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医者なんて、信じられない
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初対面の雪井先生は、カルテを見てくれない。確かに、数十年にも及ぶ記録を確認するよりは、私達と話す方が早いのかも知れない。話しながら、レントゲンなどを確認していく。
「あ~はいはい、こんな感じね。う~ん、手術しても、効果無いかもしれないけれど、まあ、やってみて損は無いかもね」
水を抜く管は頭から通すという。
「あのっネットに載っていたのは腰からってなっていたんですけどっ」
娘が、私の疑問を伝えてくれた。
「腰、あ~腰ね。その手もあるか。う~ん。でも、腰からだと、効果ある場合と、そうでない場合があるんですよね。特にご主人の場合、え~と、何年前に手術したんだっけ?まぁ、その時いれた管が途中で詰まっている可能性もあるんで、腰に入れても効果無いかもしれないんで、頭から新しい管を通すほうが良いです。頭といっても、ご主人の場合、前の手術で既に頭蓋骨に穴開いてるんで、そこを再利用するから、そんなに大掛かりにはなりませんよ。」
手術をする、という事で、地方で脳外科医をしている甥が顔を出しにきた。
何かが引っかかっていたのか、娘が甥に、管を頭から通す件を報告する。
「う~ん。僕なら、腰からやるけど」
「なんか、雪井先生曰く、父上は、だいぶ前に手術しているから、腰からだと効果ないって。腰からの人は、初回手術の人とかに勧めるって。」
「ふ~ん.まあ、僕はレントゲンとか見てないから分からないけど、主治医がそういうなら、そうかもね」
「………ねぇ、今度、一緒に来てもらえないかな?」
ふいに、ご近所さんに言われた言葉を思い出して言った。
『やっぱり、親類に医者がいると、対応が違うのよ。入院中、何度も様子見に来てくれるし』
雪井先生の場合、その方がいいような気がした。
「急には無理だよ。あけれて、一日かな。説明の日に行くよ」
………心配だった。一日だったら、手術日の方がいい。同業者がいたほうが、手術に身が入るだろう。
二週間後、手術の説明を受けに行った
「で、やりますか?やめますか?」
スタートがそれだった。私達は、手術の説明を
受けにきたのだが、手術をするしないを決めてからの説明なのだろうか?
「やります」
「では、手術日は●月●日で。コ●ナ渦なので、手術に立ち会い禁止、ご家族は自宅待機で何かあったり、手術が終わったりしたら病院から電話で知らせます。手術後2週間ほどはこちらの病院、その後はリハビリ専門病院に転院して、そこで三ヵ月ってとこかな。入院中の面会はありません。それとご主人は認知症が進んでいるので、拘束の期間が長くなるかもしれません。で手術中のリスクですが……」
立て板に水、とはこのことだろう。こんな勢いで言われても認知症の夫には理解できない。不安そうな顔をした。
娘がそれをみて、
「大丈夫だから、リスクないから、脳をいじったりしないから。簡単な手術だから」
夫をはげました。
"簡単な"この表現が医師を苛立だせたのだろうか。「手術に100%なんてないです。わかってますか、奥さん。高齢なんだから全身麻酔で何があるか分からないし。その覚悟あるんですか。手術したって良くなるとは限らないし、手術したことで悪化することだってあるんですよ。今だって歩けているじゃないですか、それで充分じゃないの。世の中には車椅子の人もいる。歩いてて転ぶのが不安なら車椅子にすればいい。介護が大変なら、もう、施設を考える時期なだけじゃないんですか。どうしますか。きいてます?奥さん」
車椅子?
歩ける夫に?
施設??
まだ、夫はそんな状態じゃない
「聞いてます?」
「は、はい。」
「適当に返事しないで下さい。ちゃんと理解して返事してます?リスクもあるんですよ。わかってて言ってます?この前も、簡単に手術をって言った人がいて、やったんですけど、イレギュラーなことがあって、まぁ、命には別条なかったんですけど。奥さん、手術に大分、前のめりだけどその辺のリスクわかってて言ってます?」
大変な事?
安全な手術じゃないの?
やらないリスクの方が大きいと思ってた。
雪井先生が何か言ってる。娘が何か言ってる。
頭が真っ白になった。
急に「トイレ」そう言って雪井先生は診察室を出ていった。
看護師さんが、
「突然、色々言われて、パニックですよね。私の親もそうで、手術をしました。うちの場合は、手術して良かったですよ」
良かった?
親御さんは何歳ぐらい位なのだろう?
質問しようとすると、雪井先生が戻ってきた。
ドサリ
そんな効果音が聞こえそうな座り方で、あしを投げ出していた。鼻をほじっても違和感がないような体制で。
「で?どうします?」
「…手術、します。」
「わかりました。高齢なので、全身麻酔によるリスクがあります。前の手術で入っている管、これが癒着しているかもしれません。基本的にはそのままですが、場合によっては抜きます。その際、神経を傷つける可能性があります。脳はいじらない予定ですが、管を通すので、接触する可能性があります。また、各症状ですが、良くなる場合とならない場合があります。こればっかりは、やってみなきゃ分からない。このあと、看護師から、手術の同意書にサインしてもらいます。じゃ」
……
…………
看護婦さんが、流れを説明してくれた
入院初日は、入院棟入り口で夫と別れ、その後、病棟への立ち入りや面会は一切なし、手術に立ち会うこともなし。入院中、ふらふら出歩くようなら、危険なのでベッドに拘束することもある。
そして、その後はリハビリ専門病院に転院して、そこも恐らく三ヵ月、面会は一切ないだろう。
え?
3ヶ月面会なし?
「えっと、リハビリ病院、面会出来るリハビリ病院はないんですか?」
「このご時世ですから、どこも、多分無理かと」
四ヵ月近く家族に会えないままで、自宅に戻ってきた時、果たして認知症の夫の記憶はどうなっているのか?
そして、雪井先生のあの態度…。嫌がらせで、わざと手術を失敗するんじゃないか。
サインしたのは正しかったのだろうか?
甥に相談した。
「そんなに、難しい手術じゃないよ。でも、信頼できない医師に手術をしてもらうのは、全員にとって良くないことだから、やめた方がいい」
「でも、、そしたら、水頭症が進行しちゃう」
「他の病院を探したら?」
「ほかの病院だなんて、どこがあるの…?」
「どこでもやっているよ。市民病院だっていいじゃない」
……今通っている病院だって、国立病院だ。市民病院よりは進んでいるはずで……
「とりあえず、探してみる。あそこでは手術はしない」
青木先生には、手術をしない旨、報告した。
うまく話せる自信はないので、経緯をメモ書きで渡した。
「あ~雪井先生は、この病院一の口の悪さだからなぁ。。。確かにうちでやっている手術は、もっと状態が悪くなって救急車で運ばれてからだからね。ふみさんの状態だと手術を反対するかもなぁ。あと、雪井先生、ちょっと前の手術で患者さんともめたんだよね。それでイラついていたのかもしれない」
……でも、この病院には雪井先生と角井先生しか手術できる人はいないのだ。角井先生は青木先生ともう一人、三人で長くタッグを組んでいる先生だ。
何故、問題がある雪井先生を紹介したのだろう?単純に成功率の問題?
内科のかかりつけ医のところに、薬を取りに行った。
脳外科の話をすると
「あそこ、水頭症の手術の実績あったかなぁ?。それに、今、あそこの脳外の手術の成功率下がっていたような…。そんな中だと、青木先生も角井先生を紹介しずらいよね。。」
え?
それって、成功率低いから、角井先生の負担を減らしたくて雪井先生を紹介した?そりゃ、雪井先生だって、切れたくなるかも。失敗?続きの手術で、あえて親しい角井先生ではなく親しくもない青木先生を指名。しかも、数日前に患者の家族ともめた。
…確かに、怒りたくなるかも。
でも、、、、、、、青木先生と私たちのつながりって何だったのだろう。40年も診てもらっていて、やっと決心した手術で問題ありの先生を紹介される。
娘には、そりゃぁ、青木先生にとっては何百人といる患者と苦楽を共にした戦友の角井先生、角井先生を取るでしょ、と言われた。でも、40年だ。40年。こんなに長く通っている患者は数人だろう。
『でも、チームを組んでた角井先生にはかなわないよ。大体、医者なんて人体を切ったり貼ったりするんだから、まともな感情があったらなれないよ。どこか一本通所の人と違うから続けられるんだよ。それに、、、ネットには簡単な手術ってなっていたけれど、、あっちの病院では成功率低いんでしょ。そりゃ、当然じゃない?癌だってステージ1で手術するのと5になってから手術するんじゃ成功率は違うでしょ。あそこの病院は、救急車で運ばれてからの手術が多いって言ってたわけだし。実績の少ないところで手術を受けなくて済んだんだからショック受ける必要ない。』
娘がいう。いや、甥っ子も医者ですけど!?
でも
夫は、さらに悪化していく。
歩いているのを見ているだけで不安になっていく
いつ転倒して、歩けなくなってもおかしくない。
迷う日々が続いた。
通える範囲で、いい病院?信頼できる医者?面会できる病院?どこにあるのか?
水頭症について詳しく載せてくれてた病院は四国だと娘はいう。
八方ふさがりだ
そして、甥から連絡があった
「中央病院の佐々木先生の所に行ってみたら、信頼できる先生だから」と。
「あ~はいはい、こんな感じね。う~ん、手術しても、効果無いかもしれないけれど、まあ、やってみて損は無いかもね」
水を抜く管は頭から通すという。
「あのっネットに載っていたのは腰からってなっていたんですけどっ」
娘が、私の疑問を伝えてくれた。
「腰、あ~腰ね。その手もあるか。う~ん。でも、腰からだと、効果ある場合と、そうでない場合があるんですよね。特にご主人の場合、え~と、何年前に手術したんだっけ?まぁ、その時いれた管が途中で詰まっている可能性もあるんで、腰に入れても効果無いかもしれないんで、頭から新しい管を通すほうが良いです。頭といっても、ご主人の場合、前の手術で既に頭蓋骨に穴開いてるんで、そこを再利用するから、そんなに大掛かりにはなりませんよ。」
手術をする、という事で、地方で脳外科医をしている甥が顔を出しにきた。
何かが引っかかっていたのか、娘が甥に、管を頭から通す件を報告する。
「う~ん。僕なら、腰からやるけど」
「なんか、雪井先生曰く、父上は、だいぶ前に手術しているから、腰からだと効果ないって。腰からの人は、初回手術の人とかに勧めるって。」
「ふ~ん.まあ、僕はレントゲンとか見てないから分からないけど、主治医がそういうなら、そうかもね」
「………ねぇ、今度、一緒に来てもらえないかな?」
ふいに、ご近所さんに言われた言葉を思い出して言った。
『やっぱり、親類に医者がいると、対応が違うのよ。入院中、何度も様子見に来てくれるし』
雪井先生の場合、その方がいいような気がした。
「急には無理だよ。あけれて、一日かな。説明の日に行くよ」
………心配だった。一日だったら、手術日の方がいい。同業者がいたほうが、手術に身が入るだろう。
二週間後、手術の説明を受けに行った
「で、やりますか?やめますか?」
スタートがそれだった。私達は、手術の説明を
受けにきたのだが、手術をするしないを決めてからの説明なのだろうか?
「やります」
「では、手術日は●月●日で。コ●ナ渦なので、手術に立ち会い禁止、ご家族は自宅待機で何かあったり、手術が終わったりしたら病院から電話で知らせます。手術後2週間ほどはこちらの病院、その後はリハビリ専門病院に転院して、そこで三ヵ月ってとこかな。入院中の面会はありません。それとご主人は認知症が進んでいるので、拘束の期間が長くなるかもしれません。で手術中のリスクですが……」
立て板に水、とはこのことだろう。こんな勢いで言われても認知症の夫には理解できない。不安そうな顔をした。
娘がそれをみて、
「大丈夫だから、リスクないから、脳をいじったりしないから。簡単な手術だから」
夫をはげました。
"簡単な"この表現が医師を苛立だせたのだろうか。「手術に100%なんてないです。わかってますか、奥さん。高齢なんだから全身麻酔で何があるか分からないし。その覚悟あるんですか。手術したって良くなるとは限らないし、手術したことで悪化することだってあるんですよ。今だって歩けているじゃないですか、それで充分じゃないの。世の中には車椅子の人もいる。歩いてて転ぶのが不安なら車椅子にすればいい。介護が大変なら、もう、施設を考える時期なだけじゃないんですか。どうしますか。きいてます?奥さん」
車椅子?
歩ける夫に?
施設??
まだ、夫はそんな状態じゃない
「聞いてます?」
「は、はい。」
「適当に返事しないで下さい。ちゃんと理解して返事してます?リスクもあるんですよ。わかってて言ってます?この前も、簡単に手術をって言った人がいて、やったんですけど、イレギュラーなことがあって、まぁ、命には別条なかったんですけど。奥さん、手術に大分、前のめりだけどその辺のリスクわかってて言ってます?」
大変な事?
安全な手術じゃないの?
やらないリスクの方が大きいと思ってた。
雪井先生が何か言ってる。娘が何か言ってる。
頭が真っ白になった。
急に「トイレ」そう言って雪井先生は診察室を出ていった。
看護師さんが、
「突然、色々言われて、パニックですよね。私の親もそうで、手術をしました。うちの場合は、手術して良かったですよ」
良かった?
親御さんは何歳ぐらい位なのだろう?
