99 / 178
先住人の協力ー智則
しおりを挟む
朝のランニング。
エントランスに戻ってくると、ロビーに人がいた。
ここのロビーやサロンで過ごす住人は多い。
以前は不思議だった。けれど、九条に軟禁されて、分かった。彼らは、同じように軟禁されていて、部屋にいたくないから、ここで過ごしているのだ。
脇を通り過ぎようとしたとき、女性にぶつかった
「すみません」
咄嗟に手を伸ばして支えた。
「ありがとうございます……明日からランニングの時はグローブしたら?手だけ日に焼けちゃうよ」
女性が言う。この人……前からいたな。英樹の所へ遊びにくる智則をみて、同情の目を向けてきていた記憶がある。
「そうですね。気をつけます」
日焼けなんか気にはしないけど。
「うん、さようなら」
……随分と不思議な挨拶だな
部屋に戻ろうと廊下を進むと、目の前で住人が転んだ
助けおこそうと身を屈めると、華奢なその男に小声で言われた。
「西の沈丁花のソファーの下。明明後日に点検されてしまう。その前に決行しろ」
え?
「咲也」
華奢な男がビクンと体をこわばらせた。
見ると、明らかにα然とした男が立っていた。思わず華奢な男を背中に庇う。
α男はその様子に苛ついたのか、威圧とおぼしきものを放ってきた。ホントにコイツラは馬鹿の一つ覚えのようにマウンティングをしてかくる。
「うぜぇ」
思わず手でパタパタ空気をはらった。あんま、意味はないけれど。
華奢男がクスリと笑った。
「凄いな、秋葉君は。」
直後に変な圧と………花のような香りが後からして振り向くと、華奢男が顔を赤くして苦しそうにうずくまっていた。
ヒート?こんな急に?
「咲也、いけないコだね。さぁおいで」
…………
このα男が強制的に発情させたのか。
サロンに行けば、抑制剤は手に入るかもしれないが、この状態の彼に効くのか?
ここで迷っていても状況は悪化するだけだ。
「サロンに連れてくぞ」
抱き上げようとかがみこむと、Ωが智則の首に手を回して引っ張った。顔が近い。耳元でΩかを囁いた
「君は僕らの希望。前例を作って」
α男の圧が強まった。Ωが痙攣している。
「大地……」
Ωが泣きながらα男に手をのばす。α男は嬉しそうに微笑んだ。
「かわいいかわいい咲也。もう、僕以外を見ては駄目だよ」
α男がΩを抱き上げた。
「!!!!」
それだけで、Ωがイッたのが分かった。
α男は嬉しそうだ。
………コイツラαは人の尊厳をどう考えてるんだ!
顔面を二発程殴って、そのまま去った。
ボコボコにしてやりたい位に腹立たしかった。けれど、ヒートで苦しむΩを救えるのはあのαなのだ。嫌悪しているαを自ら求めなければならない屈辱……
拳を強く握った。
階段を登っていると、向かい側から女性が降りてきた。智則を見て顔に緊張が走ったのがわかった。
会釈をしてすれ違った。
家に戻り、トイレで上着のポケットを確認すると、紙幣が入っていた。
ここまでされれば意図は明確だ。
ありがたい。
何が用意されているのかはわからない。
けれど、これが最初で最後の逃亡チャンスだろう。
エントランスに戻ってくると、ロビーに人がいた。
ここのロビーやサロンで過ごす住人は多い。
以前は不思議だった。けれど、九条に軟禁されて、分かった。彼らは、同じように軟禁されていて、部屋にいたくないから、ここで過ごしているのだ。
脇を通り過ぎようとしたとき、女性にぶつかった
「すみません」
咄嗟に手を伸ばして支えた。
「ありがとうございます……明日からランニングの時はグローブしたら?手だけ日に焼けちゃうよ」
女性が言う。この人……前からいたな。英樹の所へ遊びにくる智則をみて、同情の目を向けてきていた記憶がある。
「そうですね。気をつけます」
日焼けなんか気にはしないけど。
「うん、さようなら」
……随分と不思議な挨拶だな
部屋に戻ろうと廊下を進むと、目の前で住人が転んだ
助けおこそうと身を屈めると、華奢なその男に小声で言われた。
「西の沈丁花のソファーの下。明明後日に点検されてしまう。その前に決行しろ」
え?
「咲也」
華奢な男がビクンと体をこわばらせた。
見ると、明らかにα然とした男が立っていた。思わず華奢な男を背中に庇う。
α男はその様子に苛ついたのか、威圧とおぼしきものを放ってきた。ホントにコイツラは馬鹿の一つ覚えのようにマウンティングをしてかくる。
「うぜぇ」
思わず手でパタパタ空気をはらった。あんま、意味はないけれど。
華奢男がクスリと笑った。
「凄いな、秋葉君は。」
直後に変な圧と………花のような香りが後からして振り向くと、華奢男が顔を赤くして苦しそうにうずくまっていた。
ヒート?こんな急に?
「咲也、いけないコだね。さぁおいで」
…………
このα男が強制的に発情させたのか。
サロンに行けば、抑制剤は手に入るかもしれないが、この状態の彼に効くのか?
ここで迷っていても状況は悪化するだけだ。
「サロンに連れてくぞ」
抱き上げようとかがみこむと、Ωが智則の首に手を回して引っ張った。顔が近い。耳元でΩかを囁いた
「君は僕らの希望。前例を作って」
α男の圧が強まった。Ωが痙攣している。
「大地……」
Ωが泣きながらα男に手をのばす。α男は嬉しそうに微笑んだ。
「かわいいかわいい咲也。もう、僕以外を見ては駄目だよ」
α男がΩを抱き上げた。
「!!!!」
それだけで、Ωがイッたのが分かった。
α男は嬉しそうだ。
………コイツラαは人の尊厳をどう考えてるんだ!
顔面を二発程殴って、そのまま去った。
ボコボコにしてやりたい位に腹立たしかった。けれど、ヒートで苦しむΩを救えるのはあのαなのだ。嫌悪しているαを自ら求めなければならない屈辱……
拳を強く握った。
階段を登っていると、向かい側から女性が降りてきた。智則を見て顔に緊張が走ったのがわかった。
会釈をしてすれ違った。
家に戻り、トイレで上着のポケットを確認すると、紙幣が入っていた。
ここまでされれば意図は明確だ。
ありがたい。
何が用意されているのかはわからない。
けれど、これが最初で最後の逃亡チャンスだろう。
22
お気に入りに追加
576
あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、



久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる