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貴嗣様の命で図書館の方の捜索は振り出しに戻った。
そうだ、貴嗣様は図書館に出入りしたもの全てを調べよと言った。それを我々が早合点してΩに絞ったのだ。貴嗣様の番になられるかたならΩに違いないと。だが、そう、だが、現在Ωである必要はないのだ。
京極家のまことしやかに囁かれている噂、京極の人間は、伴侶をΩに作り帰る能力がある。
同じ轍を踏む訳にはいかない。
都市伝説とまで言われているビッチングが可能ならば、番の上書きなど赤子の手をひねるより簡単だ。
虱潰しに、顔写真を作っていくしかない。
貴嗣様は、その方の顔を見て無いという。また、その方も会ったのが京極貴嗣だとは知らないだろうとも言われた。
貴嗣様は捜索を命じられた6月以降、頻繁に図書館に出向かれた。執務室にいるよりは再会する可能性があるから。
貴嗣様の図書館通いは噂となり、京極と関係を結びたい者が列をなした、
叢がる蟻ども、見つからない伴侶、一向に上がってこない報告、貴嗣様の苛立ちは極限に達しようとしていた。
顔写真一覧の作成完了時、我々が思ったのは間に合った……の一言だ。
そこからは早かった。
顔は見ていないとの事だったが、会えば分かるという事で、一覧から既知の者が外された。残りは200数名。一同に会させた方が早いという事で、対象者を懇親会に招いた。貴嗣様が人を探しているという事は知れ渡っており、側近や伴侶狙いで、参加率は80%を超えた。そこでも番様は現れなかった。
不参加の者を訪ねていく。先ずは学生だ。該当の学生の受講スケジュールを確認し首実検を繰り返した。
そして、青島にたどり着いた。
「あれは……」
講堂で友人と戯れている青島に貴嗣様がふらふらと吸い寄せられていく。
「青島陸です。経済学部一年」
現時点の情報はこの程度だが、青島で当たりだ。詳細を調べるように指示を出した。
「陸……」
うっとりとしながら誘引されていく。
そしてそのまま、青島の背中に声をかけた。
「陸」
「おう」
声をかけられた青島が振り向いた。一瞬だが、顔を強張らせたのが見て取れた。
貴嗣様はやっと出会えた多幸感で気が付かなかったようだが……何故だ?
天下の京極グループ、小学の歴史の教科書にも乗っているほどの財閥の御曹司に声をかけられて?
いや、仮にも経済学部のαだ。単なる用事で京極との懇親会のチケットを棒に振るか?
青島は意図的に貴嗣様を避けていたのではないだろうか。理由は分からないが、それが正解に思えた。
「陸……」
うっとりと呟き、そのまま手を青島の頬に伸ばそうとする貴嗣様を慌ててとめた。情報不足、時期尚早だ、悪手だ
「貴嗣様!」
私の大声に、貴嗣様が覚醒した。それだけで察して下さったようだ。
「青島陸さん、今、私達は仕事の補佐をしてくれる人を求めています。あなたをリクルートしにきました」
周囲に聞こえるように声をはらして言う。
案の定、青島は眉を顰めた。だが、この状況では断る事もできまい。
「俺……私程度の能力では皆様にご迷惑をかけてしまうのがオチかと。どのような経緯かは存じませんが、もっと相応しい方にご依頼されては?」
往生際が悪くなんとか回避できないかと思考している
「辞退されるのは珍しくて、余計に陸にお願いしたくなったな。」
貴嗣様の珍しいというその単語に青島がピクリと震えた。
「光栄です。お…私でお役に立つならば……」
なんだ、その変わり身の速さは。だが…、根が素直なのだろう、貴嗣様におもねっているように見えるが、よくよく観察すれば、補佐を嫌がっているのが、明白だ。
………やはり、青島の過去を洗っておいたほうがいいな。
~~~~~~~~~~
ストックがなくなりました。
この先は亀以下の更新になります。
よろしくお願いします
そうだ、貴嗣様は図書館に出入りしたもの全てを調べよと言った。それを我々が早合点してΩに絞ったのだ。貴嗣様の番になられるかたならΩに違いないと。だが、そう、だが、現在Ωである必要はないのだ。
京極家のまことしやかに囁かれている噂、京極の人間は、伴侶をΩに作り帰る能力がある。
同じ轍を踏む訳にはいかない。
都市伝説とまで言われているビッチングが可能ならば、番の上書きなど赤子の手をひねるより簡単だ。
虱潰しに、顔写真を作っていくしかない。
貴嗣様は、その方の顔を見て無いという。また、その方も会ったのが京極貴嗣だとは知らないだろうとも言われた。
貴嗣様は捜索を命じられた6月以降、頻繁に図書館に出向かれた。執務室にいるよりは再会する可能性があるから。
貴嗣様の図書館通いは噂となり、京極と関係を結びたい者が列をなした、
叢がる蟻ども、見つからない伴侶、一向に上がってこない報告、貴嗣様の苛立ちは極限に達しようとしていた。
顔写真一覧の作成完了時、我々が思ったのは間に合った……の一言だ。
そこからは早かった。
顔は見ていないとの事だったが、会えば分かるという事で、一覧から既知の者が外された。残りは200数名。一同に会させた方が早いという事で、対象者を懇親会に招いた。貴嗣様が人を探しているという事は知れ渡っており、側近や伴侶狙いで、参加率は80%を超えた。そこでも番様は現れなかった。
不参加の者を訪ねていく。先ずは学生だ。該当の学生の受講スケジュールを確認し首実検を繰り返した。
そして、青島にたどり着いた。
「あれは……」
講堂で友人と戯れている青島に貴嗣様がふらふらと吸い寄せられていく。
「青島陸です。経済学部一年」
現時点の情報はこの程度だが、青島で当たりだ。詳細を調べるように指示を出した。
「陸……」
うっとりとしながら誘引されていく。
そしてそのまま、青島の背中に声をかけた。
「陸」
「おう」
声をかけられた青島が振り向いた。一瞬だが、顔を強張らせたのが見て取れた。
貴嗣様はやっと出会えた多幸感で気が付かなかったようだが……何故だ?
天下の京極グループ、小学の歴史の教科書にも乗っているほどの財閥の御曹司に声をかけられて?
いや、仮にも経済学部のαだ。単なる用事で京極との懇親会のチケットを棒に振るか?
青島は意図的に貴嗣様を避けていたのではないだろうか。理由は分からないが、それが正解に思えた。
「陸……」
うっとりと呟き、そのまま手を青島の頬に伸ばそうとする貴嗣様を慌ててとめた。情報不足、時期尚早だ、悪手だ
「貴嗣様!」
私の大声に、貴嗣様が覚醒した。それだけで察して下さったようだ。
「青島陸さん、今、私達は仕事の補佐をしてくれる人を求めています。あなたをリクルートしにきました」
周囲に聞こえるように声をはらして言う。
案の定、青島は眉を顰めた。だが、この状況では断る事もできまい。
「俺……私程度の能力では皆様にご迷惑をかけてしまうのがオチかと。どのような経緯かは存じませんが、もっと相応しい方にご依頼されては?」
往生際が悪くなんとか回避できないかと思考している
「辞退されるのは珍しくて、余計に陸にお願いしたくなったな。」
貴嗣様の珍しいというその単語に青島がピクリと震えた。
「光栄です。お…私でお役に立つならば……」
なんだ、その変わり身の速さは。だが…、根が素直なのだろう、貴嗣様におもねっているように見えるが、よくよく観察すれば、補佐を嫌がっているのが、明白だ。
………やはり、青島の過去を洗っておいたほうがいいな。
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