質問しようとすると、雪井先生が戻ってきた。
ドサリ
そんな効果音が聞こえそうな座り方で、あしを投げ出していた。鼻をほじっても違和感がないような体制で。
「で?どうします?」
「…手術、します。」
「わかりました。高齢なので、全身麻酔によるリスクがあります。前の手術で入っている管、これが癒着しているかもしれません。基本的にはそのままですが、場合によっては抜きます。その際、神経を傷つける可能性があります。脳はいじらない予定ですが、管を通すので、接触する可能性があります。また、各症状ですが、良くなる場合とならない場合があります。こればっかりは、やってみなきゃ分からない。このあと、看護師から、手術の同意書にサインしてもらいます。じゃ」
……
…………
看護婦さんが、流れを説明してくれた
入院初日は、入院棟入り口で夫と別れ、その後、病棟への立ち入りや面会は一切なし、手術に立ち会うこともなし。入院中、ふらふら出歩くようなら、危険なのでベッドに拘束することもある。
そして、その後はリハビリ専門病院に転院して、そこも恐らく三ヵ月、面会は一切ないだろう。
え?
3ヶ月面会なし?
「えっと、リハビリ病院、面会出来るリハビリ病院はないんですか?」
「このご時世ですから、どこも、多分無理かと」
四ヵ月近く家族に会えないままで、自宅に戻ってきた時、果たして認知症の夫の記憶はどうなっているのか?
そして、雪井先生のあの態度…。嫌がらせで、わざと手術を失敗するんじゃないか。
サインしたのは正しかったのだろうか?
甥に相談した。
「そんなに、難しい手術じゃないよ。でも、信頼できない医師に手術をしてもらうのは、全員にとって良くないことだから、やめた方がいい」
「でも、、そしたら、水頭症が進行しちゃう」
「他の病院を探したら?」
「ほかの病院だなんて、どこがあるの…?」
「どこでもやっているよ。市民病院だっていいじゃない」
……今通っている病院だって、国立病院だ。市民病院よりは進んでいるはずで……
「とりあえず、探してみる。あそこでは手術はしない」
青木先生には、手術をしない旨、報告した。
うまく話せる自信はないので、経緯をメモ書きで渡した。
「あ~雪井先生は、この病院一の口の悪さだからなぁ。。。確かにうちでやっている手術は、もっと状態が悪くなって救急車で運ばれてからだからね。ふみさんの状態だと手術を反対するかもなぁ。あと、雪井先生、ちょっと前の手術で患者さんともめたんだよね。それでイラついていたのかもしれない」
……でも、この病院には雪井先生と角井先生しか手術できる人はいないのだ。角井先生は青木先生ともう一人、三人で長くタッグを組んでいる先生だ。
何故、問題がある雪井先生を紹介したのだろう?単純に成功率の問題?
内科のかかりつけ医のところに、薬を取りに行った。
脳外科の話をすると
「あそこ、水頭症の手術の実績あったかなぁ?。それに、今、あそこの脳外の手術の成功率下がっていたような…。そんな中だと、青木先生も角井先生を紹介しずらいよね。。」
え?
それって、成功率低いから、角井先生の負担を減らしたくて雪井先生を紹介した?そりゃ、雪井先生だって、切れたくなるかも。失敗?続きの手術で、あえて親しい角井先生ではなく親しくもない青木先生を指名。しかも、数日前に患者の家族ともめた。
…確かに、怒りたくなるかも。
でも、、、、、、、青木先生と私たちのつながりって何だったのだろう。40年も診てもらっていて、やっと決心した手術で問題ありの先生を紹介される。
娘には、そりゃぁ、青木先生にとっては何百人といる患者と苦楽を共にした戦友の角井先生、角井先生を取るでしょ、と言われた。でも、40年だ。40年。こんなに長く通っている患者は数人だろう。
『でも、チームを組んでた角井先生にはかなわないよ。大体、医者なんて人体を切ったり貼ったりするんだから、まともな感情があったらなれないよ。どこか一本通所の人と違うから続けられるんだよ。それに、、、ネットには簡単な手術ってなっていたけれど、、あっちの病院では成功率低いんでしょ。そりゃ、当然じゃない?癌だってステージ1で手術するのと5になってから手術するんじゃ成功率は違うでしょ。あそこの病院は、救急車で運ばれてからの手術が多いって言ってたわけだし。実績の少ないところで手術を受けなくて済んだんだからショック受ける必要ない。』
娘がいう。いや、甥っ子も医者ですけど!?
でも
夫は、さらに悪化していく。
歩いているのを見ているだけで不安になっていく
いつ転倒して、歩けなくなってもおかしくない。
迷う日々が続いた。
通える範囲で、いい病院?信頼できる医者?面会できる病院?どこにあるのか?
水頭症について詳しく載せてくれてた病院は四国だと娘はいう。
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