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先住人の協力ー智則
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朝のランニング。
エントランスに戻ってくると、ロビーに人がいた。
ここのロビーやサロンで過ごす住人は多い。
以前は不思議だった。けれど、九条に軟禁されて、分かった。彼らは、同じように軟禁されていて、部屋にいたくないから、ここで過ごしているのだ。
脇を通り過ぎようとしたとき、女性にぶつかった
「すみません」
咄嗟に手を伸ばして支えた。
「ありがとうございます……明日からランニングの時はグローブしたら?手だけ日に焼けちゃうよ」
女性が言う。この人……前からいたな。英樹の所へ遊びにくる智則をみて、同情の目を向けてきていた記憶がある。
「そうですね。気をつけます」
日焼けなんか気にはしないけど。
「うん、さようなら」
……随分と不思議な挨拶だな
部屋に戻ろうと廊下を進むと、目の前で住人が転んだ
助けおこそうと身を屈めると、華奢なその男に小声で言われた。
「西の沈丁花のソファーの下。明明後日に点検されてしまう。その前に決行しろ」
え?
「咲也」
華奢な男がビクンと体をこわばらせた。
見ると、明らかにα然とした男が立っていた。思わず華奢な男を背中に庇う。
α男はその様子に苛ついたのか、威圧とおぼしきものを放ってきた。ホントにコイツラは馬鹿の一つ覚えのようにマウンティングをしてかくる。
「うぜぇ」
思わず手でパタパタ空気をはらった。あんま、意味はないけれど。
華奢男がクスリと笑った。
「凄いな、秋葉君は。」
直後に変な圧と………花のような香りが後からして振り向くと、華奢男が顔を赤くして苦しそうにうずくまっていた。
ヒート?こんな急に?
「咲也、いけないコだね。さぁおいで」
…………
このα男が強制的に発情させたのか。
サロンに行けば、抑制剤は手に入るかもしれないが、この状態の彼に効くのか?
ここで迷っていても状況は悪化するだけだ。
「サロンに連れてくぞ」
抱き上げようとかがみこむと、Ωが智則の首に手を回して引っ張った。顔が近い。耳元でΩかを囁いた
「君は僕らの希望。前例を作って」
α男の圧が強まった。Ωが痙攣している。
「大地……」
Ωが泣きながらα男に手をのばす。α男は嬉しそうに微笑んだ。
「かわいいかわいい咲也。もう、僕以外を見ては駄目だよ」
α男がΩを抱き上げた。
「!!!!」
それだけで、Ωがイッたのが分かった。
α男は嬉しそうだ。
………コイツラαは人の尊厳をどう考えてるんだ!
顔面を二発程殴って、そのまま去った。
ボコボコにしてやりたい位に腹立たしかった。けれど、ヒートで苦しむΩを救えるのはあのαなのだ。嫌悪しているαを自ら求めなければならない屈辱……
拳を強く握った。
階段を登っていると、向かい側から女性が降りてきた。智則を見て顔に緊張が走ったのがわかった。
会釈をしてすれ違った。
家に戻り、トイレで上着のポケットを確認すると、紙幣が入っていた。
ここまでされれば意図は明確だ。
ありがたい。
何が用意されているのかはわからない。
けれど、これが最初で最後の逃亡チャンスだろう。
エントランスに戻ってくると、ロビーに人がいた。
ここのロビーやサロンで過ごす住人は多い。
以前は不思議だった。けれど、九条に軟禁されて、分かった。彼らは、同じように軟禁されていて、部屋にいたくないから、ここで過ごしているのだ。
脇を通り過ぎようとしたとき、女性にぶつかった
「すみません」
咄嗟に手を伸ばして支えた。
「ありがとうございます……明日からランニングの時はグローブしたら?手だけ日に焼けちゃうよ」
女性が言う。この人……前からいたな。英樹の所へ遊びにくる智則をみて、同情の目を向けてきていた記憶がある。
「そうですね。気をつけます」
日焼けなんか気にはしないけど。
「うん、さようなら」
……随分と不思議な挨拶だな
部屋に戻ろうと廊下を進むと、目の前で住人が転んだ
助けおこそうと身を屈めると、華奢なその男に小声で言われた。
「西の沈丁花のソファーの下。明明後日に点検されてしまう。その前に決行しろ」
え?
「咲也」
華奢な男がビクンと体をこわばらせた。
見ると、明らかにα然とした男が立っていた。思わず華奢な男を背中に庇う。
α男はその様子に苛ついたのか、威圧とおぼしきものを放ってきた。ホントにコイツラは馬鹿の一つ覚えのようにマウンティングをしてかくる。
「うぜぇ」
思わず手でパタパタ空気をはらった。あんま、意味はないけれど。
華奢男がクスリと笑った。
「凄いな、秋葉君は。」
直後に変な圧と………花のような香りが後からして振り向くと、華奢男が顔を赤くして苦しそうにうずくまっていた。
ヒート?こんな急に?
「咲也、いけないコだね。さぁおいで」
…………
このα男が強制的に発情させたのか。
サロンに行けば、抑制剤は手に入るかもしれないが、この状態の彼に効くのか?
ここで迷っていても状況は悪化するだけだ。
「サロンに連れてくぞ」
抱き上げようとかがみこむと、Ωが智則の首に手を回して引っ張った。顔が近い。耳元でΩかを囁いた
「君は僕らの希望。前例を作って」
α男の圧が強まった。Ωが痙攣している。
「大地……」
Ωが泣きながらα男に手をのばす。α男は嬉しそうに微笑んだ。
「かわいいかわいい咲也。もう、僕以外を見ては駄目だよ」
α男がΩを抱き上げた。
「!!!!」
それだけで、Ωがイッたのが分かった。
α男は嬉しそうだ。
………コイツラαは人の尊厳をどう考えてるんだ!
顔面を二発程殴って、そのまま去った。
ボコボコにしてやりたい位に腹立たしかった。けれど、ヒートで苦しむΩを救えるのはあのαなのだ。嫌悪しているαを自ら求めなければならない屈辱……
拳を強く握った。
階段を登っていると、向かい側から女性が降りてきた。智則を見て顔に緊張が走ったのがわかった。
会釈をしてすれ違った。
家に戻り、トイレで上着のポケットを確認すると、紙幣が入っていた。
ここまでされれば意図は明確だ。
ありがたい。
何が用意されているのかはわからない。
けれど、これが最初で最後の逃亡チャンスだろう。
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