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守り方ー英樹
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処置室に入ろうとした英樹の前に猛が立った。
「どけ。番がどうなってもいいのか」
「………」
猛はどかなかった。だが、英樹が猛を避けて進むのを止める事もしなかった。
「九条、やめてくれ……頼む」
「智則は、そんなことしたヤツを庇うの?」
「お願いだ………」
智則が僕に頼んでくるのは初だ。だけど、それがマーキングをした深澤優を守る為と思うと余計に許せない。扉に手をかけると
「お前に優の事が言えんのか!お前こそ、俺を眠らせてレイプしていたんだろうが!優に危害を加えるなら、俺はお前を訴える!」
「何をいっているの。君は僕の番だよ。番への愛をレイプなんてひどい表現しないで。」
つれない事をいう智則に振り返って言う。あんなに俺に応えてくれていたのに、全く覚えてくれていない。
「睡眠薬なんて使うんじゃなかったなあ。そんなに可愛くないこと言うなんて。躾が必要だね」
智則に近付くと、顔が蒼白になった。小さな悲鳴も聞こえた。
「やめなさい」
救急隊員の女が間にはいってきた。
「邪魔だ」
「私は誤解していた。貴方は秋葉君の恋人ではない。秋葉君は、貴方を訴える権利がある。被告は原告に近付いてはいけない。貴方のその態度は脅しとなる」
「関係ないよ。智則は僕の番だ。そこの警官、この女をどうにかしろ」
女警官が後ろから救急隊に覆いかぶさった。
ふん。
「番なんかじゃない。俺の性的対象はβ女性だ」
智則が後退りながら、可愛くない事をいう。
「またそれ~。僕の腕の中でどれだけイッたと思っているの。今更、女なんて智則は抱けないよ。ああ、そうだね、智則は覚えてないからそんなことが言えるんだ。いい事思いついた。ねえ、今回の事、深澤を見逃してあげるよ。だから、僕に睡眠薬なしで抱かれなさい。そしたら、もう自分の立場がわかるから」
「お断りだ」
それは良かった。
意識ある智則を抱きたいけど、いや、どんな智則でも抱きたいけど、それが深澤の為とかだと、こちらも複雑な気持ちになる。
「深澤よりも自分を優先してくれて嬉しいよ、智則」
「優はそんな事、喜ばないからな。死にたがってたのを無理矢理俺が蘇生させたんだ。これ以上、優の意志は無視できない」
優優優…
「智則は僕のモノなんだよっ!」
「なった覚えはない。何度もいうが、俺の対象はβ女性だ」
「今更、智則に女がだけるわけがない。僕の手でどれだけイッたか、喘いでいたか、映像もあるからみせてあげるよ」
「だったら、β男性だ。お前という選択肢だけはない」
「僕以外に抱かれるというの。そんな事が許されるとでも?」
許さない許さない許さない。
閉じ込めなければ。
閉じ込めてこんな馬鹿な事をいう番にお仕置きをしなきゃ。
智則を捕まえようと手をのばした。そして……また、智則に転がされていた。
なんで?
こんなに怯えているのに?
両肩に痛みが走った。智則に肩を外された。
深澤猛が嘲笑った。
「智則は凄いだろう。俺が守れなくても、自分で自分を守るさ。鍛えてはじめてまもないヤツなんて平常心を失っていても転がせる」
………
英樹が鍛えはじめた事を知っているのか。最高位αだ。それなりに身にはついたが、やはり師の問題もある。残念ながら、深澤猛より上の者はいないし、深澤の門下は英樹に教えるのを拒絶した。
足で英樹の腹を踏み押さえながら、智則が言う
「香苗さんを開放しろ。優には手を出すな」
蒼白といってもいい、そんな顔色で智則が告げる
「お断り。智則、番を苦しめた者をαが許すと思ってんの?ましてや最高位αだよ?」
「……番云々はさておき、俺を苦しめてんのはお前だよ」
何故?
俺は智則をこんなも愛してるのに?
俺の想いが伝わってないの?
「智則が、毎週末うちにくるなら見逃してあげる」
「それで、お前に抱かれろって?冗談じゃない」
ふいに、智則の足から力が抜けた。俺から飛び退り、そして、嘔吐した。
「「智則!!」」
腹筋の力だけで飛び起きる。智則を抱き締めようとするも腕が動かない。その間に深澤猛が智則に近付き、背中をさすった。
「大丈夫か、智則」
深澤猛の服を掴みながら、智則が弱々しく頷いた。
「……今回はひいてください。これ以上は智則の心が壊れる」
「何を……智則を返せ」
「今、智則が嘔吐したのは、貴方が原因だ。貴方に触られると思うだけで、こうなる」
巫山戯たことを。動かない腕で懸命に智則に手を差し伸べる。智則がまた、嘔吐した。
汚れるのも厭わずに深澤猛が智則を抱き締めた。
「大丈夫、大丈夫だよ智則……側にいるから。少し、眠りなさい。」
深澤が囁くと、智則がカクンとおちた。
「なんで………」
なんで、智則は吐いた。番のあからさまな拒絶だ。頭がぐらぐらする。
「優のことは…智則には申し訳ないと思っている。だが、貴方には思わない。番だというならもっと、守りようもあったはずだ。貴方自身の落ち度でもある。」
そうだ。
深澤優に監視を付けていれば、飛行機に乗ったことぐらいわかったはずだ。
「そして、智則の拒絶は貴方の配慮がかけていたせいです。βにはマーキングの習性がない。彼らは、得体のしれないモノとしかとらえられない。未知の生物を体に埋め込んだ者を受け入れられるわけがない」
「守りたかっただけだ」
「彼らの知らない守り方です。貴方だって、チップでも埋め込まれて自分の身体が勝手に動き出して、両親を殺しかけたら怖いでしょう」
「………今回だけだぞ」
今日は負けてやる
「どけ。番がどうなってもいいのか」
「………」
猛はどかなかった。だが、英樹が猛を避けて進むのを止める事もしなかった。
「九条、やめてくれ……頼む」
「智則は、そんなことしたヤツを庇うの?」
「お願いだ………」
智則が僕に頼んでくるのは初だ。だけど、それがマーキングをした深澤優を守る為と思うと余計に許せない。扉に手をかけると
「お前に優の事が言えんのか!お前こそ、俺を眠らせてレイプしていたんだろうが!優に危害を加えるなら、俺はお前を訴える!」
「何をいっているの。君は僕の番だよ。番への愛をレイプなんてひどい表現しないで。」
つれない事をいう智則に振り返って言う。あんなに俺に応えてくれていたのに、全く覚えてくれていない。
「睡眠薬なんて使うんじゃなかったなあ。そんなに可愛くないこと言うなんて。躾が必要だね」
智則に近付くと、顔が蒼白になった。小さな悲鳴も聞こえた。
「やめなさい」
救急隊員の女が間にはいってきた。
「邪魔だ」
「私は誤解していた。貴方は秋葉君の恋人ではない。秋葉君は、貴方を訴える権利がある。被告は原告に近付いてはいけない。貴方のその態度は脅しとなる」
「関係ないよ。智則は僕の番だ。そこの警官、この女をどうにかしろ」
女警官が後ろから救急隊に覆いかぶさった。
ふん。
「番なんかじゃない。俺の性的対象はβ女性だ」
智則が後退りながら、可愛くない事をいう。
「またそれ~。僕の腕の中でどれだけイッたと思っているの。今更、女なんて智則は抱けないよ。ああ、そうだね、智則は覚えてないからそんなことが言えるんだ。いい事思いついた。ねえ、今回の事、深澤を見逃してあげるよ。だから、僕に睡眠薬なしで抱かれなさい。そしたら、もう自分の立場がわかるから」
「お断りだ」
それは良かった。
意識ある智則を抱きたいけど、いや、どんな智則でも抱きたいけど、それが深澤の為とかだと、こちらも複雑な気持ちになる。
「深澤よりも自分を優先してくれて嬉しいよ、智則」
「優はそんな事、喜ばないからな。死にたがってたのを無理矢理俺が蘇生させたんだ。これ以上、優の意志は無視できない」
優優優…
「智則は僕のモノなんだよっ!」
「なった覚えはない。何度もいうが、俺の対象はβ女性だ」
「今更、智則に女がだけるわけがない。僕の手でどれだけイッたか、喘いでいたか、映像もあるからみせてあげるよ」
「だったら、β男性だ。お前という選択肢だけはない」
「僕以外に抱かれるというの。そんな事が許されるとでも?」
許さない許さない許さない。
閉じ込めなければ。
閉じ込めてこんな馬鹿な事をいう番にお仕置きをしなきゃ。
智則を捕まえようと手をのばした。そして……また、智則に転がされていた。
なんで?
こんなに怯えているのに?
両肩に痛みが走った。智則に肩を外された。
深澤猛が嘲笑った。
「智則は凄いだろう。俺が守れなくても、自分で自分を守るさ。鍛えてはじめてまもないヤツなんて平常心を失っていても転がせる」
………
英樹が鍛えはじめた事を知っているのか。最高位αだ。それなりに身にはついたが、やはり師の問題もある。残念ながら、深澤猛より上の者はいないし、深澤の門下は英樹に教えるのを拒絶した。
足で英樹の腹を踏み押さえながら、智則が言う
「香苗さんを開放しろ。優には手を出すな」
蒼白といってもいい、そんな顔色で智則が告げる
「お断り。智則、番を苦しめた者をαが許すと思ってんの?ましてや最高位αだよ?」
「……番云々はさておき、俺を苦しめてんのはお前だよ」
何故?
俺は智則をこんなも愛してるのに?
俺の想いが伝わってないの?
「智則が、毎週末うちにくるなら見逃してあげる」
「それで、お前に抱かれろって?冗談じゃない」
ふいに、智則の足から力が抜けた。俺から飛び退り、そして、嘔吐した。
「「智則!!」」
腹筋の力だけで飛び起きる。智則を抱き締めようとするも腕が動かない。その間に深澤猛が智則に近付き、背中をさすった。
「大丈夫か、智則」
深澤猛の服を掴みながら、智則が弱々しく頷いた。
「……今回はひいてください。これ以上は智則の心が壊れる」
「何を……智則を返せ」
「今、智則が嘔吐したのは、貴方が原因だ。貴方に触られると思うだけで、こうなる」
巫山戯たことを。動かない腕で懸命に智則に手を差し伸べる。智則がまた、嘔吐した。
汚れるのも厭わずに深澤猛が智則を抱き締めた。
「大丈夫、大丈夫だよ智則……側にいるから。少し、眠りなさい。」
深澤が囁くと、智則がカクンとおちた。
「なんで………」
なんで、智則は吐いた。番のあからさまな拒絶だ。頭がぐらぐらする。
「優のことは…智則には申し訳ないと思っている。だが、貴方には思わない。番だというならもっと、守りようもあったはずだ。貴方自身の落ち度でもある。」
そうだ。
深澤優に監視を付けていれば、飛行機に乗ったことぐらいわかったはずだ。
「そして、智則の拒絶は貴方の配慮がかけていたせいです。βにはマーキングの習性がない。彼らは、得体のしれないモノとしかとらえられない。未知の生物を体に埋め込んだ者を受け入れられるわけがない」
「守りたかっただけだ」
「彼らの知らない守り方です。貴方だって、チップでも埋め込まれて自分の身体が勝手に動き出して、両親を殺しかけたら怖いでしょう」
「………今回だけだぞ」
今日は負けてやる
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