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九条の運命16-智則
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狼に見つかった。
森の中だ。
目が合う。金色の瞳がこちらの隙をうかがっている。
身を翻しては駄目だ。獣は動きに敏感だ。
視線を合わせたまま、ジリジリと後退って距離をとって、逃げれる間合いを確保してから走り出すべきだ。
そうでないと、また……また?、なんだっけ?
少しづつ後ずさるしかない
狼もまた、じりじりと近づいてくる。
背中が木にぶつかった。
少しずれようにも、木は連なっていて横移動程度しか出来ない。
狼はその間にも間合いを詰めてくる。
横に横にズレていったのに、木はいつの間にか横にもあった。もう、一歩も動けない。
智則がこれ以上逃げれない事を察して、狼の飢餓感は少しだけ薄まったようだ。
あともう、50cmの距離だ。
狼は社会性を持つ動物だ。
このまま食べられるよりは…………もしかしたら。
恐る恐る手を差し出すとペロリと舐められた。害意は感じられない。
安堵の余り腰が抜けた。獲物が動けないことに機嫌を良くした狼がペロペロと智則の顔を舐めてきた。くつぐったくて笑ってしまった。次の瞬間、狼と思っていたソレが犬だった事に気がついた。それとも途中で変わったのか。見事な見事なアフガンハウンドだった。
「……九条?」
「うん。なぁに智則?」
九条の声で目が覚めた。夢か。九条の部屋のベットの上だった。
九条に腕枕されている。
……なぜ、真っ裸…
腕の中から抜け出そうとすると、後ろから強く抱きしめられた。
………
項に鼻先をうずめてスンスンされる。
「ああ、夢みたいだ。智則を抱きしめて眠れたなんて」
……
ラット、終わったんだよな?
なぜに、硬いソレが当たっているのか。あんだけヤっても空にならないのか?
「だって、智則が腕の中にいるんだよ。こうなるでしょ」
読心術か。
「ううん。体をこわばらせたからそうかなぁ…、なんて。」
何もいってないぞ、完全に読心術じゃないか。
そのまま躰をなぞられる。
ゾワリとして声が漏れそうになり…むせた。
「あぁ、喉乾いたよね。」
ミネラルウォーターを取りにいった。真っ裸でもここまで見事な筋肉と堂々としたその佇まいとで感嘆しかない。
ノックが響いて達也が入ってきてた。九条がガウンを羽織る。
達也が眩しい物を見るように目を眇めた。そして……
「おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
…………誕生日か何かか?
そして朝食を貰う。ソファの上で九条に横抱きにされて、レンゲを差し出されてあ~んとされる。脚に九条の剛直が…
「おい、当たっている」
「うん。大丈夫。当てているの」
何がどう大丈夫なのか。けれど、追求してもろくな事にならないだろう。横抱きにされるのも、当てられているのも気にしたら負けだ
「そういえば、九条、今日誕生日かなんかなのか?」
「え?ちがうよ?」
「いや、達也がさっきおめでとうございますって……」
「え?ああ。今日は智則を番……じゃなくて伴侶になれた日だから。結婚記念」
「……は?」
結婚を了承した記憶なんてない。
「え?だって智則、僕の執着理解したよね。で、僕から逃げられない事も理解したよね」
そこはまぁ、理解した。運命ですら相手にせず智則だけを欲していた。それがどうして結婚と言うことになるんだ。
「他に惚れたら相手も智則もどうなるか分かっているでしょ。惚れられるのもダメだけど、こればっかりはねぇ?智則いい男だから、不可抗力だよね。……高校時代、モテてたよね。あ、ちなみに智則とヤッた女、僕と出会う前だったからなんとか許してあげているけど、再会して迫ってきたりしたら、即処分するからね。」
「……」
処分…。強い響き。コイツは実行するだろう
「実際問題、僕が智則を得たって、誰が見てもわかるし、九条で最上位αの僕から奪う気概のあるαはいない。ただ、βは違う。僕を知らない。君はいい男だ。僕は智則が揺れない事はわかっている。けれど、それでも、智則が他の人間に迫られるのは嫌なんだ。色目を使ったやつを片っ端から始末してもいいんだけど?」
智則は嫌でしょう?
小首をかしげてきいてくる。文面さえ聞いてなければ小型犬がご機嫌伺いをしているようにしか見えない。
「だから、結婚しよう?どっかのマッドサイエンティストが数年前にαとβの同性婚を国に認めさせたし?智則が結婚してなければ、確実に迫ってくる。結婚してても迫る馬鹿はいるだろうけど。でも、そこまでの馬鹿なら処分しても何ら問題ないからね。始末する量は少ない方が智則もいいでしょ?」
ぞくりとした。殺略者とこうも穏やかな顔をしているものなのか。人を人数ではなく量とカウント出来てしまうものなのか。
「お、お前には倫理観とかないのか?」
「あはは。αにそれを期待しても無駄ってまだわからない?上位になるほど、番のためならなんだってやるよ。……執着まだ、理解できない?足りなかった?」
「う……」
声を低めて耳元でささやかれた。熱い吐息。指がガウンの中に入ってきて、尻の狭間をたどる。
「メ、飯食いたい!腹が減ってんだよ!」
九条を押しのけて、中華粥を自分で食べ始める。残念…つぶやきが耳をかすめたが無視した。食べながら考える。結婚、九条は本気だろう。
断る術はあるのだろうか……
森の中だ。
目が合う。金色の瞳がこちらの隙をうかがっている。
身を翻しては駄目だ。獣は動きに敏感だ。
視線を合わせたまま、ジリジリと後退って距離をとって、逃げれる間合いを確保してから走り出すべきだ。
そうでないと、また……また?、なんだっけ?
