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弓道部の先輩ー優
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智則がΩと歩いているのを見かけた
例の弓道部の先輩というやつだろう
一瞬、声をかけるのをためらった。そのΩに先に気が付かれた。クスリと笑われた
「智則、知り合い?」
Ωが智則の腕を引っ張りながら確認をしてきた。Ωを自分の背後に隠しながら智則が言う。
「幼馴染です」
そんなに警戒しなくても。優がαだから、突然のヒートを警戒しているのだ。大丈夫なのに。僕は智則以外を見たりはしない。Ωにも優の思いは伝わったのだろう。
「そう、紹介してよ。智則の幼馴染だったら親しくしておきたいし」
ヤツは智則に腕を絡ませながら言った。ヤツは智則にマーキングをしてやがる。深い関係ではないのと、Ωのマーキングはもともと攻撃性がない為、忌避剤程度の役割だが。
優越感に満ちた顔に吐き気がした
けれど、どうせこの男もいずれ知る。智則の愛情の向く先に自分がいないことを、智則にとってβ以外は異星人なのだから。
「幼稚園からの幼馴染の深澤優。優、こちらは僕の弓道部の先輩で奄美先輩」
智紀はオメガをエスコートするように道の端により言った。まるでお姫様を守る騎士のような智則だ
「優君か、よろしくね。でも、……しばらくの間だけだから」
奄美は先ほどまでの優越感に満ちた笑みではなく少し哀愁の漂う笑みを浮かべた。
奄美を調べた
あの笑いの意味がわかった。
やつは卒業後に後妻に入る。
それまでのアバンチュール的なものだろう。
淡い恋心とでも言えばいいのか。ただ、智則の様子も少しだけ違う気がする。
性的対象はβのみと言い切っていた智則だが、奄美は別なのか、幼い初恋とでもいえばいいのか、何か変だった
智則がβではなく他のバースに奪われていくという恐怖感と、けれど、オメガを受け入れられるならアルファーも受け入れられるようになるのではないかと言う期待とが入り交じった。
どちらにしろ奄美とは、未来はない。そこだけは安心している。
智則のインハイ出場が決まった
会場は四国になるとかで、公立高校ということもあり引率はなく智則のみが行くことになった。
なのに智則は奄美についてきてほしいと言った。旅費は出すからと。すぐるの応援は断ったのに
奄美は四国に行き、そしてインハイの会場で運命と出会った。
智則は言った
『やっぱり β の相手はβなんだな。』
寂しそうにでも受け入れている感じだった。
奄美は本能と理性の間で苦しんでいるように見えた。でも鈍い智則には伝わっていなかった。智則にはおそらくバースというもののフィルターがかかっているのだ。β同士の恋愛であればおそらくここまで鈍くはないのだろうに
幼い頃から言われ続けた『αの相手はΩのみ』が、ひよこの刷り込みのようになっているのだ。
しばらくして、智則にβの彼女ができた。
二人で歩いているところを見かけた。智紀は普通に笑っていた。優に時折見せる諦めたような笑いではなく、楽しんでいるというのを全身で表すようなそんな感じの笑い方だ。
「すごく気楽だ」
智則は今の状態にとても満足をしていた。智則の幸せはおそらくここにあるのだ。優の隣ではなく。
父からはそろそろ限界と言われていた、留学に関してのことだ。父の後を継ぐなら今のうちに海外留学をしておいた方がいいのは確かだ。
けれど、智則のそばを離れるということに心臓を引き裂かれるような痛みを感じる
けれど、このままここにいて、自分以外の人を選ぶ智則の隣にいて自分はまともに立っていられるのだろうか。
智紀を尊重することができるのだろうか。
迷いが迷いを生む。
ある日、智則に彼女を紹介したいと言われた
紹介された女は何の変哲もない女だった。
正直智則がこんな女を選ぶなんてとも思った。けれどβの女とはこんなものなのだ。智則と女のやり取りは生ぬるいものだった。『αは狡猾だ。言質をとらせるな』猛に言われ続けたからであろう、αとのやり取りにはどこかしら緊張感のある智則だけど、そのβとは素でやり取りをしていた。
智則の心休まる場所はここなのだ………
ほどなくして優は留学した
例の弓道部の先輩というやつだろう
一瞬、声をかけるのをためらった。そのΩに先に気が付かれた。クスリと笑われた
「智則、知り合い?」
Ωが智則の腕を引っ張りながら確認をしてきた。Ωを自分の背後に隠しながら智則が言う。
「幼馴染です」
そんなに警戒しなくても。優がαだから、突然のヒートを警戒しているのだ。大丈夫なのに。僕は智則以外を見たりはしない。Ωにも優の思いは伝わったのだろう。
「そう、紹介してよ。智則の幼馴染だったら親しくしておきたいし」
ヤツは智則に腕を絡ませながら言った。ヤツは智則にマーキングをしてやがる。深い関係ではないのと、Ωのマーキングはもともと攻撃性がない為、忌避剤程度の役割だが。
優越感に満ちた顔に吐き気がした
けれど、どうせこの男もいずれ知る。智則の愛情の向く先に自分がいないことを、智則にとってβ以外は異星人なのだから。
「幼稚園からの幼馴染の深澤優。優、こちらは僕の弓道部の先輩で奄美先輩」
智紀はオメガをエスコートするように道の端により言った。まるでお姫様を守る騎士のような智則だ
「優君か、よろしくね。でも、……しばらくの間だけだから」
奄美は先ほどまでの優越感に満ちた笑みではなく少し哀愁の漂う笑みを浮かべた。
奄美を調べた
あの笑いの意味がわかった。
やつは卒業後に後妻に入る。
それまでのアバンチュール的なものだろう。
淡い恋心とでも言えばいいのか。ただ、智則の様子も少しだけ違う気がする。
性的対象はβのみと言い切っていた智則だが、奄美は別なのか、幼い初恋とでもいえばいいのか、何か変だった
智則がβではなく他のバースに奪われていくという恐怖感と、けれど、オメガを受け入れられるならアルファーも受け入れられるようになるのではないかと言う期待とが入り交じった。
どちらにしろ奄美とは、未来はない。そこだけは安心している。
智則のインハイ出場が決まった
会場は四国になるとかで、公立高校ということもあり引率はなく智則のみが行くことになった。
なのに智則は奄美についてきてほしいと言った。旅費は出すからと。すぐるの応援は断ったのに
奄美は四国に行き、そしてインハイの会場で運命と出会った。
智則は言った
『やっぱり β の相手はβなんだな。』
寂しそうにでも受け入れている感じだった。
奄美は本能と理性の間で苦しんでいるように見えた。でも鈍い智則には伝わっていなかった。智則にはおそらくバースというもののフィルターがかかっているのだ。β同士の恋愛であればおそらくここまで鈍くはないのだろうに
幼い頃から言われ続けた『αの相手はΩのみ』が、ひよこの刷り込みのようになっているのだ。
しばらくして、智則にβの彼女ができた。
二人で歩いているところを見かけた。智紀は普通に笑っていた。優に時折見せる諦めたような笑いではなく、楽しんでいるというのを全身で表すようなそんな感じの笑い方だ。
「すごく気楽だ」
智則は今の状態にとても満足をしていた。智則の幸せはおそらくここにあるのだ。優の隣ではなく。
父からはそろそろ限界と言われていた、留学に関してのことだ。父の後を継ぐなら今のうちに海外留学をしておいた方がいいのは確かだ。
けれど、智則のそばを離れるということに心臓を引き裂かれるような痛みを感じる
けれど、このままここにいて、自分以外の人を選ぶ智則の隣にいて自分はまともに立っていられるのだろうか。
智紀を尊重することができるのだろうか。
迷いが迷いを生む。
ある日、智則に彼女を紹介したいと言われた
紹介された女は何の変哲もない女だった。
正直智則がこんな女を選ぶなんてとも思った。けれどβの女とはこんなものなのだ。智則と女のやり取りは生ぬるいものだった。『αは狡猾だ。言質をとらせるな』猛に言われ続けたからであろう、αとのやり取りにはどこかしら緊張感のある智則だけど、そのβとは素でやり取りをしていた。
智則の心休まる場所はここなのだ………
ほどなくして優は留学した
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