23 / 243
23ー猪瀬
しおりを挟む
風呂から戻ってきた貴嗣様はご機嫌だ。千葉はあからさまに顔を顰めている。
……まあ、気持ち悪いのは確かだ。
番というものは恐ろしい、冷酷とか感情が無いとまで言われた貴嗣様をここまで変えてしまうのだから。
千葉がポツリと呟いた。
「俺は運命には出会いたくないな……」
同感だ。貴嗣様より番を優先してしまう自分などにはなってはならない
貴嗣様は青島よりも数分遅れで戻ってきた。ナニをしてきたかは大体想像がつく。貴嗣様が自己処理をされる日が来ようとは……。
その青島といえば、想像通り宮下を明日の朝風呂に誘っていた。時間差があって良かったな、宮下。貴嗣様に見られていたら無事ではすまなかったはずた。処理が必要な位有意義な時間を、自分以外の人間も堪能するのだ。……まぁ俺たちにとっては恐怖の時間でしかないが。
助けを求める様に宮下がこちらを見るが、皆そっと目をそらす。
「あ、明日はスケジュールがいっぱいだから朝風呂に入る時間なんてない!」
「ふぅん、そうなんだ」
宮下の顔が明るくなる
「じゃぁ、夕方な」
「…………」
バカ島の言葉に宮下の顔が歪む。まぁ、誰かしらは犠牲になる定めだからな。
合掌……
青島は宮下にふられて、ぼんやりと窓の外を見ている。
時折、スマートウオッチを撫でる。無意識のようだ。
それを見て貴嗣様の眉が寄る。
「陸」
コンちゃんとやらを思い出すことすら許せないのだろう、咎める様に貴嗣様が青島に声をかけた。
「陸、どうかしたのか」
「あ、いえ……。きれいだな、と。」
「そうだな。一週間あるし、堪能しろ」
「…………はい」
まただ、また、スマートウオッチを触る。
ため息がでる。貴嗣様の機嫌が悪くなるから、さわるなと言いたい。
貴嗣様と青島が湯舟に浸かっている間に千葉と共に脱衣所に行ったが、スマホもスマートウオッチもなかった。追跡盗聴アプリをインストールする予定だったのが崩れた。
「陸、すぐ夕飯だ。ここは海鮮が美味しい。楽しみにしていろ。酒がすすむぞ」
「はい」
青島を潰すから、その間にスマートウオッチに細工しろと、すぐにと、そう千葉に命じている。
コンちゃんとやらへの唯一の手掛かりでなければ、貴嗣様はとうに壊している。忌々しい、そう思っているのが伝わってきた。
夕飯は予定より早くスタートした。いや、させた。
乾杯はベク杯で行った。あの飲み切らないと卓上におけないぐい呑だ。
湯上がり空腹の青島に一気飲みはかなりくるはずだ。しかも青島のちょこは天狗だ。容量がもっとも大きい。
ちょこはアミダクジで青島自身に選ばせたから何の疑問にも思っていない。皆で車座になって下を隠した紙に適当に記名した後に各自ニ本ずつ線を更に加えていった。ひく順番が青島宮下…………と続いていき俺千葉貴嗣となった事などバカ島ならば気にもしないだろう。6本も線をひければ青島に天狗を当てるなど俺らには雑作もないことだ。
青島が眉を寄せながら飲み干した。はふうと熱いため息をつく。
貴嗣様の青島を見る視線も熱い。
……
…………
容量の問題だよな?容量の問題だ。
あの貴嗣様が他の意図をもって青島に天狗を持たせたわけではない。俺の主がそんなに……
青島が杯を置いた。
面白れ~と言いながら天狗の鼻を触る
貴嗣様は大国の大統領ですら敬意を示す方だ。大臣程度、鼻で扱える様な方だ。
……ごくり
貴嗣様の方向から唾を飲む音が聞こえた、気がした。
…………
……気の所為だと、気の所為だと誰か言ってくれ………………。
ーーーーーーーーーーーーー
貴嗣様は、高貴なお方です。
下賤な方ではありません!
猪瀬さんの勘違い!…………だといいですね…………。
可杯(べくはい)とは、底が尖っていたり穴が空いていたりする盃。お酒をのみ干してしまうまでは下に置けません。おかめ、ひょっとこ、天狗の順に容量が大きくなります。
……まあ、気持ち悪いのは確かだ。
番というものは恐ろしい、冷酷とか感情が無いとまで言われた貴嗣様をここまで変えてしまうのだから。
千葉がポツリと呟いた。
「俺は運命には出会いたくないな……」
同感だ。貴嗣様より番を優先してしまう自分などにはなってはならない
貴嗣様は青島よりも数分遅れで戻ってきた。ナニをしてきたかは大体想像がつく。貴嗣様が自己処理をされる日が来ようとは……。
その青島といえば、想像通り宮下を明日の朝風呂に誘っていた。時間差があって良かったな、宮下。貴嗣様に見られていたら無事ではすまなかったはずた。処理が必要な位有意義な時間を、自分以外の人間も堪能するのだ。……まぁ俺たちにとっては恐怖の時間でしかないが。
助けを求める様に宮下がこちらを見るが、皆そっと目をそらす。
「あ、明日はスケジュールがいっぱいだから朝風呂に入る時間なんてない!」
「ふぅん、そうなんだ」
宮下の顔が明るくなる
「じゃぁ、夕方な」
「…………」
バカ島の言葉に宮下の顔が歪む。まぁ、誰かしらは犠牲になる定めだからな。
合掌……
青島は宮下にふられて、ぼんやりと窓の外を見ている。
時折、スマートウオッチを撫でる。無意識のようだ。
それを見て貴嗣様の眉が寄る。
「陸」
コンちゃんとやらを思い出すことすら許せないのだろう、咎める様に貴嗣様が青島に声をかけた。
「陸、どうかしたのか」
「あ、いえ……。きれいだな、と。」
「そうだな。一週間あるし、堪能しろ」
「…………はい」
まただ、また、スマートウオッチを触る。
ため息がでる。貴嗣様の機嫌が悪くなるから、さわるなと言いたい。
貴嗣様と青島が湯舟に浸かっている間に千葉と共に脱衣所に行ったが、スマホもスマートウオッチもなかった。追跡盗聴アプリをインストールする予定だったのが崩れた。
「陸、すぐ夕飯だ。ここは海鮮が美味しい。楽しみにしていろ。酒がすすむぞ」
「はい」
青島を潰すから、その間にスマートウオッチに細工しろと、すぐにと、そう千葉に命じている。
コンちゃんとやらへの唯一の手掛かりでなければ、貴嗣様はとうに壊している。忌々しい、そう思っているのが伝わってきた。
夕飯は予定より早くスタートした。いや、させた。
乾杯はベク杯で行った。あの飲み切らないと卓上におけないぐい呑だ。
湯上がり空腹の青島に一気飲みはかなりくるはずだ。しかも青島のちょこは天狗だ。容量がもっとも大きい。
ちょこはアミダクジで青島自身に選ばせたから何の疑問にも思っていない。皆で車座になって下を隠した紙に適当に記名した後に各自ニ本ずつ線を更に加えていった。ひく順番が青島宮下…………と続いていき俺千葉貴嗣となった事などバカ島ならば気にもしないだろう。6本も線をひければ青島に天狗を当てるなど俺らには雑作もないことだ。
青島が眉を寄せながら飲み干した。はふうと熱いため息をつく。
貴嗣様の青島を見る視線も熱い。
……
…………
容量の問題だよな?容量の問題だ。
あの貴嗣様が他の意図をもって青島に天狗を持たせたわけではない。俺の主がそんなに……
青島が杯を置いた。
面白れ~と言いながら天狗の鼻を触る
貴嗣様は大国の大統領ですら敬意を示す方だ。大臣程度、鼻で扱える様な方だ。
……ごくり
貴嗣様の方向から唾を飲む音が聞こえた、気がした。
…………
……気の所為だと、気の所為だと誰か言ってくれ………………。
ーーーーーーーーーーーーー
貴嗣様は、高貴なお方です。
下賤な方ではありません!
猪瀬さんの勘違い!…………だといいですね…………。
可杯(べくはい)とは、底が尖っていたり穴が空いていたりする盃。お酒をのみ干してしまうまでは下に置けません。おかめ、ひょっとこ、天狗の順に容量が大きくなります。
142
お気に入りに追加
1,572
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる