転だ。
テーブルに置かれた ノンアルコールビールの瓶を持ってそのまま 宮下の元へと移動した。
貴嗣様の元から宮下のところへだ。
皆が危機感を持つ。戻るように青島に言いつつ恐る恐る貴嗣様を見つめた。
「陸、こっちへ」
「…………っ」
不機嫌なその声だけで、貴嗣様より下位の俺たちは息が詰まる。
青島が貴嗣様の隣に戻ると圧が弱まった。
はぁ……やっと息ができる。
貴嗣様が青島の頭を撫でた。
謝罪をした青島を許した?
貴嗣様が頭を撫で続ける。手が後頭部 手が少しずつ 後ろ寄りになる。頭頂から後頭部、後頭部から襟足へ…
「でも、陸……罰は与えないとね」
次の瞬間、青島が貴嗣様の手を払った
バシンと音が響く。場が静まりかえる。
「あ……すみませんっ」
咄嗟にしてしまったことなのだろう、青島自身も目をまん丸くしていた。そうしてしまって自分に驚きながらも、項を庇うように手を当てている。おそらく無意識だ。
青島が貴嗣様に謝罪をした。
貴嗣様は微笑まれた、満足そうに……。
Ωは本能的にうなじを守る。誰かに触られそうになると、とっさにそこを庇うのだ。
青島の反応はまさにΩのソレだ。ビッチングがどのように行われるのかは極秘だ。貴嗣様しか知らない。けれど確実に青島のΩ化は進んでいる?
「宮下」
「はははははいっ!」
「私は今、とても気分が良い。良かったな」
「あ、ありがとうございます!」
青島が目を白黒させている。状況を理解出来ていないらしい。
『罰は与えないとね』
青島は聞き逃した。宮下にはしっかり聞こえたのだろう。
けれど、宮下は免罪された。それは、もしかしたら昨夜のベク杯による青島との時間の功績なのかもしれない。あの時、何が行われたのだろう。
耳を塞いでも入ってきた青島のうめき声とすすり泣き、貴嗣様の荒い息使い……。あの点滴には何が入っていたのだろう。アルコール中毒予防の為の水分だけではなかったのか。マットの軋む音に、早々に皆リビングに逃げ出した。
暫く後に戻ってくると、穏やかな寝息が聞こえた…。
今朝の青島を見るに、まったく記憶していないようだった。
『罰は与えないとね』
手を弾かれたのに全く動じていない貴嗣様に向けられる青島の無邪気なまん丸の目。…………苛烈でなければ良いのだが。
「猪瀬」
貴嗣様がトントントンと指でテーブルを叩いた。
ハッとする。駄目だ。生半可な思いで青島に同情してはならない。気をやってはならない。貴嗣様は他者が青島を心配する事すら許さない。貴嗣様の中で、青島を見る者は貴嗣様だけでなければならないのだ。青島の世界は貴嗣様だけで完結してなければならないのだ。
宮下はなんとか体調を整え……てはいないが、諦めて飲む事にしたらしい。
適度に青島に酒を勧める役に徹するのだろうが、席が離れているから青島のもとまで来て立って酌をしろという事だ。地味~に貴嗣様の嫌がらせ。まぁ、この程度で済んだだけでも有り難いと思わないとだ。
…………いや、この程度ではすまないかもしれん。
青島が心配そうに宮下を見ている。貴嗣様には不快だろう。
「自業自得だ」
貴嗣様がきっぱりと言う。いや、宮下に何の業が……
「飲む飲まないは個人の自由だ。それを私が制限するのは違うだろう?」
「「「……」」」
いや、飲みたくないって言ってました…………
貴嗣様が深い深いため息をついた。
青島の視線を独り占めしていることが許せないのだろう、貴嗣様は方針変更し宮下がノンアル飲めるように手配された。
助かったな、宮下。……助かった、のか?執着心の塊が許すものなのか?
俺の不安をよそに青島は通常運転だ。
テーブルに置かれた ノンアルコールビールの瓶を持ってそのまま 宮下の元へと移動した。
貴嗣様の元から宮下のところへだ。
皆が危機感を持つ。戻るように青島に言いつつ恐る恐る貴嗣様を見つめた。
「陸、こっちへ」
「…………っ」
不機嫌なその声だけで、貴嗣様より下位の俺たちは息が詰まる。
青島が貴嗣様の隣に戻ると圧が弱まった。
はぁ……やっと息ができる。
貴嗣様が青島の頭を撫でた。
謝罪をした青島を許した?
貴嗣様が頭を撫で続ける。手が後頭部 手が少しずつ 後ろ寄りになる。頭頂から後頭部、後頭部から襟足へ…
「でも、陸……罰は与えないとね」
次の瞬間、青島が貴嗣様の手を払った
バシンと音が響く。場が静まりかえる。
「あ……すみませんっ」
咄嗟にしてしまったことなのだろう、青島自身も目をまん丸くしていた。そうしてしまって自分に驚きながらも、項を庇うように手を当てている。おそらく無意識だ。
青島が貴嗣様に謝罪をした。
貴嗣様は微笑まれた、満足そうに……。
Ωは本能的にうなじを守る。誰かに触られそうになると、とっさにそこを庇うのだ。
青島の反応はまさにΩのソレだ。ビッチングがどのように行われるのかは極秘だ。貴嗣様しか知らない。けれど確実に青島のΩ化は進んでいる?
「宮下」
「はははははいっ!」
「私は今、とても気分が良い。良かったな」
「あ、ありがとうございます!」
青島が目を白黒させている。状況を理解出来ていないらしい。
『罰は与えないとね』
青島は聞き逃した。宮下にはしっかり聞こえたのだろう。
けれど、宮下は免罪された。それは、もしかしたら昨夜のベク杯による青島との時間の功績なのかもしれない。あの時、何が行われたのだろう。
耳を塞いでも入ってきた青島のうめき声とすすり泣き、貴嗣様の荒い息使い……。あの点滴には何が入っていたのだろう。アルコール中毒予防の為の水分だけではなかったのか。マットの軋む音に、早々に皆リビングに逃げ出した。
暫く後に戻ってくると、穏やかな寝息が聞こえた…。
今朝の青島を見るに、まったく記憶していないようだった。
『罰は与えないとね』
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「猪瀬」
貴嗣様がトントントンと指でテーブルを叩いた。
ハッとする。駄目だ。生半可な思いで青島に同情してはならない。気をやってはならない。貴嗣様は他者が青島を心配する事すら許さない。貴嗣様の中で、青島を見る者は貴嗣様だけでなければならないのだ。青島の世界は貴嗣様だけで完結してなければならないのだ。
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