【本編完結済】底辺αは箱庭で溺愛される

27-猪瀬

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嘔吐表現あります。ご注意下さい
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しばらくして青島が雑炊を抱えて戻ってきた。
取り皿が2つ。
「「「…………」」」
ここの使用人は再度教育が必要なようだ。貴嗣様も朝食を取られていないのに二人分とは何事だ。いや、仮に食べていたとしても宮下と青島の二人分だけという時点で問題だ。推察力の低い者など、貴嗣様に仕えるに値しない

貴嗣様は一瞬眉を顰めたが、それだけだった。宮下の昨夜の働きを考慮してのことだろう。つまり…可動壁を動かした後の時間に満足されたのだ。
今朝の貴嗣様は、青島と初めて会った日に次ぐくらいに機嫌が良い。


青島が サイドテーブルの上に雑炊を置いた。
「宮下、 大丈夫か？食えるか？」
「う～……なんとか……」
宮下がうつむいたままに生返事をする。誰が話かけているかという認識もないのだろう。
「なんか、あんま大丈夫そうには見えないな」 
呟きながら取皿に雑炊を取り分け、レンゲに雑炊をよそって…………
「ひぃっ……！」
誰かの息を飲む音が聞こえた。
アウトだアウト、青島、ソレだけは駄目だ。
まるでスローモーションのようだった。よく、事故の直前に物事がゆっくりと見えるというアレだ。生命の危険を感じたときに時間精度が高まって、短い時間内により多くの映像を認知するアレだ。
命の危機、それ位まずいことを青島が行った。
レンゲに乗せた雑炊をふーふーと冷やし、宮下の口元まで持っていき、宮下も虚ろなままに差し出されるがままにパクリといったのだ！

青島！
お前、いくら下位の下位、底辺の底辺ど底辺とはいえ一応はαだろ。給餌がどういう事かわかってんだろ!

貴嗣様の威圧が宮下へと向かった。
「ヴ……！」
宮下がうめく。
「宮下！大丈夫か！？状況考えろよ！威圧なんて誰だよ！」
「「「……！（お前がな！）」」」

ニブ島は誰が誰があてに威圧を放ったのかも認識できないのだ。クソ底辺！
「具合が悪い奴がいるんだ 最低だぞ」
底辺の言葉に貴嗣様が威圧を納めた
皆、ホッと一息ついた。先程の威圧は宮下を狙った散弾銃だ、そばにいた俺たちにも被害があった。

「宮下、大丈夫か？」
何もわかっていない 青島が宮下の背中を撫でながら言う。宮下が貴嗣様の顔色を伺いつつ答える。
「大丈夫だ。ありがとう」
青島の手をさり気なくどかした。

「宮下」
「はい」
貴嗣様に声をかけられて、宮下の顔色は最早土気色だ。
「顔色が悪い。吐いた方が楽になるのでは？」
……つまり、給餌されたものを吐き出しこいと。
「……そうですね」
「宮下、ごめん。味付けがきつかったか？味見はしたんだけど、俺の体調は悪くないから、ちょっと濃く作っちゃったのかな」
「「「…………」」」
い、ま、なんつった、コイツ。

貴嗣様が散弾銃なら、コイツはクレーだ。アメリカントラップの様に、何処に打ち出されるか不明なクレー。
せめて人がいない方向に放出されればいいものを……!

「宮下……、やっぱり吐くな。吐くと体力を消耗するから体によくない」

「はひ……」

口を強く引き結んでいる。恐らく……吐き気と戦っている。
貴嗣様は、青島の手作り料理を食べた宮下も許せないが、青島が作ったものを粗末にすることも、許せないのだ。その混迷する感情を直に受けて、宮下は船酔いの様な状態になっている。けれど、こみ上げてきても、耐えるしかないのだ、貴嗣様にいわれてしまったのだから。

「？宮下？気持ち悪いのか？トイレまで連れて行こうか？」

口を押さえる宮下に青島が肩をかそうとする。宮下が縋るようにこちらを見てきた。…………流石に気の毒だ。

「…………青島、宮下は俺が連れて行く、実は貴嗣様も朝食を取ってない。雑炊余らせるのも勿体無いし貴嗣様にも」

いつの間にか千葉が取皿とレンゲを追加で持ってきていた。それを貴嗣様が受け取る。

「あ、そうなの？てっきり済ませて先に戻ってきているんだと思ってました。京極様も食べますか？」

「ああ。」

貴嗣様がふわりと笑う。少し、場が和んできた

「あ、じゃぁどうぞ。あ、でも、これ、宮下の為に作ったから、京極様には味が薄いかも……」

「「「「………………」」」」

上げて下げる。

宮下と共に俺はドア口まで移動していたから、まだ何とかなってるが、中央は散弾銃が火をふいているだろう…………。