努力に勝るαなし

認認家族

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結局、ほだされた?ー智則

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九条は完全に風景になった。

「秋葉、流石に九条様が気の毒だ…譲歩してくれないか」
殿山に言われた。周囲のα達も頷いてる
コイツラαは頭がわいてるのか?
レイプ被害者が逃げ出して、結果、加害者がレイプ出来なくなって辛そうだから被害者さん加害者を労ってあげて?
まともな思考回路じゃねぇな。

「βには分からないかもしれないけれど、αにとって番を失う事は体が引き裂かれるようなそんな辛さを伴うんだ」

「殿山、まず第一に、俺はβだから番ではない。第二に、監禁されていた俺が辛くなかったと?」

「貴方の辛さなど、英樹様と比較にならない!」
達也が叫ぶ

「貴方は正気だった!英樹様は壊れた!英樹様の方が被害者だ!貴方さえ貴方さえいなければ!」

達也がこちらに向かってくる。達也も痩せ痩けていて瞳だけがギラギラと憎しみをたたえている。心酔する九条のこの状態に一番心を痛めているのだろう。

「英樹さまを弄び翻弄し!貴様ほどの毒婦、生きてる価値すらない!」

直後に強い威圧を感じた。
周囲のα達が倒れ、達也が血を吐いた。

「智則を傷つける者は許さない!」

九条が悪鬼のような顔で、威圧をふるい続ける。
「九条、やめろ!」

達也の言い分には色々言いたい事はある。だが、腹心ともいえる相手になんてことを!

達也が脱力した。意識も無く舌が口から出てる

「九条!俺は無事だ!」

「智則を守る」

駄目だ、言葉が届かない。我を忘れている。他の者達も失神し始める。

「九条!俺は無事だ!」

正面から九条を抱きしめた。

ふっと、威圧が薄くなる。
「とものり、ぶじ?」
「ああ、無事だ無事だ!ぐ……!」
骨が折れる位、きつく抱きしめられた。

「よかったよかった……智則は僕が守るの…」
「わかった、わかったから離れろ!」
「智則は僕が守る……」
抱きしめたまま、離れてくれない。

佐久間が教室に入ってきた。倒れている面々にぎょっとする。
「佐久間、医務室に連絡してくれ」
無言で頷かれた。

………
さて、このひっつき虫、どうすれば離れてくれるのか。
九条は骨が浮く位に痩せていて、強く抱きしめられると、かなり痛い。
衰弱死、か…
達也が追い詰められるのも分かる気はする。自分を心配する達也にまで猛威をふるった九条…。
『上位αはそんなものだよ。一度執着したら、その相手以外どうでもよくなる』

理解出来ない。自分を大事に思ってくれる腹心より拒絶を続ける智則を取る?


この件以降、九条が背景になることはなかった。ただ、背後霊のようにずっとそばにいるようになった。

拒絶しても、一定の距離をあけてついてくる。
智則の行動に口出しすることはない。以前のように、二人で出かけるといった提案も強引さもない。

背後霊、そう思って意識から排除する。

少しずつ、九条の体型は戻ってきた。智則が学食を食べるのにあわせて九条も食べているからだろう。
………
衰弱死はなくなるな。





























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