少しづつ後ずさるしかない
狼もまた、じりじりと近づいてくる。
背中が木にぶつかった。
少しずれようにも、木は連なっていて横移動程度しか出来ない。
狼はその間にも間合いを詰めてくる。
横に横にズレていったのに、木はいつの間にか横にもあった。もう、一歩も動けない。
智則がこれ以上逃げれない事を察して、狼の飢餓感は少しだけ薄まったようだ。
あともう、50cmの距離だ。
狼は社会性を持つ動物だ。
このまま食べられるよりは…………もしかしたら。
恐る恐る手を差し出すとペロリと舐められた。害意は感じられない。
安堵の余り腰が抜けた。獲物が動けないことに機嫌を良くした狼がペロペロと智則の顔を舐めてきた。くつぐったくて笑ってしまった。次の瞬間、狼と思っていたソレが犬だった事に気がついた。それとも途中で変わったのか。見事な見事なアフガンハウンドだった。
「……九条?」
「うん。なぁに智則?」
九条の声で目が覚めた。夢か。九条の部屋のベットの上だった。
九条に腕枕されている。
……なぜ、真っ裸…
腕の中から抜け出そうとすると、後ろから強く抱きしめられた。
………
項に鼻先をうずめてスンスンされる。
「ああ、夢みたいだ。智則を抱きしめて眠れたなんて」
……
ラット、終わったんだよな?
なぜに、硬いソレが当たっているのか。あんだけヤっても空にならないのか?
「だって、智則が腕の中にいるんだよ。こうなるでしょ」
読心術か。
「ううん。体をこわばらせたからそうかなぁ…、なんて。」
何もいってないぞ、完全に読心術じゃないか。
そのまま躰をなぞられる。
ゾワリとして声が漏れそうになり…むせた。
「あぁ、喉乾いたよね。」
ミネラルウォーターを取りにいった。真っ裸でもここまで見事な筋肉と堂々としたその佇まいとで感嘆しかない。
ノックが響いて達也が入ってきてた。九条がガウンを羽織る。
達也が眩しい物を見るように目を眇めた。そして……
「おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
…………誕生日か何かか?
そして朝食を貰う。ソファの上で九条に横抱きにされて、レンゲを差し出されてあ~んとされる。脚に九条の剛直が…
「おい、当たっている」
「うん。大丈夫。当てているの」
何がどう大丈夫なのか。けれど、追求してもろくな事にならないだろう。横抱きにされるのも、当てられているのも気にしたら負けだ
「そういえば、九条、今日誕生日かなんかなのか?」
「え?ちがうよ?」
「いや、達也がさっきおめでとうございますって……」
「え?ああ。今日は智則を番……じゃなくて伴侶になれた日だから。結婚記念」
「……は?」
結婚を了承した記憶なんてない。
「え?だって智則、僕の執着理解したよね。で、僕から逃げられない事も理解したよね」
そこはまぁ、理解した。運命ですら相手にせず智則だけを欲していた。それがどうして結婚と言うことになるんだ。
「他に惚れたら相手も智則もどうなるか分かっているでしょ。惚れられるのもダメだけど、こればっかりはねぇ?智則いい男だから、不可抗力だよね。……高校時代、モテてたよね。あ、ちなみに智則とヤッた女、僕と出会う前だったからなんとか許してあげているけど、再会して迫ってきたりしたら、即処分するからね。」
「……」
処分…。強い響き。コイツは実行するだろう
「実際問題、僕が智則を得たって、誰が見てもわかるし、九条で最上位αの僕から奪う気概のあるαはいない。ただ、βは違う。僕を知らない。君はいい男だ。僕は智則が揺れない事はわかっている。けれど、それでも、智則が他の人間に迫られるのは嫌なんだ。色目を使ったやつを片っ端から始末してもいいんだけど?」
智則は嫌でしょう?
小首をかしげてきいてくる。文面さえ聞いてなければ小型犬がご機嫌伺いをしているようにしか見えない。
「だから、結婚しよう?どっかのマッドサイエンティストが数年前にαとβの同性婚を国に認めさせたし?智則が結婚してなければ、確実に迫ってくる。結婚してても迫る馬鹿はいるだろうけど。でも、そこまでの馬鹿なら処分しても何ら問題ないからね。始末する量は少ない方が智則もいいでしょ?」
ぞくりとした。殺略者とこうも穏やかな顔をしているものなのか。人を人数ではなく量とカウント出来てしまうものなのか。
「お、お前には倫理観とかないのか?」
「あはは。αにそれを期待しても無駄ってまだわからない?上位になるほど、番のためならなんだってやるよ。……執着まだ、理解できない?足りなかった?」
「う……」
声を低めて耳元でささやかれた。熱い吐息。指がガウンの中に入ってきて、尻の狭間をたどる。
「メ、飯食いたい!腹が減ってんだよ!」
九条を押しのけて、中華粥を自分で食べ始める。残念…つぶやきが耳をかすめたが無視した。食べながら考える。結婚、九条は本気だろう。
断る術はあるのだろうか……
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