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αは最強ではない?ー殿山
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「おや、コーヒーが冷めますよ」
達也がリビングに入ってきた。
絶対お前、様子見してただろ。流れ弾にあいたくなくて。
まあ、この針のむしろでいるよりはましだから乗るけど
「ありがとうございます。喉が乾いたから助かります」
とりあえず、ソファーに座り直す。
秋葉も座ろうとしてきたので軽く背中を蹴って九条様の方に倒れこませた。実際には軽くバランスを崩した所を九条様が手を引っ張って抱え込んだってところだが。
九条様は抱き込んだ秋葉の項に顔を近づけてスンスン嗅いでいる。恐らく、今は精神的にかなり不安定になっていて、秋葉の匂いが安定剤なのだろう。
上位になればなるほど、肉体的にも精神的にも強く強靭になると言われるαだが、反比例するように番には脆い。番を失うと死んでしまう。それならまだしも、逆恨み的な復讐をするαもいる。αの中でも能力値の高いものの逆恨みなんて碌な事にはならない。過去の歴史から、どんな状況であれ高位αの番様には手を出さない、という不文律がうまれた。
高位αの逆恨みは枚挙にいとまがない。
マフィアの抗争があって、その流れ弾に当たって番様が意識不明になったらしい。αはそのマフィアの双方を潰した。そのマフィアの存在を放置してきた国政者、マフィアの衣食住に関わった者(ガムを一個売っただけのコンビニのアルバイトまで)を全て殺した。番の目を覚ませない医者などいらない、薬も作れないものもいらない……こうして最上位αによる大量虐殺が行われた、といった、ぶっ飛びすぎの三段論法で国が滅びたり、戦争が始まったりと、人災に暇がないのだ。
そして、残念な事に、少しだけど、それに理解を示せてしまうのだ。αの本能というものだ、と。高位になればもう、理解どころか共感しかないだろう。
抵抗する秋葉に
「俺たちは匂いが好きなの。暫くは諦めろ」
というと、ため息と共に大人しくなった。
岡田はソファーにぐったりと身を沈めている。唐澤は……秋葉達の方を見ない。顔を伏せて、握った拳が白くなっていた。
ヤバイな。早く散会したいが、この状況だと秋葉がどう出るか。先程の地獄絵図は懲り懲りだ
やがて、九条様は落ち着きを取り戻した
「殿山君、岡田先輩、申し訳ありません」
と、謝ってこられた。
俺は咄嗟に秋葉の口をタオルで押さえた。もう、ファインプレーだろ。直に秋葉の口に触ったらやられるし、放置してたら、多分秋葉は『由希にぃにも謝れ』という核弾頭をぶち込む。全身ビキビキなのに、俺、頑張った。
ホント、このまま失神したい……
「いや、こちらの方が悪かったので」
不機嫌オーラを残したままの九条様に岡田がいう。
「え?いえ、先輩方は悪くないですよ。九条が何か急に機嫌が悪くなって……ってか、九条その態度直せ。先輩方に失礼だろ」
いや、秋葉、それは本能的なものだからな、難しいんだよ。敵が自分の巣の中にいて平然とできっか。
威圧を緩めない九条様に諦めたのか、
「先輩方、今日はこちらが申し込んだのに、申し訳ありません。駅まで送らせていただきますね。……外でお待ちいただけますか」
二人を追い出したあと、秋葉はそのまま自分の荷物を取りに行った
「智則っ」
九条様が秋葉に手を伸ばす。おそらくは後ろから抱きしめようとしたのであろうが、九条様は秋葉にそのまま背負い投げをされた。
うおい、すげぇな、αを、しかも最上位αを背負い投げ飛げするβって、初めて見たぞ。
「今日は俺も帰る。セッティングしてくれたのは有り難いが、こちらからお願いしたのにあんな態度をとるやつを、俺は、受け入れられない。」
「智則、待ってっ」
九条様が手を伸ばすが、秋葉はそれを無視してそのまま背を向けた。
秋葉っ
それはまずいっ
最上位αの執着をそんな風にシャットダウンしたらっ
案の定、九条様が威圧を放ってきた。先程のαを攻撃する圧とは違う、思い通りにならない人間を屈服させようという圧だ。今、何かを命じられたら、YESとしかいえないだろう。
αの殿山でもきついのだから、βの智則は……と思いきや、
「ウザ」
とだけ言い捨てて出て行った。
………は?あいつ、なにもん?αを投げるし威圧は効かないし。いや、ウザっと言っていた以上、届いてはいる、はず……。
「英樹さま」
達也がやってきた。
九条様は、秋葉に去って行かれた事によるショックで、無表情のままに涙を流している。内面は大荒れだろう。
達也が持ってきたブランケットで九条様を包み込んだ。
……それ、秋葉がよく使っているやつだ。九条様は、ブランケットを握りこみ顔を埋めていた。
達也に顎でしゃくられた『秋葉の様子を見てこい』と。
はいはい。
