116 / 178
キャンプの誘いー智則
しおりを挟む
相変わらず、九条は智則後をついてくる
振り切って教室を出ようとして、人にぶつかると、由希だった。
ホッとしてついつい、昔の呼び名が出た。
「由希にぃ!」
「元気そうだな」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。懐かしい。ちょっと笑ってしまう。
「……初めて俺に番がいて良かったと思ったよ」
「??」
「秋葉君、由希先輩ね」
隣にいた岡田に注意される。
「すみません。由希…先輩は何故こちらに
「ああ、今度、ゼミ生が集まってキャンプするんだよ。智則と殿山君を誘いにきた」
「俺は勿論参加で!」
「駄目。智則は不参加」
いつの間にか、また九条が背後霊になっていて、人の予定に口出ししてきた。
「九条、俺はお前とのルールを守ってる。そうである以上、口出しされるいわれはない」
「駄目。危険」
当然ながら無視する。こんな機会はめったにないのだ。集合場所と装備について確認する。
キャンプ当日になった。集合場所に行くと九条がいた。
無視だ、無視。
由希にぃの隣に綺麗なΩがいた。智則を睨んでくる。
普段であれば無視するが、目標とするゼミの人のだ。にっこり笑って挨拶すると、
「唐澤華です。由希の番」
交戦的だな、とは思うが由希にぃの番ならば、失礼のないようにしなければ。
αの体力はすごい。
由希は華さんが疲れてくると、お姫様抱っこをして運んでいく。足場が安定してないのにすごい。
他のメンバーは華さんの同行に体力的な意味で反対したようだが、華さんが「私が一緒でない限り、ゆきは帰らせる。体力の問題なら、ゆきがいるから大丈夫」と主張したらしい。
確かに。先を行くふたりを見つめた。
今は抱き上げられてない。
「気になる?」
珍しく九条が話しかけてきた。
「そうだね。華さん細いし転ばないか心配だ」
「そういう意味じゃないんだけどね。智則らしいといえば智則らしい」
くすりと笑われた。
「なんだそれ。意味わかんねぇし」
軽口が出た。ちょっとだけ懐かしい。九条と二人でトレイルランニングしたな。九条も慣れてきて、険しいコースも行くようになって、帰りに寝こけて……そして車で睡姦されてた。
「智則?」
「なんでもない」
顔を歪めた智則に九条が心配そうにきく。
考えるな、考えたところでなんの意味もないのだ。何故あんな事をしたのか、きいても共感なんて出来ないだろうから。
「智則?」
声が震えてる。九条は智則の機嫌を察知するようになった。そして嫌悪感に怯えるようになった。
「なんでもない」
すがりつくような目でこちらを見ないでほしい。
岩場にやってきた。落石注意の看板が出てる。片側は崖になっていて川が流れている。対岸の緑が綺麗だ。
九条がおくれがちになってきて、由希達と距離があいた。
少し急ぐか。
由希のほうをみると、小石がコロリと落ちてきた。上を見上げると、岩がグラつくのが見えた。
「由希にぃ!」
確証があった訳でもなく走り出して、思いっきり突き飛ばした。
その後はスローモーションのようだった。
岩が自分が谷に落ちて行く。由希にぃは木に守られて落ちずに済んだ。良かった。
「智則!」
九条が智則に飛びついてきた。
なんでお前まで…。
九条はどんな身体能力しているのか、智則を抱きしめて落下する。木に激突しながら、川へと落下する。三日前の雨で川は増水していて流される。
川の中でも岩にぶつかって、九条が時折うめき声を漏らしていた。
なんで……。
流れに逆らわずに少しずつ岸を目ざし、なんとか二人でたどり着いた。九条は、疲れ果てて川岸で体を丸めている。智則の代わりに体をかなり打っているはずだ。
振り切って教室を出ようとして、人にぶつかると、由希だった。
ホッとしてついつい、昔の呼び名が出た。
「由希にぃ!」
「元気そうだな」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。懐かしい。ちょっと笑ってしまう。
「……初めて俺に番がいて良かったと思ったよ」
「??」
「秋葉君、由希先輩ね」
隣にいた岡田に注意される。
「すみません。由希…先輩は何故こちらに
「ああ、今度、ゼミ生が集まってキャンプするんだよ。智則と殿山君を誘いにきた」
「俺は勿論参加で!」
「駄目。智則は不参加」
いつの間にか、また九条が背後霊になっていて、人の予定に口出ししてきた。
「九条、俺はお前とのルールを守ってる。そうである以上、口出しされるいわれはない」
「駄目。危険」
当然ながら無視する。こんな機会はめったにないのだ。集合場所と装備について確認する。
キャンプ当日になった。集合場所に行くと九条がいた。
無視だ、無視。
由希にぃの隣に綺麗なΩがいた。智則を睨んでくる。
普段であれば無視するが、目標とするゼミの人のだ。にっこり笑って挨拶すると、
「唐澤華です。由希の番」
交戦的だな、とは思うが由希にぃの番ならば、失礼のないようにしなければ。
αの体力はすごい。
由希は華さんが疲れてくると、お姫様抱っこをして運んでいく。足場が安定してないのにすごい。
他のメンバーは華さんの同行に体力的な意味で反対したようだが、華さんが「私が一緒でない限り、ゆきは帰らせる。体力の問題なら、ゆきがいるから大丈夫」と主張したらしい。
確かに。先を行くふたりを見つめた。
今は抱き上げられてない。
「気になる?」
珍しく九条が話しかけてきた。
「そうだね。華さん細いし転ばないか心配だ」
「そういう意味じゃないんだけどね。智則らしいといえば智則らしい」
くすりと笑われた。
「なんだそれ。意味わかんねぇし」
軽口が出た。ちょっとだけ懐かしい。九条と二人でトレイルランニングしたな。九条も慣れてきて、険しいコースも行くようになって、帰りに寝こけて……そして車で睡姦されてた。
「智則?」
「なんでもない」
顔を歪めた智則に九条が心配そうにきく。
考えるな、考えたところでなんの意味もないのだ。何故あんな事をしたのか、きいても共感なんて出来ないだろうから。
「智則?」
声が震えてる。九条は智則の機嫌を察知するようになった。そして嫌悪感に怯えるようになった。
「なんでもない」
すがりつくような目でこちらを見ないでほしい。
岩場にやってきた。落石注意の看板が出てる。片側は崖になっていて川が流れている。対岸の緑が綺麗だ。
九条がおくれがちになってきて、由希達と距離があいた。
少し急ぐか。
由希のほうをみると、小石がコロリと落ちてきた。上を見上げると、岩がグラつくのが見えた。
「由希にぃ!」
確証があった訳でもなく走り出して、思いっきり突き飛ばした。
その後はスローモーションのようだった。
岩が自分が谷に落ちて行く。由希にぃは木に守られて落ちずに済んだ。良かった。
「智則!」
九条が智則に飛びついてきた。
なんでお前まで…。
九条はどんな身体能力しているのか、智則を抱きしめて落下する。木に激突しながら、川へと落下する。三日前の雨で川は増水していて流される。
川の中でも岩にぶつかって、九条が時折うめき声を漏らしていた。
なんで……。
流れに逆らわずに少しずつ岸を目ざし、なんとか二人でたどり着いた。九条は、疲れ果てて川岸で体を丸めている。智則の代わりに体をかなり打っているはずだ。
22
お気に入りに追加
573
あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる