努力に勝るαなし

認認家族

文字の大きさ
上 下
103 / 178

閉じ込めたい本能ー英樹

しおりを挟む
昨日の智則は最高だった。
英樹の手で踊る。微かな喘ぎと共に……


「おはよう」

智則がリビングに入ってきながら言う。危ない危ない、もう少しで兆してしまう所だった。
英樹が智則を抱きたいと思っていることぐらい智則も知っている。ただリアルに兆したそれを見せつけられたら、懐いてきた智則がまた元に戻ってしまう

智則はそのまま500円タワーに向かった
かわいいなあ
タワーを吹く、これは智則の朝のルーティンの一つだ。
達也がタワーを拭いていた時、智則は自覚がないであろうがとても嫌そうにしていた。何かを隠しているのではないかとタワーの近くも含め達也が細部にわたり確認をしたが、何も出なかった。

英樹がタワーに触れることに関しては何の反応も示さない。いやちょっと困ったような、不思議な顔をした。
『あれを九条や俺以外が触るのはなんとなく嫌なんだよ。俺にやらせてくれ』
それって…
天国にも昇る気持ちだった。僕とのデート記念を他の人に触られるのが嫌だなんて……智則はその理由を真剣に考えてはくれない。けれど、それでも一歩前進だと思う。

今日も智紀はそそくさとタワーに向かい、そして切なくなるような微笑を浮かべながら磨く。
本当に小悪魔だと思う。
いつか………


「九条、今日から出張って言ってなかったっけ?」

拭き終えた智則が席につきながらきく。達也がコーヒーを持ってきた。
「うん、でも、辞めた。嫌な予感がするからね。全部排除するまで出張はしないんだ」
こういった予感は必ず当たる。ならばできる限りの対策は取るべきだ。
あと少し、あと少しで智則が手に入るのだから。

「僕から智則を奪うヤツは許さないんだ。昨日みたいなあんなにも幸せで満たされる時間を僕から強奪したら地の果てまでおいかけて復讐するんだから」
あと少し、あと少しで昨日みたいな事を起きてる智則とできる。昨日ですら満ち足りた時間だったのだから、智則の瞳を見ながらできたら、僕はどうなるのだろうか?


「怖いな。でも……俺が自分から去ったら?」

こうやって僕を翻弄する。智則は魔性だ。

「智則は僕の番なんだから、そんなこと考えないで。ただ僕に甘えていればいい」

「俺を解放してくれないか。一時的でいいから、感情を整理する時間をくれ」

「何を言ってるの」

やっと、関係が変わろうとしているのに。感情を整理?元に戻る?昨日、あんなに僕を受け入れてくれたのに。僕ので啼いて僕の子種を受け入れてイったのに?

「君は僕のものだよ」

智則の表情が強張った。氷ついた。そのまま無言できびすを返した。
しまった。墓穴を掘ってしまったのだとわかった。

「智則っ」

慌てて手を伸ばすが、振り払われた。

「朝のランニングをしてくるだけだ。それすらも許されないのか」

「ちがっ智則っ違うんだっそうじゃ無くてっ」

ああ、どうすれば良いのだろうか。智則が頑なになっている。
予感はこれだったのか?
得られそうだったのに、その機会を自身で遠ざけてしまう事だったのか?

わからない。
わからないけれど、このままでは駄目だ。
智則が自室から出てくる音がして玄関までいく。智則は昨日英樹がプレゼントしたグローブをしていた。
よかった。これをしているうちは、まだ大丈夫なのだろう。

そう思うのに、本能が智則を閉じ込めろという。
閉じ込めろ閉じ込めろ閉じ込めろ!!


拳を強く握った。爪が食い込んで多分、血も出ている。
でも
『朝のランニングをしてくるだけだ。それすらも許されないのか』
唇を噛む。
そうだ、智則がランニングをし始めた日だって不安だったじゃないか。でも何もなかった。英樹の本能は何時でも智則を閉じ込めたがる。いつものソレなはずた。今、ランニングを禁止したら、智則は更に遠くなる。

これは本能。予感じゃないはずだ

下唇が切れて血の味がした。

「いってらっしゃい。気をつけてね」
声をかけるが、振り向くこともない。
そのまま、玄関ドアがパタンと閉まった
まるで、智則の心のように思えた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

処理中です...