努力に勝るαなし

病院にてー猛

智則のマンションを訪ねた。
絶望的だった。
久々に会った智則は更に英樹にマーキングされていた。前はマーキングされた服を着せられていたが、今はもう、直接マーキングされている。
本人は気がついてないから、睡姦でもされているのだろう。

なんで、そんなに無用心なんだ！
"αの相手はΩだけ"
『その固定概念を捨てろ』
伝えても、伝わらない。
その固定概念があるから、英樹の怪しい行動に対して違和感を持たない。
相手がβ男性だったら、もう少しは警戒したであろうに。
それほど、智則にとってαは範疇外なのだ。

AEDを置いていく。
優は蘇生を望まない。
けれど、制裁を抜きにしても、親としては優に生きていてほしいのだ。


対策もないまま、ただただ、優の帰国の邪魔をした。
単なる延命でしかない。

取引先からの帰り道、偶々、九条英樹に会った。正直、たまたまだとは思っていない。ヤツは猛のスケジュールを調べ上げてきたのだろう。　
警告をされた。


香苗と過ごしている時に、智則からの緊急連絡がきた。

両腕を縛られている、そう言われて、香苗は青褪めた。優が智則にレイプしたのがわかったのだろう。しきりに謝罪をする。

猛は落ち着いていた。想像はついていたから。優はマーキングされた智則に会ってしまえば暴走するだろうと。

そして智紀は優の蘇生を望んだ。

病院で会った時、智則は再びα恐怖症になっていた。病院にはαの医師もいる。猛から離れるとガタガタと震えていた。

智則にここまでの心理的不安を与えた優を九条英樹は許さない。優を守るために処置室の前で待つことにした。

智則は九条に怯えていた。あんなことをした優よりも九条の方が印象にあるのだ。優が気の毒でしょうがなかった。死んででも智則の心の一部を持って行こうとした優なのに、今智則の中にあるのは深澤家の心配と九条への恐怖だけだ。