努力に勝るαなし

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ストックホルム症候群?ー智則

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九条と交渉した

朝のランニングはマンションの敷地内だけだった。このマンションは広い。
壁沿いに走りながら、高い高いルーパーがまるで牢屋の塀に思えた。
道場通いは送迎を条件に許された。あのマンションにいるのが嫌でほぼ毎日通っている。蹴り上げた時にアンクルモニターがみえて、まるで性犯罪者だなと嘲笑ってしまう。師匠も仲間も何も言わなかった。猛から何か聞いているのかもしれない。


軟禁にも慣れてきてしまった。

道場に行く日を増やしたのだから、成績も下がりそうなものだが、皮肉な事に九条との復習で逆に色々が整理されて評価が上がる科目まで出てきた。


九条はトレイルランニングが気に入ったようだ。週に一回は二人で行く。
αはやはり体力がちがう。
慣れもあって智則の方が動けるが4本目位になってくると智則には疲れがでてくるが、九条は大して体力を消耗してないのか動きが良い。
智則が終わりにしようとすると、もう一本どう?と誘ってくる。しゃくなのでのるが、帰りには全身が悲鳴をあげていて、車に乗った途端に寝落ちする。

振動が途切れて目が覚めた。抱き上げられそうになっていて咄嗟に九条の胸を押し返した。
「ごめん……寝てたから、起こすのも気の毒かと思って部屋まで、と……ごめん」
「大丈夫だ。起こしてくれ」
傷ついた顔をされた。監禁してからは九条は智則に手を出してこない。とはいえ、前科者だ。拒絶したからと、智則が後ろめたく思わなければならないのか。
俗にいう、ストックホルム症候群というやつなんだろうか。
そのせいだろうか。
九条を嫌悪し続けるのが難しいくなっていた。

智則が話しかけただけで満面の笑みを浮かべ、智則の好きそうなお土産を買ってきては褒めて褒めてと尻尾が見える。
智則が好きな、けれど並ぶ事で有名なデザートを買ってこられた時、当然ながら智則は口にしなかった。
「そう、だよね……」
眉尻が下がり、泣きそうな顔をされた。丸まった尻尾が見えた気がして、
「向こうで食ってもいいか?」
と言うと尻尾がブンブン振られているのがわかってしまった。内鍵をかけて食べてる。フツーに美味しい。
これ、ヤツが並んだのか?誰かに並ばせたのか?
………うまいよな。
2時間位経っても体調に変化がなかったので、部屋から出てお礼を言った
「智則が食べてくれて嬉しい」
九条は嬉しそうに微笑んだ
……自分が酷く失礼な人間になった気がした。

それ以後も智則の好きなデザートを買ってくる。
いたたまれなくて、時々九条と食べるようになった。
初めて一緒に食べた時、ヤツは幸せだと泣いていた。
確かに、こうなる前から智則個人に提供される食事は口にしてこなかった。
今回が初だ。
αには給餌本能がある。食事を番に手づから与えたいという欲求だ。智則は手づからどころか、一緒に食事を取りもしなかった。
……、……そっか。

なんとなく、続けてもいいと思った。毎回ではなく、時々なら薬を盛りづらくなるから。そう言いつつも、盛るようにも思えなくなっていた。

トレイルランニングは楽しい。
車に戻れるまでを限界値にして走り抜けるから、後部座席に座った途端に寝落ちする。
ふっと、目を覚ますと九条に膝枕されていて、頭を撫でられてて飛び起きた。
「わりぃ」
九条は心底幸せそうに笑って
「気持ち良さそうに寝てたから起こさなかったんだ。部屋まで運んでもいいけど、起きちゃうかなって」
時計をみると、何時もより一時間以上も遅い。ずっと膝枕をしてたのか?この忙しい男が。九条のスケジュールは分単位な日もある。流石に申し訳ない
「起こしてくれよ」
九条が車を降りながらいう。
「やだよ。僕にとって癒やしの時間なんだ。智則とこんなふうに過ごせるなんて、まるで夢みたいで、覚めてほしくないね」
車を降りた九条はエスコートするかのように智則に手を差し出した。
……
その手を掴むか逡巡する
「あ、ごめん……」
九条が痛そうな顔で手を引っ込めた
傷つけた……

いや、俺は悪くない
こんなふうに軟禁されてなければ、九条があんなことをしなければ……

頭を振って車から降りる。体に力入らなかくて、地面にぶつかりそうになったのを九条が支えてくれた。
「やっぱり最後の一本はむりだったかな?」
九条に笑われて言い返す
「五月蝿い。今に見てろよ」
結局、九条の肩を借りつつ部屋に戻った。
九条はご機嫌だ。

よくわからないまま時間ばかりが過ぎて……

そして今は
九条と時々ご飯を食べ
九条とオンライン講義を受け
九条とトレイルランニング
それらが意外に心地良く、穏やかに時間が過ぎていく。
生温いお湯に浸かっているような……


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