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14ー猪瀬
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とても貴重なものをみた。
貴嗣様の微笑だ。
あのような笑みを浮かべる方とは思ってもいなかった。満たされた様な…………
「猪瀬、それでコンちゃんとやらの件は?」
無表情で尋ねられた。目をパシパシさせてしまう。先日の笑み、あれは夢を見ただけではないだろうか?
「全く進んでおりません。千葉でもわからずじまいなので、AI説を信じたくなりますよ……」
思わず弱音を吐いてしまった。千葉は裏社会にも詳しい。京極の表ルートも千葉の裏でもコンちゃんとやらの情報はないままだ。
「…………」
温度のない目で見られた。
「何とか、携帯を奪うつもりです。何某か入ってるとは思いますので……」
青島の家にも忍び込んだが、コンちゃんとやらの形跡は皆無だった。二次元アイドル疑惑すらあったが、その痕跡もない。
だが、青島のコンちゃんへの想いは実在はする。そして、貴嗣様はそれを許さない。他のモノが青島の中にいる事を許さない。こうまでなると、コンちゃんなるものがΩであることを願う。青島の中から抹消し易い。
だが…
青島の部屋は違和感だらけだった。それこそ上位αの執着の様に青島を守る部屋だった。共に訪れたのが千葉でなければ忍び込んだのが露見していたであろう。一度目は何もせずに退散するしか無かった。ドアを開けて終わりだった。二度目は千葉があらゆる準備をして臨んだが、それでも引き出しの中やパソコンを探る事はできなかった。三度目、ようやく開封出来た引き出しの中にコンちゃんに結びつくものは無かった。千葉は、探っている事が露見したくなければパソコンは諦めろといった。
貴嗣様は、青島がヒートになるまで、つまり番うまでは探ってることを秘密にしたいらしい。
青島の警戒心を増幅する利はない。青島は不思議な事に貴嗣様のターゲットがコンちゃんだと思っているらしく、別の意味では貴嗣様に無警戒だ。さり気なく貴嗣様が青島に触れている事にも気がついてない。
貴嗣様の変性手段は極秘にされていて、我々は知らない。触れるその行為で変わるのかフェロモンをあて続ける事で変化するのか、それとも?
どちらにしろ、気づかれる訳にはいかない。我々からすればビッチングは迷信などではないが、下位も下位、底辺ともいえる青島にその情報は届かない。都市伝説とでも思っているはずだ。
「いっその事、ビッチングを急ぎ、その後に処分されては?」
そんな事が可能ならば、だが。いや、既に可能な限りの速さで動いているはずだ。
案の定、軽蔑したような目で見られた。
「お前も高橋と同じ所に行きたいか?」
「い、いえ!」
あの日、貴嗣様より優先された高橋は地方に飛ばされた。大学も転学という形をとらされた。
青島は高橋のためを思って紅茶を入れたのかもしれないが、結果は左遷だ。
『私のもとで働くには、体力的にも能力的にもまだ厳しいようだ。地方で研鑽し直してからまた私のもとに来てくれ』
青島が部屋に来れない日に 皆の前で 貴嗣様はおっしゃった。
つまりは皆に対する言いがかり……というか、牽制だ。
青島が何かをすれば とばっちりはこちらが食らう
あの翌日、執務室に来た青島に皆が詰め寄って言った
俺らは京極様の部下だ。上司を優先しろ。京極様を同じに扱うな
鬼気迫る顔つきで言ったのだろう。青島がコクコク頷いた。
「みんな落ち着いてくださいよ。そうだ、こんな時こそラベンダーティなんていかがですか?落ち着きますよ」
だ、か、ら、それな!
「アレ?高橋は?休み?」
お、ま、え、が、言うな~!
思わず青島の頭をはたいた。
あの時、貴嗣様がいなくてよかったと、今でも思う。
貴嗣様の微笑だ。
あのような笑みを浮かべる方とは思ってもいなかった。満たされた様な…………
「猪瀬、それでコンちゃんとやらの件は?」
無表情で尋ねられた。目をパシパシさせてしまう。先日の笑み、あれは夢を見ただけではないだろうか?
「全く進んでおりません。千葉でもわからずじまいなので、AI説を信じたくなりますよ……」
思わず弱音を吐いてしまった。千葉は裏社会にも詳しい。京極の表ルートも千葉の裏でもコンちゃんとやらの情報はないままだ。
「…………」
温度のない目で見られた。
「何とか、携帯を奪うつもりです。何某か入ってるとは思いますので……」
青島の家にも忍び込んだが、コンちゃんとやらの形跡は皆無だった。二次元アイドル疑惑すらあったが、その痕跡もない。
だが、青島のコンちゃんへの想いは実在はする。そして、貴嗣様はそれを許さない。他のモノが青島の中にいる事を許さない。こうまでなると、コンちゃんなるものがΩであることを願う。青島の中から抹消し易い。
だが…
青島の部屋は違和感だらけだった。それこそ上位αの執着の様に青島を守る部屋だった。共に訪れたのが千葉でなければ忍び込んだのが露見していたであろう。一度目は何もせずに退散するしか無かった。ドアを開けて終わりだった。二度目は千葉があらゆる準備をして臨んだが、それでも引き出しの中やパソコンを探る事はできなかった。三度目、ようやく開封出来た引き出しの中にコンちゃんに結びつくものは無かった。千葉は、探っている事が露見したくなければパソコンは諦めろといった。
貴嗣様は、青島がヒートになるまで、つまり番うまでは探ってることを秘密にしたいらしい。
青島の警戒心を増幅する利はない。青島は不思議な事に貴嗣様のターゲットがコンちゃんだと思っているらしく、別の意味では貴嗣様に無警戒だ。さり気なく貴嗣様が青島に触れている事にも気がついてない。
貴嗣様の変性手段は極秘にされていて、我々は知らない。触れるその行為で変わるのかフェロモンをあて続ける事で変化するのか、それとも?
どちらにしろ、気づかれる訳にはいかない。我々からすればビッチングは迷信などではないが、下位も下位、底辺ともいえる青島にその情報は届かない。都市伝説とでも思っているはずだ。
「いっその事、ビッチングを急ぎ、その後に処分されては?」
そんな事が可能ならば、だが。いや、既に可能な限りの速さで動いているはずだ。
案の定、軽蔑したような目で見られた。
「お前も高橋と同じ所に行きたいか?」
「い、いえ!」
あの日、貴嗣様より優先された高橋は地方に飛ばされた。大学も転学という形をとらされた。
青島は高橋のためを思って紅茶を入れたのかもしれないが、結果は左遷だ。
『私のもとで働くには、体力的にも能力的にもまだ厳しいようだ。地方で研鑽し直してからまた私のもとに来てくれ』
青島が部屋に来れない日に 皆の前で 貴嗣様はおっしゃった。
つまりは皆に対する言いがかり……というか、牽制だ。
青島が何かをすれば とばっちりはこちらが食らう
あの翌日、執務室に来た青島に皆が詰め寄って言った
俺らは京極様の部下だ。上司を優先しろ。京極様を同じに扱うな
鬼気迫る顔つきで言ったのだろう。青島がコクコク頷いた。
「みんな落ち着いてくださいよ。そうだ、こんな時こそラベンダーティなんていかがですか?落ち着きますよ」
だ、か、ら、それな!
「アレ?高橋は?休み?」
お、ま、え、が、言うな~!
思わず青島の頭をはたいた。
あの時、貴嗣様がいなくてよかったと、今でも思う。
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