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16ー猪瀬
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青島が懇親旅行に来るとなってからの貴嗣様の集中力は素晴らしかった。
普段から学生と専務の2足のわらじを履いている貴嗣様の夏休みというものはとても貴重だ。
会社の業務に専念しいただける、社員にとっても有益な時間なのだ。このため、基本的には貴嗣様に休日はない。そんな貴嗣様が1週間休みを取るのだ。そして、 懇親会という名目がある以上、貴嗣様の秘書である俺たちも休みを取る。会社にとってはなかなかの痛手となるはずだったのだが……。
やはり番を得た上位αのポテンシャルは違う。
これまでの不調が嘘のように、マルチタスクを次々とこなしていく。
1週間どころか 10日ぐらい休みを取っても誰にも文句を言わせない、それくらいの業務を終わらせた。
青島とともに過ごせる、それだけで これほどの能力を発揮されるのだ。青島がΩとなり、完全に番契約を終えたら、貴嗣様はどこまでいくのだろう。
「明日だな」
貴嗣様が満足そうに言う。
ここまで完璧に業務をこなした以上、志摩の別荘にいる間に本社に戻らなればならない事態などはおきないだろう。
ちなみに 明日はヘリで志摩の別荘に向かう。
貴嗣様のマルチタスクに付き合った俺たちはほぼ屍状態で、明日のヘリの中でも寝落ちしているであろう。
となると、青島の話相手は貴嗣様だけとなる。
無理矢理招待した俺に対しては不満を持っている青島だが、初のヘリ移動に浮かれて唯一起きている貴嗣様にひたすら話しかけるだろう。
今回の旅行、貴嗣様自身が青島に声をかけなかったのはこの辺が狙いだったのだろう。
案の定、別荘に着いた青島は今までになく貴嗣様への警戒心を失っていた。
貴嗣様に話しかけられても普通に対応する。今までは猫が毛を逆立てて背中を丸めて、ふしゅうと叫んでるような感じだったのだが。
別荘は今回のために改装をした。
元々は二人一部屋仕様になっていた寝室を壁を取っ払い皆が一室で寝れるようにした。誰が青島と同室になるかで揉めるのが見えていたからだ。
貴嗣様は当然ながら青島と同室を希望されるだろうが、青島に怪しまれないためを考えると俺と同室がベストとなる。だが、貴嗣様を差し置いて青島と同室になりたい=死を望むものなどいない。
露天風呂、脱衣場も広くした。
私達が青島の裸体を見なくて済むようにするためだ。
今回の改装は貴嗣様の欲を叶えつつ、我々が貴嗣様の嫉妬により海の藻屑にされない為のものだ。
工事担当者にこの意図が伝わる訳もなく、マルチタスクで忙しい最中に、これでホントに良いのですかと、何度も確認の連絡が入ってきたものだった…。
「うわぁ、凄いなぁ」
青島が目をキラキラさせて別荘を見る。貴嗣様はそれはそれは穏やかな顔で青島を見つめた。
といっても、この表情の変化に気がつくのは俺と千葉位だろうな。
青島がスマホを取り出してパシャパシャと写真を撮る
ん?
スマホ?
…………スマホが今までのと変わっている。機種変、したのか。
皆の視線が青島のスマホに向かう。
「え?あれ?写真取ったら駄目でした?」
「あ、いや、青島スマホ……」
バカ
バカ宮っ
無防備だった青島がまた警戒心をもった。ササッと携帯を隠した。また、貴嗣様との間に距離ができる
「…………宮下、君が眠っていたから伝えそびれたのだけど、親御さんから連絡あって、直ぐに帰ってこいと。今ならまだ……」
貴嗣様が宮下にクビ宣告した。直ぐにここから出て行けと。直ぐに出るなら、家族には手を出さない、と。
「は、はい…。」
宮下がガクガクと震えながら、返事をした。事態を理解していない青島以外、皆青褪めた。これからの数日間、俺たちは薄氷の上にいる…………
緊張のあまりに唾を飲み込んだ。
「…………宮下、帰るのか?ご両親なんて?一息つく時間もないのか?宮下の好きな茶葉も持ってきてるんだし、ちょっと休んでからじゃ間に合わないのか?」
青島が致命傷を与えた。宮下は虫の息だ。
宮下を気遣ったのか側近が減ることをあやうんだのか……だが、逆効果だ。青島が貴嗣様より優先させる者がこの世に存在してはならない。
俺たちは薄氷の上にいる。そして、側には故意か無意識かスパイクを履いて走り回る青島がいる……。
「皆の好きな茶葉をもってきたんだよ。」
「…………私にもか?」
貴嗣様が問う
「はい。いちごジャムも持ってきてます。俺のお気に入りの農園から取り寄せたいちごで作ったジャムですよ。宮下が持って来てくれって……」
「…………そうか。宮下。ご両親に確認しろ。もしかしたら、状況が変わって旅行後でも間に合うかもしれないし」
「わ、わかりました。」
青島の手作りジャムで首の皮一枚で繋がったな……
だが。
そのスマホの機種変は偶然か?
データはどこまで残っている?
ちらりと千葉を見ると、ヤツが小さく頷いた…………。
普段から学生と専務の2足のわらじを履いている貴嗣様の夏休みというものはとても貴重だ。
会社の業務に専念しいただける、社員にとっても有益な時間なのだ。このため、基本的には貴嗣様に休日はない。そんな貴嗣様が1週間休みを取るのだ。そして、 懇親会という名目がある以上、貴嗣様の秘書である俺たちも休みを取る。会社にとってはなかなかの痛手となるはずだったのだが……。
やはり番を得た上位αのポテンシャルは違う。
これまでの不調が嘘のように、マルチタスクを次々とこなしていく。
1週間どころか 10日ぐらい休みを取っても誰にも文句を言わせない、それくらいの業務を終わらせた。
青島とともに過ごせる、それだけで これほどの能力を発揮されるのだ。青島がΩとなり、完全に番契約を終えたら、貴嗣様はどこまでいくのだろう。
「明日だな」
貴嗣様が満足そうに言う。
ここまで完璧に業務をこなした以上、志摩の別荘にいる間に本社に戻らなればならない事態などはおきないだろう。
ちなみに 明日はヘリで志摩の別荘に向かう。
貴嗣様のマルチタスクに付き合った俺たちはほぼ屍状態で、明日のヘリの中でも寝落ちしているであろう。
となると、青島の話相手は貴嗣様だけとなる。
無理矢理招待した俺に対しては不満を持っている青島だが、初のヘリ移動に浮かれて唯一起きている貴嗣様にひたすら話しかけるだろう。
今回の旅行、貴嗣様自身が青島に声をかけなかったのはこの辺が狙いだったのだろう。
案の定、別荘に着いた青島は今までになく貴嗣様への警戒心を失っていた。
貴嗣様に話しかけられても普通に対応する。今までは猫が毛を逆立てて背中を丸めて、ふしゅうと叫んでるような感じだったのだが。
別荘は今回のために改装をした。
元々は二人一部屋仕様になっていた寝室を壁を取っ払い皆が一室で寝れるようにした。誰が青島と同室になるかで揉めるのが見えていたからだ。
貴嗣様は当然ながら青島と同室を希望されるだろうが、青島に怪しまれないためを考えると俺と同室がベストとなる。だが、貴嗣様を差し置いて青島と同室になりたい=死を望むものなどいない。
露天風呂、脱衣場も広くした。
私達が青島の裸体を見なくて済むようにするためだ。
今回の改装は貴嗣様の欲を叶えつつ、我々が貴嗣様の嫉妬により海の藻屑にされない為のものだ。
工事担当者にこの意図が伝わる訳もなく、マルチタスクで忙しい最中に、これでホントに良いのですかと、何度も確認の連絡が入ってきたものだった…。
「うわぁ、凄いなぁ」
青島が目をキラキラさせて別荘を見る。貴嗣様はそれはそれは穏やかな顔で青島を見つめた。
といっても、この表情の変化に気がつくのは俺と千葉位だろうな。
青島がスマホを取り出してパシャパシャと写真を撮る
ん?
スマホ?
…………スマホが今までのと変わっている。機種変、したのか。
皆の視線が青島のスマホに向かう。
「え?あれ?写真取ったら駄目でした?」
「あ、いや、青島スマホ……」
バカ
バカ宮っ
無防備だった青島がまた警戒心をもった。ササッと携帯を隠した。また、貴嗣様との間に距離ができる
「…………宮下、君が眠っていたから伝えそびれたのだけど、親御さんから連絡あって、直ぐに帰ってこいと。今ならまだ……」
貴嗣様が宮下にクビ宣告した。直ぐにここから出て行けと。直ぐに出るなら、家族には手を出さない、と。
「は、はい…。」
宮下がガクガクと震えながら、返事をした。事態を理解していない青島以外、皆青褪めた。これからの数日間、俺たちは薄氷の上にいる…………
緊張のあまりに唾を飲み込んだ。
「…………宮下、帰るのか?ご両親なんて?一息つく時間もないのか?宮下の好きな茶葉も持ってきてるんだし、ちょっと休んでからじゃ間に合わないのか?」
青島が致命傷を与えた。宮下は虫の息だ。
宮下を気遣ったのか側近が減ることをあやうんだのか……だが、逆効果だ。青島が貴嗣様より優先させる者がこの世に存在してはならない。
俺たちは薄氷の上にいる。そして、側には故意か無意識かスパイクを履いて走り回る青島がいる……。
「皆の好きな茶葉をもってきたんだよ。」
「…………私にもか?」
貴嗣様が問う
「はい。いちごジャムも持ってきてます。俺のお気に入りの農園から取り寄せたいちごで作ったジャムですよ。宮下が持って来てくれって……」
「…………そうか。宮下。ご両親に確認しろ。もしかしたら、状況が変わって旅行後でも間に合うかもしれないし」
「わ、わかりました。」
青島の手作りジャムで首の皮一枚で繋がったな……
だが。
そのスマホの機種変は偶然か?
データはどこまで残っている?
ちらりと千葉を見ると、ヤツが小さく頷いた…………。
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