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500円玉の単位は回ー智則
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リビングに戻ると、九条がコーヒーを飲んでいた。
智則の様子に眉を顰めた。
「………智則、他のαに合った?何があった?大丈夫だった?」
「……ああ。住人のΩが転んだから、手を貸したら番のαに睨まれた」
「………そう。反省してもらうね」
「いいよ。多分、俺がマナー違反なんだろう?」
「でも、僕の、九条英樹のものを軽んじるのは許さないからね」
……お前のじゃない。
俺は俺のものだ。
言い返したりしない。ろくな事にならないだろうから。こうやって諦めを覚えていくのか……
でも。
「αは大地、Ωは咲也って呼ばれてた。……管理人への抗議程度にとどめて欲しい。Ωが気の毒だ」
「分かったよ。優しいんだから」
そんなんじゃない。防犯カメラとかで調べられると不都合だからだ。3日間は持たせたい
視線をそらすと、サイドボードの上にある500円貯金が目に入った。
監禁されてから初めて九条と出かけた時に、ドリンクを買ったそのお釣り。
智則の資産は8桁 後半まで膨れ上がっているのに、自販機で飲み物を買うことすらできずに九条に千円をもらった。口座に大金があってもスマホすらない智則では、ジュースすら自由に買えないのだ。8桁、それはこの生活においてただの数字に過ぎないのだ。
現金の強みを思いしらされる。
なんとなく、特に理由もなく500円玉だけ返却しなかった。
次に出かけた時も、返却しなかった。
その次も……何でか、返却するのがいやだった。
サイドボードにコインが積み重なっていく。九条が、筒状の500円玉貯金箱を用意してくれた。目盛りの単位が円ではなく回となっていた。オリジナルなのだろう。単なる500円玉がこの部屋のオブジェになっている。
九条は、智則が要求しなくても帰りがけに1000円を渡すようになった。
自販機だったりコンビニだったりで必ず500円玉を作って、積んでいった。
理由は特にない。
………ない、はずだ……。
九条が貯金箱を見た。目を細めて蕩けそうな笑顔を浮かべる。
「いっぱい出かけたね」
そんな顔をしないでくれ。
やめてくれ。
「今日はどこに行こうか?たまには買い物に行かない?欲しい物ある?プレゼントさせて」
「……グローブを。ランニングしてて手だけ日に焼けてきたから」
九条が目を見張った。
智則が消える物以外をせがむ事はなかったからだろう。
「ありがとう」
プレゼントをするほうが礼を言うなんて。
目的を思うと、良心が咎める
リモート講義が終わってから買い物に行く。足にまたGPSをつけられた。かなりがっしりとしたやつ。ため息が出る
「ゴメン。でもなんか怖いんだ。智則に危害を加える人がいるのかもしれない。僕から離れないで、守るから。離れたら警報音がなるようにしてある」
「どうせ移動は車だろ?離れようがないけどな」
「うん」
達也が駐車場の入口まで車を持ってきた。智則の好きな日産のスカイライン。
九条が首を振った。達也がうなずいてもう一台をとってきた。ワゴンタイプの車だ。
近場でショッピングならスカイラインが良かったんだけどな…
九条はグローブ選びに凄い気合いを見せた。あれもダメ、これは安っぽいなど選んでいるときからご機嫌だ。服も買おうとしてきたので、なんとか粘って一着だけにしてもらった。初めは外商が持ってきたやつを全部買うとか言いやがったのだ。
試着試着でぐったりだ。
疲れたが、気合いで地下のパン屋を見る。クロワッサンを2個買った。ピッタリ500円だった。
思わず笑みがこぼれた。
帰りの車の中で熟睡した。
智則の様子に眉を顰めた。
「………智則、他のαに合った?何があった?大丈夫だった?」
「……ああ。住人のΩが転んだから、手を貸したら番のαに睨まれた」
「………そう。反省してもらうね」
「いいよ。多分、俺がマナー違反なんだろう?」
「でも、僕の、九条英樹のものを軽んじるのは許さないからね」
……お前のじゃない。
俺は俺のものだ。
言い返したりしない。ろくな事にならないだろうから。こうやって諦めを覚えていくのか……
でも。
「αは大地、Ωは咲也って呼ばれてた。……管理人への抗議程度にとどめて欲しい。Ωが気の毒だ」
「分かったよ。優しいんだから」
そんなんじゃない。防犯カメラとかで調べられると不都合だからだ。3日間は持たせたい
視線をそらすと、サイドボードの上にある500円貯金が目に入った。
監禁されてから初めて九条と出かけた時に、ドリンクを買ったそのお釣り。
智則の資産は8桁 後半まで膨れ上がっているのに、自販機で飲み物を買うことすらできずに九条に千円をもらった。口座に大金があってもスマホすらない智則では、ジュースすら自由に買えないのだ。8桁、それはこの生活においてただの数字に過ぎないのだ。
現金の強みを思いしらされる。
なんとなく、特に理由もなく500円玉だけ返却しなかった。
次に出かけた時も、返却しなかった。
その次も……何でか、返却するのがいやだった。
サイドボードにコインが積み重なっていく。九条が、筒状の500円玉貯金箱を用意してくれた。目盛りの単位が円ではなく回となっていた。オリジナルなのだろう。単なる500円玉がこの部屋のオブジェになっている。
九条は、智則が要求しなくても帰りがけに1000円を渡すようになった。
自販機だったりコンビニだったりで必ず500円玉を作って、積んでいった。
理由は特にない。
………ない、はずだ……。
九条が貯金箱を見た。目を細めて蕩けそうな笑顔を浮かべる。
「いっぱい出かけたね」
そんな顔をしないでくれ。
やめてくれ。
「今日はどこに行こうか?たまには買い物に行かない?欲しい物ある?プレゼントさせて」
「……グローブを。ランニングしてて手だけ日に焼けてきたから」
九条が目を見張った。
智則が消える物以外をせがむ事はなかったからだろう。
「ありがとう」
プレゼントをするほうが礼を言うなんて。
目的を思うと、良心が咎める
リモート講義が終わってから買い物に行く。足にまたGPSをつけられた。かなりがっしりとしたやつ。ため息が出る
「ゴメン。でもなんか怖いんだ。智則に危害を加える人がいるのかもしれない。僕から離れないで、守るから。離れたら警報音がなるようにしてある」
「どうせ移動は車だろ?離れようがないけどな」
「うん」
達也が駐車場の入口まで車を持ってきた。智則の好きな日産のスカイライン。
九条が首を振った。達也がうなずいてもう一台をとってきた。ワゴンタイプの車だ。
近場でショッピングならスカイラインが良かったんだけどな…
九条はグローブ選びに凄い気合いを見せた。あれもダメ、これは安っぽいなど選んでいるときからご機嫌だ。服も買おうとしてきたので、なんとか粘って一着だけにしてもらった。初めは外商が持ってきたやつを全部買うとか言いやがったのだ。
試着試着でぐったりだ。
疲れたが、気合いで地下のパン屋を見る。クロワッサンを2個買った。ピッタリ500円だった。
思わず笑みがこぼれた。
帰りの車の中で熟睡した。
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