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九条先代当主ー猛
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九条家のパーティーから数日後、猛はまた別の会合に顔を出していた。
正直なところ、有効な対策が思い浮かんでいない。九条英樹のあの執着は優の執着と同等だろう。αの格として奴の執着の方が上かもしれない。智則を離すことはない。
主催者のもとに挨拶に行くと今は会いたくない人がいた。九条英樹の祖母だ。この女も最高位αといっていい。もともと巨大企業であった九条家をさらに大きくした女だ。この程度の会合に出席するとは……
「あら、お久しぶりね。その節はどうも」
「いえ、ご無沙汰しております」
「お二人は、親しかったのですね、存じませんで……」
「ああ、随分前に、仕事でちょっと……」
軽く説明しようとする猛に九条は被せてきた
「ウチの孫の恩人なのよ。正確にはウチの孫の番の恩人」
「ええ!?英樹さんに番が出来たんですか、これは皆が荒れそうだ」
結婚相手として一番人気の英樹だ。周囲の者たちも聞き耳を立てている。
「そうなの。秋葉君っていうの。まだ、結婚はしてないのよ。でも、孫は本気なのよね。割り込む者には容赦ないわよ、あれでも最高位αなんだから」
やられた。こんな所で智則の名字を出された。これでは、優が智則を連れて逃げて行く先が狭まる。
公的な場所で番と、先代九条家当主が言う。家公認と言うことだ。英樹は智則を仕留める。
「はて?秋葉家、ですか?」
主催者が問う。当然だ。九条家に家柄で合う家で秋葉なんて存在していない。けれど、深澤と親しい者としてしらべれば、
「ああ、うちは、自由恋愛だから。お家の格よりも本人の希望よ。特に英樹は私を超えるαですから、その執着たるや……秋葉君以外は考えないわ」
「九条家に嫁げるなんて幸せな方ですね」
「ふふ…深澤さんはどう思われます?」
それは、優が考える智則の幸せではない。
「……私の番も孫を可愛がっているの。深澤さんより、番が大事。そうそう、香苗さんはお元気かしら。久々におあいしたいわね」
優のことはバレてる。香苗を取るか優を取るか、露骨に脅してきた。そして、息子よりも番を取るのが猛達高位αだ。
優はどうなってしまうのか。
そのあと、自分がどう過ごしたか、記憶はあやふやだ。
ただ、家に帰ってあとはひたすら香苗を抱き締めていた。
優を失えば香苗が悲しむ。けれど優に協力すれば先代当主は香苗を壊す。αの間には番に不可侵条約があるが、それは下位から上位に対してで、下位の番を守れるものではない。
「猛さん?どうしたの?」
首をふる。香苗が慰めるように頭を撫でてくれる。
香苗にいえば、香苗は自分の無事より優をとる。自分の子だ。
わかっている。
猛の行動は独善的だ。香苗の思いなど無視している。
それでも、これがαの愛し方だ。
優の愛し方を考える。βにならば譲って緩慢な自殺をする。β以外は許さないはずだ。自分より下位にならば、葬るだろう。では、上位ならば?
肌が粟立つ。
優は智則に自身を刻み込む。肉体的にも、心にも。智則に思いを告げて自殺する。他のαに全部を渡したりしない。心の一部だけでも奪って死のうとするだろう。
それだけは駄目だ。
そうなった時、九条家は優を許さない。見せしめに香苗を壊して猛も壊して皆壊す。
正直なところ、有効な対策が思い浮かんでいない。九条英樹のあの執着は優の執着と同等だろう。αの格として奴の執着の方が上かもしれない。智則を離すことはない。
主催者のもとに挨拶に行くと今は会いたくない人がいた。九条英樹の祖母だ。この女も最高位αといっていい。もともと巨大企業であった九条家をさらに大きくした女だ。この程度の会合に出席するとは……
「あら、お久しぶりね。その節はどうも」
「いえ、ご無沙汰しております」
「お二人は、親しかったのですね、存じませんで……」
「ああ、随分前に、仕事でちょっと……」
軽く説明しようとする猛に九条は被せてきた
「ウチの孫の恩人なのよ。正確にはウチの孫の番の恩人」
「ええ!?英樹さんに番が出来たんですか、これは皆が荒れそうだ」
結婚相手として一番人気の英樹だ。周囲の者たちも聞き耳を立てている。
「そうなの。秋葉君っていうの。まだ、結婚はしてないのよ。でも、孫は本気なのよね。割り込む者には容赦ないわよ、あれでも最高位αなんだから」
やられた。こんな所で智則の名字を出された。これでは、優が智則を連れて逃げて行く先が狭まる。
公的な場所で番と、先代九条家当主が言う。家公認と言うことだ。英樹は智則を仕留める。
「はて?秋葉家、ですか?」
主催者が問う。当然だ。九条家に家柄で合う家で秋葉なんて存在していない。けれど、深澤と親しい者としてしらべれば、
「ああ、うちは、自由恋愛だから。お家の格よりも本人の希望よ。特に英樹は私を超えるαですから、その執着たるや……秋葉君以外は考えないわ」
「九条家に嫁げるなんて幸せな方ですね」
「ふふ…深澤さんはどう思われます?」
それは、優が考える智則の幸せではない。
「……私の番も孫を可愛がっているの。深澤さんより、番が大事。そうそう、香苗さんはお元気かしら。久々におあいしたいわね」
優のことはバレてる。香苗を取るか優を取るか、露骨に脅してきた。そして、息子よりも番を取るのが猛達高位αだ。
優はどうなってしまうのか。
そのあと、自分がどう過ごしたか、記憶はあやふやだ。
ただ、家に帰ってあとはひたすら香苗を抱き締めていた。
優を失えば香苗が悲しむ。けれど優に協力すれば先代当主は香苗を壊す。αの間には番に不可侵条約があるが、それは下位から上位に対してで、下位の番を守れるものではない。
「猛さん?どうしたの?」
首をふる。香苗が慰めるように頭を撫でてくれる。
香苗にいえば、香苗は自分の無事より優をとる。自分の子だ。
わかっている。
猛の行動は独善的だ。香苗の思いなど無視している。
それでも、これがαの愛し方だ。
優の愛し方を考える。βにならば譲って緩慢な自殺をする。β以外は許さないはずだ。自分より下位にならば、葬るだろう。では、上位ならば?
肌が粟立つ。
優は智則に自身を刻み込む。肉体的にも、心にも。智則に思いを告げて自殺する。他のαに全部を渡したりしない。心の一部だけでも奪って死のうとするだろう。
それだけは駄目だ。
そうなった時、九条家は優を許さない。見せしめに香苗を壊して猛も壊して皆壊す。
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