こんな九条様を見たとあっては、後日抹殺されかねん。
しかし…
高位αってのも、難儀なもんだな。
達也がリビングに入ってきた。
絶対お前、様子見してただろ。流れ弾にあいたくなくて。
まあ、この針のむしろでいるよりはましだから乗るけど
「ありがとうございます。喉が乾いたから助かります」
とりあえず、ソファーに座り直す。
秋葉も座ろうとしてきたので軽く背中を蹴って九条様の方に倒れこませた。実際には軽くバランスを崩した所を九条様が手を引っ張って抱え込んだってところだが。
九条様は抱き込んだ秋葉の項に顔を近づけてスンスン嗅いでいる。恐らく、今は精神的にかなり不安定になっていて、秋葉の匂いが安定剤なのだろう。
上位になればなるほど、肉体的にも精神的にも強く強靭になると言われるαだが、反比例するように番には脆い。番を失うと死んでしまう。それならまだしも、逆恨み的な復讐をするαもいる。αの中でも能力値の高いものの逆恨みなんて碌な事にはならない。過去の歴史から、どんな状況であれ高位αの番様には手を出さない、という不文律がうまれた。
高位αの逆恨みは枚挙にいとまがない。
マフィアの抗争があって、その流れ弾に当たって番様が意識不明になったらしい。αはそのマフィアの双方を潰した。そのマフィアの存在を放置してきた国政者、マフィアの衣食住に関わった者(ガムを一個売っただけのコンビニのアルバイトまで)を全て殺した。番の目を覚ませない医者などいらない、薬も作れないものもいらない……こうして最上位αによる大量虐殺が行われた、といった、ぶっ飛びすぎの三段論法で国が滅びたり、戦争が始まったりと、人災に暇がないのだ。
そして、残念な事に、少しだけど、それに理解を示せてしまうのだ。αの本能というものだ、と。高位になればもう、理解どころか共感しかないだろう。
抵抗する秋葉に
「俺たちは匂いが好きなの。暫くは諦めろ」
というと、ため息と共に大人しくなった。
岡田はソファーにぐったりと身を沈めている。唐澤は……秋葉達の方を見ない。顔を伏せて、握った拳が白くなっていた。
ヤバイな。早く散会したいが、この状況だと秋葉がどう出るか。先程の地獄絵図は懲り懲りだ
やがて、九条様は落ち着きを取り戻した
「殿山君、岡田先輩、申し訳ありません」
と、謝ってこられた。
俺は咄嗟に秋葉の口をタオルで押さえた。もう、ファインプレーだろ。直に秋葉の口に触ったらやられるし、放置してたら、多分秋葉は『由希にぃにも謝れ』という核弾頭をぶち込む。全身ビキビキなのに、俺、頑張った。
ホント、このまま失神したい……
「いや、こちらの方が悪かったので」
不機嫌オーラを残したままの九条様に岡田がいう。
「え?いえ、先輩方は悪くないですよ。九条が何か急に機嫌が悪くなって……ってか、九条その態度直せ。先輩方に失礼だろ」
いや、秋葉、それは本能的なものだからな、難しいんだよ。敵が自分の巣の中にいて平然とできっか。
威圧を緩めない九条様に諦めたのか、
「先輩方、今日はこちらが申し込んだのに、申し訳ありません。駅まで送らせていただきますね。……外でお待ちいただけますか」
二人を追い出したあと、秋葉はそのまま自分の荷物を取りに行った
「智則っ」
九条様が秋葉に手を伸ばす。おそらくは後ろから抱きしめようとしたのであろうが、九条様は秋葉にそのまま背負い投げをされた。
うおい、すげぇな、αを、しかも最上位αを背負い投げ飛げするβって、初めて見たぞ。
「今日は俺も帰る。セッティングしてくれたのは有り難いが、こちらからお願いしたのにあんな態度をとるやつを、俺は、受け入れられない。」
「智則、待ってっ」
九条様が手を伸ばすが、秋葉はそれを無視してそのまま背を向けた。
秋葉っ
それはまずいっ
最上位αの執着をそんな風にシャットダウンしたらっ
案の定、九条様が威圧を放ってきた。先程のαを攻撃する圧とは違う、思い通りにならない人間を屈服させようという圧だ。今、何かを命じられたら、YESとしかいえないだろう。
αの殿山でもきついのだから、βの智則は……と思いきや、
「ウザ」
とだけ言い捨てて出て行った。
………は?あいつ、なにもん?αを投げるし威圧は効かないし。いや、ウザっと言っていた以上、届いてはいる、はず……。
「英樹さま」
達也がやってきた。
九条様は、秋葉に去って行かれた事によるショックで、無表情のままに涙を流している。内面は大荒れだろう。
達也が持ってきたブランケットで九条様を包み込んだ。
……それ、秋葉がよく使っているやつだ。九条様は、ブランケットを握りこみ顔を埋めていた。
達也に顎でしゃくられた『秋葉の様子を見てこい』と。
はいはい。
こんな九条様を見たとあっては、後日抹殺されかねん。
しかし…
高位αってのも、難儀なもんだな。
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