努力に勝るαなし

認認家族

文字の大きさ
上 下
62 / 178

弓道部の先輩ー優

しおりを挟む
智則がΩと歩いているのを見かけた
例の弓道部の先輩というやつだろう
一瞬、声をかけるのをためらった。そのΩに先に気が付かれた。クスリと笑われた

「智則、知り合い?」
 Ωが智則の腕を引っ張りながら確認をしてきた。Ωを自分の背後に隠しながら智則が言う。

「幼馴染です」

そんなに警戒しなくても。優がαだから、突然のヒートを警戒しているのだ。大丈夫なのに。僕は智則以外を見たりはしない。Ωにも優の思いは伝わったのだろう。

「そう、紹介してよ。智則のだったら親しくしておきたいし」
ヤツは智則に腕を絡ませながら言った。ヤツは智則にマーキングをしてやがる。深い関係ではないのと、Ωのマーキングはもともと攻撃性がない為、忌避剤程度の役割だが。
優越感に満ちた顔に吐き気がした

けれど、どうせこの男もいずれ知る。智則の愛情の向く先に自分がいないことを、智則にとってβ以外は異星人なのだから。

「幼稚園からの幼馴染の深澤優。優、こちらは僕の弓道部の先輩で奄美先輩」

智紀はオメガをエスコートするように道の端により言った。まるでお姫様を守る騎士のような智則だ

「優君か、よろしくね。でも、……しばらくの間だけだから」

奄美は先ほどまでの優越感に満ちた笑みではなく少し哀愁の漂う笑みを浮かべた。


奄美を調べた
あの笑いの意味がわかった。
やつは卒業後に後妻に入る。
それまでのアバンチュール的なものだろう。
淡い恋心とでも言えばいいのか。ただ、智則の様子も少しだけ違う気がする。

性的対象はβのみと言い切っていた智則だが、奄美は別なのか、幼い初恋とでもいえばいいのか、何か変だった

智則がβではなく他のバースに奪われていくという恐怖感と、けれど、オメガを受け入れられるならアルファーも受け入れられるようになるのではないかと言う期待とが入り交じった。
どちらにしろ奄美とは、未来はない。そこだけは安心している。


智則のインハイ出場が決まった
会場は四国になるとかで、公立高校ということもあり引率はなく智則のみが行くことになった。

なのに智則は奄美についてきてほしいと言った。旅費は出すからと。すぐるの応援は断ったのに

奄美は四国に行き、そしてインハイの会場で運命と出会った。

智則は言った
『やっぱり β の相手はβなんだな。』
寂しそうにでも受け入れている感じだった。

奄美は本能と理性の間で苦しんでいるように見えた。でも鈍い智則には伝わっていなかった。智則にはおそらくバースというもののフィルターがかかっているのだ。β同士の恋愛であればおそらくここまで鈍くはないのだろうに
幼い頃から言われ続けた『αの相手はΩのみ』が、ひよこの刷り込みのようになっているのだ。

しばらくして、智則にβの彼女ができた。
二人で歩いているところを見かけた。智紀は普通に笑っていた。優に時折見せる諦めたような笑いではなく、楽しんでいるというのを全身で表すようなそんな感じの笑い方だ。

「すごく気楽だ」

智則は今の状態にとても満足をしていた。智則の幸せはおそらくここにあるのだ。優の隣ではなく。

父からはそろそろ限界と言われていた、留学に関してのことだ。父の後を継ぐなら今のうちに海外留学をしておいた方がいいのは確かだ。

けれど、智則のそばを離れるということに心臓を引き裂かれるような痛みを感じる

けれど、このままここにいて、自分以外の人を選ぶ智則の隣にいて自分はまともに立っていられるのだろうか。
智紀を尊重することができるのだろうか。

迷いが迷いを生む。

ある日、智則に彼女を紹介したいと言われた
紹介された女は何の変哲もない女だった。
正直智則がこんな女を選ぶなんてとも思った。けれどβの女とはこんなものなのだ。智則と女のやり取りは生ぬるいものだった。『αは狡猾だ。言質をとらせるな』猛に言われ続けたからであろう、αとのやり取りにはどこかしら緊張感のある智則だけど、そのβとは素でやり取りをしていた。

智則の心休まる場所はここなのだ………



ほどなくして優は留学した



















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

処理中です...