努力に勝るαなし

認認家族

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人形だったー智則

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トレイルランニングのあと、少し、気まずいままに、マンションに戻ってきた。

そのまま夕食を食べて部屋に戻る。
内鍵を閉めてシャワーをあびる。

九条はどう過ごしているのだろうか。
傷つけた。
トレイルランニングはずっと優と行っていたから、咄嗟に呼ぶのはそうなるし、巣とやらから出たいのは事実だ。
βのポテンシャルに絶望した日々から救い出してくれた山下教授のゼミを目指して行った努力を無駄にしたくないのも事実だ。
そして……
何をすれば智則が喜ぶかわかっていて、九条は巣から出る事以外は全てを与えようとしているのも事実だ。
ただ、智則が最も求めているのはこのマンションから出ることで……

「あ~もうっ」
眠れない。髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜて部屋を出た。
この部屋にはトイレやシャワールームといった水回りが完備されているため夜間に智則がこの部屋を出ることは先日以来の事だ。

九条の部屋のドアが開いていた。そしてくぐもった声が聞こえた。珍しい。客だろうか。こんな時間に?
興味心から覗いてみた。

異様な光景だった。
よく、声を漏らさなかったと思う。
九条が奥のベッドの上で人形を、いわゆる騎乗位で犯していた。
手前には、目が虚ろになった西川がもう一人の男に同じく騎乗位で犯されていた。
智則を見て、西川の焦点があってきた。
智則と目があった西川は一瞬嘲笑ったあと、喘ぎ声を出した。奥にいる九条が智則智則と呟きながら動きを早くする。それにあわせて、西川を抱いている男も動きを早めた。
九条の上の人形がカクカク揺すられているのが見える。智則にそっくりな人形だ。
九条が動きを止めて低く呻き、そして人形を強く抱きしめた。

「……足りない。もっともっと、智則を埋め尽くさなきゃ。僕だけの穴にしなきゃ」

サイドテーブルから九条が何かを取り出した。
「や、やめて九条。それだけはやめて九条」
男が、九条同様に何かを取り出し、そしてペニスに装着した。
イボイボのあるそれは、凶悪なサイズになっていて、とても人体に納めるものではない。
思わず後ずさると、男と目があった。首を振ったあと、顎でここから立ち去れと合図してきた。
西川が首をふる。
『お前の代わりに僕がどんな目にあってきたか、見ていくがいい。少しでも良心があるなら、助けるな、最後まで見ていけ』
声には出さす、口をゆっくりと動かして伝えてきた。

地獄絵図だった。
有り得ないものを入れられて、西川は絶叫した。そのまま意識を失った西川の頬を男が軽く叩いておこす。
「智則、声をきかせて……」
人形相手に九条がいい、西川が啜り泣いた。
「ああ、智則、感じているんだね。かわいい」
悍ましい。
九条が男が動き、脂汗を滲ませた西川が呻く。
人形はカクカクと動かされ、西川は悲鳴を上げ続け……見ていられずに、その場からにげた。
部屋の内鍵をかける。

悍ましい

西川の絶叫がまだ聞こえるようだった。
西川の項の絆創膏はわずかに血が滲んできていた。
先日の血に濡れたタオル、あれは西川だったのでは。
力無く揺られていた人形……あれは睡姦されていた頃の智則か。
正直なところ記憶もなく九条にレイプされていたから実感はあまりなかった。ただ、優のアナフィラキシーでほんとに犯されていたのだと、認識させられていただけだった。

どこか、噛み合わない九条との会話。
当然だ。お互い人間と認識していなかったから。智則は九条をエイリアンと、九条は智則をセックスドールと。自分はあんなふうに、人形のように、いや、九条の穴に、意志なんて必要ないトイレにされていたのだ。

「ははははは…」
涙が出てきた。

やはり、もう、無理だ

















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