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ハグの約束ー智則
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『夢の中でも、俺以外を求めるな』
夢なんて、意識して見れるものでもないのに、そんな事を言われても。。
しかも、何の夢を見たかなんて覚えていない。
とりあえず、一人で身動きできるようになって、以前の部屋での就寝を許された。そう、許された、である。
部屋は、意外にも前に出ていた時のままだった。どうやってマンションを出たかを調べるために、荒らされたりとかしたとは思っていたのだが、そんなことはなかったようだ。
「この部屋には必要最低限しか入っておりません。またこの部屋に入室したのは私のみで英樹様は入られておりません。智則様との約束を守られておられました」
非難するように達也にそう言われても俺は返答していいかがわからない。
鍵のかかる部屋で寝られるようになって、食事も自分で取れるようになって体力はどんどん回復をしていった。
前回同様寝る時だけを寝室で過ごし、食事などは、リビングでとる。
リビングに500円コインタワーが残っていたのは驚いた。俺が紙幣をこの下に隠していたのは多分ばれているだろうに…………
「なんで……」
「だって、智則とのデート記念だもん」
あの日々をデートと呼ぶのか。
そんな異常思考のやつならば、今のこの俺の軟禁状態を同棲とでも表現していそうだ。
コインタワーを九条が拭いている。ホコリ一つついていないのは、俺が去ったあともコイツがそうしていたからだろう。
九条はひどくアンバランスだ
脅しておいて、そのくせ、俺を大切に扱う。
俺を不快にさせないように、俺を楽しませるのに、俺を甘やかすのに、けれど人質を取ってここに拘束をしたのだ。
「もう一人でも生活できるくらいには回復した。俺をここから出してほしい」
「嫌だ、と言いたいけれど約束だからいいよ」
意外とすんなり通った。
「英樹様」
達也が咎めるように言う。
「分かっている。俺もまたあの状態に戻るつもりはない」
あの状態?
「だから、条件がある」
やはり、そう簡単にはいかないか。。
「他のαがよってこないように毎週マーキングをさせてもらう。石鹸は僕が渡した物を使ってね」
「…………捨てた」
九条の眉が、ピンと跳ねる。
「じゃ、再度贈るよ。使ってね。使わないなら毎朝マーキングする。」
…………予想はしていたが、やはりあの石鹸は特殊な石鹸で、九条のマーキングを消さない物だった。そして、ソレは随分前に渡された。つまり、その後はずっと……ヤられてたってことか。
「マーキングは嫌だ」
「我が儘言わないの。」
「誰ともセックスしない。だから、勘弁してくれないか…………」
「駄目。マーキングしないと僕が壊れる。αはマーキングしてない番を巣から出すとと精神的に不安定になるの。」
「俺も精神が壊れる。ああ。そうか、壊れた俺でもいいんだっけ。」
嗤える。
九条の顔が悲しそうに歪んだ。
「…………壊れた君でも僕は愛せるよ。僕の執着は君が脳死しようと続く、それをつい先日体感した」
……苦笑いされても。そんなことを言われても、俺にこの先がない事しか伝わらない。
「けれど同時に、君が楽しいと思っている時のキラキラした瞳や声を渇望した。だから、壊れてほしくはないよ。」
毎週レイプされて壊れない訳ないだろう。
睨むと、九条がため息をついた。
「ホントに僕は番の我が儘に弱い。智則、マーキングの方法を選ばせてあげる。セックスなら3週間に一回、キスなら10日に一回、ハグなら毎朝。マーキングの効果期間はそれくらいだから。どれにする?」
マーキング=セックスと思っていたけど違うのか。とはいえ、どれもお断りだ。。
けれど、どれもなしという選択肢は無いのだろう
「ハグで」
九条がふわりと笑った
「ありがとう」
どんな回答をしようと、九条は礼を口にしただろう。
智則が選んでくれた、ということに。
智則が真に望んでいる選択肢を与えていないという事実を無視して。
九条は約束通り、マンションから出させてくれた。
くれた、そう思う時点で自分は大分毒されてる。
夢なんて、意識して見れるものでもないのに、そんな事を言われても。。
しかも、何の夢を見たかなんて覚えていない。
とりあえず、一人で身動きできるようになって、以前の部屋での就寝を許された。そう、許された、である。
部屋は、意外にも前に出ていた時のままだった。どうやってマンションを出たかを調べるために、荒らされたりとかしたとは思っていたのだが、そんなことはなかったようだ。
「この部屋には必要最低限しか入っておりません。またこの部屋に入室したのは私のみで英樹様は入られておりません。智則様との約束を守られておられました」
非難するように達也にそう言われても俺は返答していいかがわからない。
鍵のかかる部屋で寝られるようになって、食事も自分で取れるようになって体力はどんどん回復をしていった。
前回同様寝る時だけを寝室で過ごし、食事などは、リビングでとる。
リビングに500円コインタワーが残っていたのは驚いた。俺が紙幣をこの下に隠していたのは多分ばれているだろうに…………
「なんで……」
「だって、智則とのデート記念だもん」
あの日々をデートと呼ぶのか。
そんな異常思考のやつならば、今のこの俺の軟禁状態を同棲とでも表現していそうだ。
コインタワーを九条が拭いている。ホコリ一つついていないのは、俺が去ったあともコイツがそうしていたからだろう。
九条はひどくアンバランスだ
脅しておいて、そのくせ、俺を大切に扱う。
俺を不快にさせないように、俺を楽しませるのに、俺を甘やかすのに、けれど人質を取ってここに拘束をしたのだ。
「もう一人でも生活できるくらいには回復した。俺をここから出してほしい」
「嫌だ、と言いたいけれど約束だからいいよ」
意外とすんなり通った。
「英樹様」
達也が咎めるように言う。
「分かっている。俺もまたあの状態に戻るつもりはない」
あの状態?
「だから、条件がある」
やはり、そう簡単にはいかないか。。
「他のαがよってこないように毎週マーキングをさせてもらう。石鹸は僕が渡した物を使ってね」
「…………捨てた」
九条の眉が、ピンと跳ねる。
「じゃ、再度贈るよ。使ってね。使わないなら毎朝マーキングする。」
…………予想はしていたが、やはりあの石鹸は特殊な石鹸で、九条のマーキングを消さない物だった。そして、ソレは随分前に渡された。つまり、その後はずっと……ヤられてたってことか。
「マーキングは嫌だ」
「我が儘言わないの。」
「誰ともセックスしない。だから、勘弁してくれないか…………」
「駄目。マーキングしないと僕が壊れる。αはマーキングしてない番を巣から出すとと精神的に不安定になるの。」
「俺も精神が壊れる。ああ。そうか、壊れた俺でもいいんだっけ。」
嗤える。
九条の顔が悲しそうに歪んだ。
「…………壊れた君でも僕は愛せるよ。僕の執着は君が脳死しようと続く、それをつい先日体感した」
……苦笑いされても。そんなことを言われても、俺にこの先がない事しか伝わらない。
「けれど同時に、君が楽しいと思っている時のキラキラした瞳や声を渇望した。だから、壊れてほしくはないよ。」
毎週レイプされて壊れない訳ないだろう。
睨むと、九条がため息をついた。
「ホントに僕は番の我が儘に弱い。智則、マーキングの方法を選ばせてあげる。セックスなら3週間に一回、キスなら10日に一回、ハグなら毎朝。マーキングの効果期間はそれくらいだから。どれにする?」
マーキング=セックスと思っていたけど違うのか。とはいえ、どれもお断りだ。。
けれど、どれもなしという選択肢は無いのだろう
「ハグで」
九条がふわりと笑った
「ありがとう」
どんな回答をしようと、九条は礼を口にしただろう。
智則が選んでくれた、ということに。
智則が真に望んでいる選択肢を与えていないという事実を無視して。
九条は約束通り、マンションから出させてくれた。
くれた、そう思う時点で自分は大分毒されてる。
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