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九条の運命12-智則
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森の中を逃げている。
狼が追ってくる。
距離はあるはずなのに、耳元で狼の荒い息遣いがきこえる。
喰われる恐怖に足がもつれる。
駄目だ。転んだら、立ち止まったら頭からバリバリと喰われる。
必死に逃げるが、後ろから飛び掛かられた。
丸呑みされると思った。けれど狼は涎をたれ流しながら、嬲るように噛みつくだけだ。生き餌を愉しんでいる。
手足を噛みちぎり咀嚼してくる。胴体から流れる血を啜られる。一滴も逃さずになめ取られる。
手足も胴体もほぼ無くなっているのにまだ生かされている。
狼がギラギラとした金色の瞳でこちらを睨んでくる。智則が死んでも、そう、骨になっても骨の髄までしゃぶり尽くす。目がそういっている。
狼が口を大きく開けた。血塗れの犬歯はっきりと見えた。
頸を噛み砕かれて絶叫した。
絶叫で、目が冷めた。慌てて周囲を見わすと森の中ではなかった。ベッドにいた。ぶるりと震えた。あの狼は……。
九条は智則が逃げれば文字通り手足を奪う。限界まで生かして、最後の最後、智則が息絶える直前で、九条が智則を殺す。自然に息絶えることすら許しはしない。
落ち着け。
深呼吸をした。
とりあえず、ホテルは移動していないようだ
達也が水を渡してくれた。
「……九条たちは…」
「Ωには、恋人を呼びました。今頃番って落ち着いているでしょう」
「恋人がいたのか!?」
「ええ。ただ、英樹様が運命と判明して父親には反対されていたので駆け落ちする算段だったようですよ。」
………………
運命よりも恋人をとろうとしたΩになんて事をしてしまったのか。
それでも、九条を前にすれば手を伸ばしてしまう。何も知らず智則はその苦しみを与えてしまった。助けてと何度も呟いていた。あれば九条が欲しいと言う意味ではなかったのかもしれない。心と体で苦しみ続けた。
智則の行いは知らなかったの一言では許されない。
「…………九条は」
「まだ、ラットですよ」
「えっ」
「αのラットは誰かの胎内に出さない限り一週間程度はおさまりません。」
九条はあの状態をずっと続けている?
「……あちらにいますよ。」
達也がドアを指さす。
………確認したくない。けれど、自分の罪から目を逸らすわけにはいかない。
覚悟を決めてドアへと踏み出した。
ドアを開けると、アレの匂いが充満していた。
九条は、頬がこけて眼だけがぎらぎらしたまま己を扱いていた。ジャンキーの末期の様相だ
「っ!達也!なんで、商売女を呼ばない!?ヤれば収まるんだろう!?」
振り返って怒鳴ると、しれっと言われた
「英樹様はそれを望んでないので」
……九条……
少なくとも、こんな状態になっていい奴ではない。
まっすぐに立って自信たっぷりにしているヤツ
頭脳明晰で話術が巧なヤツで
時折,池に落ちたアフガンハウンドみたいになるけれどやっぱり高貴な佇まいは健在で。
そんな奴が
喉奥でうなり声をあげ、まるでジャンキーのようになっている。
思わず九条を抱きしめた。
自分が何をしてしまったのか、思い知らされる。
智則に抱きしめられながらも、九条はひたすら己を扱いていた。
……
達也はプロを呼ばないだろう。呼んだところで九条が拒否する。抱いてラットを収めるつもりがあったのなら、早々に運命を抱いていたはずだ。
背中をなでながら、贖罪方法を考える。これしかないのだ。それだけのことを自分はしたのだ。
智則がボトムスを脱ぐと、九条が嗤った。
「智則はまた、僕に与えてくれるわけ。そしてまた、躾けるの?」
正気に返った九条が問う。多分またすぐ会話も成立しなくなるだろう。だから、問いかけには答えなかった。答えないままに、九条の上にまたがった。
「………」
狼が追ってくる。
距離はあるはずなのに、耳元で狼の荒い息遣いがきこえる。
喰われる恐怖に足がもつれる。
駄目だ。転んだら、立ち止まったら頭からバリバリと喰われる。
必死に逃げるが、後ろから飛び掛かられた。
丸呑みされると思った。けれど狼は涎をたれ流しながら、嬲るように噛みつくだけだ。生き餌を愉しんでいる。
手足を噛みちぎり咀嚼してくる。胴体から流れる血を啜られる。一滴も逃さずになめ取られる。
手足も胴体もほぼ無くなっているのにまだ生かされている。
狼がギラギラとした金色の瞳でこちらを睨んでくる。智則が死んでも、そう、骨になっても骨の髄までしゃぶり尽くす。目がそういっている。
狼が口を大きく開けた。血塗れの犬歯はっきりと見えた。
頸を噛み砕かれて絶叫した。
絶叫で、目が冷めた。慌てて周囲を見わすと森の中ではなかった。ベッドにいた。ぶるりと震えた。あの狼は……。
九条は智則が逃げれば文字通り手足を奪う。限界まで生かして、最後の最後、智則が息絶える直前で、九条が智則を殺す。自然に息絶えることすら許しはしない。
落ち着け。
深呼吸をした。
とりあえず、ホテルは移動していないようだ
達也が水を渡してくれた。
「……九条たちは…」
「Ωには、恋人を呼びました。今頃番って落ち着いているでしょう」
「恋人がいたのか!?」
「ええ。ただ、英樹様が運命と判明して父親には反対されていたので駆け落ちする算段だったようですよ。」
………………
運命よりも恋人をとろうとしたΩになんて事をしてしまったのか。
それでも、九条を前にすれば手を伸ばしてしまう。何も知らず智則はその苦しみを与えてしまった。助けてと何度も呟いていた。あれば九条が欲しいと言う意味ではなかったのかもしれない。心と体で苦しみ続けた。
智則の行いは知らなかったの一言では許されない。
「…………九条は」
「まだ、ラットですよ」
「えっ」
「αのラットは誰かの胎内に出さない限り一週間程度はおさまりません。」
九条はあの状態をずっと続けている?
「……あちらにいますよ。」
達也がドアを指さす。
………確認したくない。けれど、自分の罪から目を逸らすわけにはいかない。
覚悟を決めてドアへと踏み出した。
ドアを開けると、アレの匂いが充満していた。
九条は、頬がこけて眼だけがぎらぎらしたまま己を扱いていた。ジャンキーの末期の様相だ
「っ!達也!なんで、商売女を呼ばない!?ヤれば収まるんだろう!?」
振り返って怒鳴ると、しれっと言われた
「英樹様はそれを望んでないので」
……九条……
少なくとも、こんな状態になっていい奴ではない。
まっすぐに立って自信たっぷりにしているヤツ
頭脳明晰で話術が巧なヤツで
時折,池に落ちたアフガンハウンドみたいになるけれどやっぱり高貴な佇まいは健在で。
そんな奴が
喉奥でうなり声をあげ、まるでジャンキーのようになっている。
思わず九条を抱きしめた。
自分が何をしてしまったのか、思い知らされる。
智則に抱きしめられながらも、九条はひたすら己を扱いていた。
……
達也はプロを呼ばないだろう。呼んだところで九条が拒否する。抱いてラットを収めるつもりがあったのなら、早々に運命を抱いていたはずだ。
背中をなでながら、贖罪方法を考える。これしかないのだ。それだけのことを自分はしたのだ。
智則がボトムスを脱ぐと、九条が嗤った。
「智則はまた、僕に与えてくれるわけ。そしてまた、躾けるの?」
正気に返った九条が問う。多分またすぐ会話も成立しなくなるだろう。だから、問いかけには答えなかった。答えないままに、九条の上にまたがった。
「………」
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