努力に勝るαなし

認認家族

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居心地の良さが怖いー智則

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あれから、本格的に逃走経路を考えだした。そうすると、このマンションの異様さが分かる。外から入るよりも、中から出る方が難しいのだ。

このマンションの賃貸主以外がこのマンションから出る時には、借り主の承諾書が必要なのだ。
渡されているセキュリティカードに承諾の有無が入っている。

セキュリティカードは九条の家に智則が初めて招かれた際に、渡された。この時は問題なかった。今回からだ。

朝のランニングをしながら、城壁のようなルーパーをみる。掴まる所がない。
縄でもかけたいところだが、縄がないし、何より、ランニングに出るだけでも持ち物検査がある。ピアノ線位の太さならば見つからずに充分な長さを確保できるが、そんなんじゃ指が切断される

小分けにしてとも思ったが、隠して置く場所がない。ルーパーにそって、内側に向けられたあからさまな監視カメラ。これ以外にも隠しカメラがあるだろう。

悩んでいる間にも、時間は過ぎていく。

九条は相変わらず智則に触れたりしない。
ただ、夜中寝ているふりをして耳をすませていると、誰かが出入りしているのがわかった。恐らくは、また……

九条を拒絶するのはやめた
『智則、なんで番ってくれないの』
そういいながら、西川に凶行におよぶはずだから。

智則が何も言わないからか、九条の態度は柔らかくなった。溺愛、というのが正しいのか智則にはわからないが、智則がいずれ欲しがるものを与えてくる。智則は与えられるのに慣れていない。いや、口に出して求めたものは与えられてきたが、甘やかすように先回りして与えられる事はなかった。
居心地が良いとさえ感じてしまう。
早く、早くここを出ないと、焦燥に駆られる。
このままここにいたら、一人で立てなくなる
今迄の自分が消えてしまいそうな、あの人形のようになるのではと、恐怖さえ覚える時もある。

九条が柔和になった一方で、達也は智則に対する警戒を強めてきた。
九条がこの部屋に内鍵を付けた時に、智則は部屋からカメラを排除したのだが、達也は再度隠しカメラを設置してきた。もちろん返却した。

態度が軟化した原因を達也は探ってくる。原因がバレれば恐らく今の軟禁ではなく監禁になる。
時間が経てば経つほど、智則に不利になる。

『逃げたければ逃げるといい。手を貸す事はないが、こちらへの影響を考える必要はない。それで会社や私がどうなろうと、私の責任であってお前の責任ではない。深澤家もだ。一馬は恨むだろう。だが、アレは自業自得だ。逃げようと逃げまいと、どちらにしろ一馬に未来は既にない』
父がネットを介して伝えてきた言葉だ。

起業家の集会に行った時に、知らない男から密かにと渡された紙に書かれていたURL。暗記して紙はすぐ捨てた。九条の罠ともおもったが、罠だとしてももういい。
逃げる
………手段がないけど。









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