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番が巣から…ー英樹
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時間は少し遡る
智則がマンションから逃げてから、俺はボロボロになった。
智則が自殺を試みるくらいなら少し離れたところから見守ったほうがましだと思ったのだ。自殺に積極的に行動する者の命を守ることは難しいから。僅かな隙で智則は永遠に失われる。
秋葉の家もそれを容認したから、それによる九条家の報復も容認したから、智則をとどめるモノがないのだ。
けれど、けれど、俺のような最上位αにはとってマーキングをしていない番を外に出すということはずっと心臓を針で刺されているのと同じようなものだった。
恋愛は禁止した。けれど、智則は魅力的でα達の心を奪う。強引に出るものが否とは限らない。九条家の長男が秋葉の次男に惚れて、結婚を考えていることは知れ渡っている。けれど、その秋葉の次男が智則だとわかっていないものもいる。無知なそいつらが智則を攫って監禁する可能性だっているのだ。
怖い
なまじ智則との同棲という至福の時を過ごしてしまっただけに、今が地獄のように感じる。
自分が壊れていくのがわかった。それでも智則との約束だから智則に何かをすることはない。
智則が時折夢に出てくる。
その時はとてもとても幸福でずっと目が覚めなければいいと思うのにそれなのに達也が俺を起こす。
また辛い時間がはじまる。
だがある日急に智則が隣に現れた
戻ってきた智則はずっと隣にいてくれる。反抗もせず素直に俺に身を寄せてくれている
俺のベッドで一緒に眠ってくれる。
今までとは違い入浴も一緒にしてくれた。
給餌にも抵抗しない。
ただ食は細くなった。咀嚼が必要な料理は食べない。ポタージュといった流動食なら食べてくれた。肉も摂った方がいいからステーキを細く細く細く切り分けて智則にあげたけれど、智則は食べてくれない。
そのせいで智則は体力がなくなったのか、自ら動くことは全くしなくなった。
移動は全て俺任せだ
声を発することもなくなった。
少しだけ寂しい。
そして智則は大学の授業にも興味を示さなくなった。
大学のというよりもすべてのものへの興味を失ったかのようだった
智則は壊れてしまったのかもしれない
『九条はすげぇな』
講義のディスカッションをした時のこちらを見たキラキラした目、あれが見れないのは少しだけ切ない。
俺の智則への執着も以前ほどではなくなった。でも逃がしてあげれるほどではない。
一度、達也が俺から智則を引き剥がそうとした。俺は激怒した。威圧を奮いまくった。達也はいつでも俺の味方だったのに、こんなことをしでかすなんて。
『申し訳ございません』
達也が涙をにじませながら謝ったから許してやった。
智則が壊れてから、達也の智則に対する態度は変わった。智則を蔑む瞬間がある。マンションへの入室を制限しようかとも思ったが達也以上に智則を任せられるものもいない。
智則がマンションから逃げてから、俺はボロボロになった。
智則が自殺を試みるくらいなら少し離れたところから見守ったほうがましだと思ったのだ。自殺に積極的に行動する者の命を守ることは難しいから。僅かな隙で智則は永遠に失われる。
秋葉の家もそれを容認したから、それによる九条家の報復も容認したから、智則をとどめるモノがないのだ。
けれど、けれど、俺のような最上位αにはとってマーキングをしていない番を外に出すということはずっと心臓を針で刺されているのと同じようなものだった。
恋愛は禁止した。けれど、智則は魅力的でα達の心を奪う。強引に出るものが否とは限らない。九条家の長男が秋葉の次男に惚れて、結婚を考えていることは知れ渡っている。けれど、その秋葉の次男が智則だとわかっていないものもいる。無知なそいつらが智則を攫って監禁する可能性だっているのだ。
怖い
なまじ智則との同棲という至福の時を過ごしてしまっただけに、今が地獄のように感じる。
自分が壊れていくのがわかった。それでも智則との約束だから智則に何かをすることはない。
智則が時折夢に出てくる。
その時はとてもとても幸福でずっと目が覚めなければいいと思うのにそれなのに達也が俺を起こす。
また辛い時間がはじまる。
だがある日急に智則が隣に現れた
戻ってきた智則はずっと隣にいてくれる。反抗もせず素直に俺に身を寄せてくれている
俺のベッドで一緒に眠ってくれる。
今までとは違い入浴も一緒にしてくれた。
給餌にも抵抗しない。
ただ食は細くなった。咀嚼が必要な料理は食べない。ポタージュといった流動食なら食べてくれた。肉も摂った方がいいからステーキを細く細く細く切り分けて智則にあげたけれど、智則は食べてくれない。
そのせいで智則は体力がなくなったのか、自ら動くことは全くしなくなった。
移動は全て俺任せだ
声を発することもなくなった。
少しだけ寂しい。
そして智則は大学の授業にも興味を示さなくなった。
大学のというよりもすべてのものへの興味を失ったかのようだった
智則は壊れてしまったのかもしれない
『九条はすげぇな』
講義のディスカッションをした時のこちらを見たキラキラした目、あれが見れないのは少しだけ切ない。
俺の智則への執着も以前ほどではなくなった。でも逃がしてあげれるほどではない。
一度、達也が俺から智則を引き剥がそうとした。俺は激怒した。威圧を奮いまくった。達也はいつでも俺の味方だったのに、こんなことをしでかすなんて。
『申し訳ございません』
達也が涙をにじませながら謝ったから許してやった。
智則が壊れてから、達也の智則に対する態度は変わった。智則を蔑む瞬間がある。マンションへの入室を制限しようかとも思ったが達也以上に智則を任せられるものもいない。
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