努力に勝るαなし

認認家族

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番外篇ー

英樹の後悔ー前編

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初恋というものは厄介だな

高2の冬、一年振りにあった友人……とも違うか、同じように世界を見るαが言った。
彼は俺と同じレベルの最高位αだ。どちらが上かは……確証もいだけない誤差範囲で俺だろう。
どちらにしろ、やれば出来てしまう事の方が多くてこの世に愉しみというものすらない。
この男との争いならば勝敗不明ではあるが、それを愉しめるかというと不明だ。面倒という感情が先にくる。
二人とも世界に飽いていた。

だが、この男は変わった。運命に出会い、生きるようになった
俺は少し羨ましく思った。
この男の変化は周囲にとって良い変化ではなかったが、それでも男には今までにない覇気があった。

「粛清をかけたらしいな」
けっこうな人数が収容所に送られたと聞いている。少しでも番を傷つけた者、番と寝た者たちを送られた。
人体実験し放題で、所員たちはホクホクしているだろう。
正直、過去の掘り返すのはどうかとも思う。綾小路自身、どれだけのΩと寝たか数え切れないほどだろうに。

「ああ。だが、最も送り出したい者を始末できてない」

「理由を聞いても?」

この男が望んでも出来ない事があるとは思ってもいなかった。

「…………αのカンだ。アレを収容所送りにすれば、俺は虎の尾を踏む」



公にはなっていないが、上位のαΩをレイプしたものは、被害者やその親族(主に番)が望めば人体実験や性接待を行っている収容所に送る事が出来る。
綾小路はこの制度を乱用して粛清を行っている。
ただ、この制度には救済処置がある。罪人の番が被害者より高い場合、収容所送りを中止出来るのだ。これは昔、収容所送りされた罪人Ωが、偶々冷やかしに来た上位αの運命であったことで、収容所が粛正された事に所以する。
猶予期間は10日。加害者が原告より上位のものと番えば、下位の申し出は却下される。この為、加害者は死にものぐるいで上位の者と番契約を結ぼうとする。
だが……送致されたのはαやβと聞く。
綾小路が気圧されるような上位のΩなどいるのだろうか

「首実検では、何もなかったのだろう。なら実行すれば良い」

「…………良いのか?」

虎を俺と踏んでいるのか。だが、俺は綾小路の、というより上位αのツガイになりそうなΩに手を出そうとする愚かなαなどは部下にする気はない。
虎は俺ではないのだろう。

10日間の猶予期間中、ある程度の高位のαΩには連絡が入る。いわゆる、首実検だ。気になる者がいるならば、その時に動く。動かなかったのであれば、その後に騒ぎたてる権利はないとされている。……後から判明して騒動になるケースもあるが、収容所を守る上位種が徒党を組むので、昔のような粛清などはおきていない。
まぁ、綾小路よりも上位という稀なる者が抗議した場合は、徒党を組んだ所で無駄であろうが。風の前の塵だ。

「ソイツはβ男なんだ。だから首実検はできない。」

「よけいに必要ないだろ。送致しろよ」

βとは。番になる可能性などないではないか。何も畏れることは無かろう。

「…………九条は秋葉という名に心当たりはないか?」

「ないな。俺ではない。」
秋葉というモノはいくつか思い当るが俺にとって価値があるものではない。どう転ぼうと俺に関係はない

「そうか……。秋葉の経歴を洗ったのだが、それなりに上位のαと関わりがあったものの、俺より下位だったのだが。まぁ……αの直感は無視して良いものではない。癪ではあるが、放置するしかないだろうな。ま、収容所に送ったのが俺の番にバレたらそれはそれで大事になるし、…………虎に恩も売っておきたいからな」
俺を見ながらニヤリと笑った。俺はβ男など興味はないと言っているのに。














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