努力に勝るαなし

認認家族

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やっぱりαは……ー智則

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今更になって気がついたのだが、携帯はスピーカーになっていた。

智則の混乱も猛にきかれていたし、救急隊にも、智則にニンゲンと言い聞かせる声が、きこえていたはすだ。

………はずかしい。
β以外を化け物呼ばわりなんて、成人男性の言動じゃない。

隊員と猛のやりとりが聞こえてくる。

『倒れているのは私の息子です。おそらくはαのアナフィラキシーショックでしょう。かなり上位のαの警告を無視したから。』

優がストレッチャーに乗せられた。
「あ、俺も……」

ついていこうとしたのに膝がかくっと落ちた。
「あれ?」
立ち上がろうとしても膝が震える。

「無理しないで」

はるかがいう。だけど、運ばれようとしているのは優だ。幼馴染の優だ。心臓が止まっていた優だ。

「側に居たいんだ」

なのに、足が震える。足を支えようにも両腕は縛られたままで、なにもできやしない

「………ちょと待ってて」

クローゼットからとものりの下着とボトムスを取り出してきた。

「履きなさい。佐竹、こっちへ。佐竹はβよ」

佐竹とよばれた男は大きくて、一瞬体がこわばったがβと聞いて力が抜けた。

「秋葉くんが救急車に同乗するわ。今は歩けないから支えてあげて」


救急車に乗った。
隊員はやりにくそうだった。それはそうだろう。先程まで、救急隊員にすら化け物と怯えていた被害者が加害者と同じ自動車の中に乗るのだから。はるかをちらりと見る。はるかは頷いて智則に質問をし出した。

「貴方は何で、これに乗るの?」
「優は大切な幼馴染だから。優に何が起こったか知りたい。アナフィラキシーって?」

カタカタ震えながら聞く。
はるかが、まとめられた智則の両腕を痛ましそうにみた。リストバンド風の拘束器はパスコードでロック解除されるもののようだ。はるか達の装備では解除できず、そのままにしている。

「あなたを守る為に、あなたの恋人がマーキングしてくれてたの。手を出したらショック死するぞって上位から下位への警告マーキング。彼はそれを無視したから………どうする?恋人に連絡する?」

「……恋人?」

「うん。よっぽど不安だったのね」

「それって、調べたら出てくる?」

「ええ。でも、恋人にきいてみたら?」

曖昧に笑い返した。
恋人なんていない。マーキングなんてされた記憶はない。
自由のきかない手で、必死に調べる

『精液に警告フェロモンをのせ、番にマーキングする。主に己より下位のαに有効。下位の者が、番に挿入しないように腔内にすることが多い』

震えがとまらない。
優より上位は確実なのは九条、もしかしたら由希にぃだ。
ただ……。番のいる由希にぃがそんなことをするとは思えない。
となると、九条か?

昨日も、殿山と共に九条の家に行った。そこで眠くなって……。その時に?

九条といる時、寝落ちすることは多々あった。その時、自分は今みたいな事をされていたのか?

胃を急に掴みあげられた感じがした。
咄嗟に口を押さえた。
はるかが、ビニール袋を咄嗟に渡してくれた。
そのままそこに吐いた。
胃が空っぽになっても、吐き気はとまらなかった。
九条の精液が智則の中に入ってて、智則の意思とは別に優を攻撃をした?
アニサキスのようなモノが自分の中で蠢いているのを想像して、悍ましさのあまり嘔吐がとまらなかった。

やはりαはエイリアンだ。















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