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猛に師事してー智則
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猛に師事するようになって、3ヶ月がすぎた。
当初、ガチガチに緊張していた智則も慣れてきて、体を思うように動かせるようになってきた。
「智則っ手首をもっと柔らかくっスナップを効かせろ」
「はい」
優の間合いに入った。一瞬、優に隙が生まれた。反動を利用してそのまま投げ飛ばした。初めて、人を投げた。意外にも喜びとかはなかった。
「よし。智則は、次の段階だな。相手が軽傷ですむ攻撃の会得」
そう言われて、そうか、と思った。自分は人を怪我させる術をえたのだ。一馬のような化け物になるのだろうか?人を傷つける事で笑う様な?
優は怪我をしなかった。だから、自分は笑ってないのか?
痛がっていたら、笑っていたのか?
「優はあらゆる意味で猛省しろ」
「はぁい。イテテ」
「優っ怪我したの!?」
「あ~、いや、ちょっと打っただけ、大した事ないから、安心しろ」
「そ、そう。」
ホッとした。優が大きな怪我をしてなくて。痛がる優を見て喜ぶ自分でなくて。
そして、嫌悪した。怪我をした優の心配より、自分の心配か。
「……智則、今日は泊まっていけ」
「はい」
夕食後、猛が部屋にきた。
「どうした?」
不安を口にした。
「俺も、あんなふうになるのでしょうか。怖い」
「確かに、人間には、嗜虐心というもがある。智則がそうならないとは限らない。けれど、智則は、優の怪我を心配した。お前は気がついてなかったが、優が痛がっていた時、恐怖に震えていたよ。今の智則のままなら、大丈夫だ」
「そう、でしようか。そうならいいな」
翌朝、優が怯えた目で、智則を見た。
「??」
「智則、俺が怖くないの?てっきり、怯えられるかと」
「??なんで、俺が優を怖がるの?」
「………それはそれで落ち込む」
猛が笑いながら、優の背中を叩いた。
「頑張れ、性少年」
それから、一年が過ぎた。
たまたま、一馬と二人きりなった。そうならないように、両親は家政婦さんを複数雇っていたのだが、偶然が重なり、誰も来れなくなった。
一馬は、苛ついていた。
その雰囲気に智則は怯えカタカタと震え出した。それが、一馬の嗜虐心に火を付けた。
にやりと嗤い、殴りかかろうと手を伸ばした。智則の悲鳴が心地良く響いた。それなのに、何故か、床に転がっていた。背中を強かに打った。
智則も呆然としていた。
二人共理解できないまま、再び一馬が攻撃してきた。やはり智則は悲鳴をあげ、そして、一馬も悲鳴をあげた。一馬の手を捻りあげていた。
猛が悲鳴に飛び込んできた。たまたま悠一から、家政婦が来ない事を聞いて心配で様子見にきてくれたのだ。
状況を大体察した猛はとりあえず、二人を離した
「一馬君、智則にいうことは?」
「俺が、傷つけられたんだ!」
「智則の悲鳴が聞こえた。先に手をあげたのは君だね。それでも、言うことがないの?」
「俺が怪我したんだ!過剰防衛だ」
「うん、でも智則が抵抗しなかったらどうなってた?小6と小3の体躯差で、また、骨を折るの。いや、今度は逆か、証明されたもんね」
「……」
「智則、一馬君をもう一度正面から見なさい」
ホネ、と言われてまた怖くなって智則は下を向いていたが、猛に言われて顔をあげた。
……あれ?
一馬はこんな顔だったっけ?
もっと……
「とりあえず、悠一さんには連絡をしておく。それと、智則、今日はウチに泊まれ」
食事を終えて、客間のベッドに入ると、ノックが響いた
ドアを開けると猛だった。
「智則、ドアの鍵を閉めろといっただろ」
「だって、ここは家じゃない。安心だもん」
「う~ん。安心安全とは言えないんだが、まだ、智則には理解できないかな」
「さて、俺はお前の悲鳴を聞いた………が、さっき、一馬君を見て、智則、お前は何を思った?
怖かったか?」
首を振った。
「分からない、さっきの兄さんは怖くなかった」
「智則が今まで怖がっていたのは、αに特有の嗜虐心だ。人間、誰にでもあるものだが、αは特に強くて、それがフェロモン……体臭になって出る。一馬君は、暴力を振るおうとしていたから、智則は怖くなった。そして、転がされた一馬君は、逆に智則に怯えたから、智則は怖くなくなった。嗜虐心って、自分より弱い者へと向かうからな」
「俺は、父さんも母さんも怖いよ。二人は俺を傷つけたかったってこと?」
「いいや、智則は自分に向けられたものだけに反応しているわけじゃない。αは狩猟本能が強い。狩猟本能には嗜虐心も含まれる。それを抑え込めるαとそうでないαがいる。一馬君は、より本能に弱い」
「じや、なに?足を折ったのも、由希兄が俺の腕を折ろうとしたのも!?全部αの本能だと!?」
「………そうだ。だが、智則、お前が、それを
怖がる必要があるのか?」
「え?」
「お前は、αを退けられる力がある。お前に攻撃も出来ないものをお前より弱いものを怖がる意味は?」
「………」
「チワワみたいなもんだと思え。遠くから吠える。噛み付いてきたところで、躾りゃ一発で大人しくなる」
当初、ガチガチに緊張していた智則も慣れてきて、体を思うように動かせるようになってきた。
「智則っ手首をもっと柔らかくっスナップを効かせろ」
「はい」
優の間合いに入った。一瞬、優に隙が生まれた。反動を利用してそのまま投げ飛ばした。初めて、人を投げた。意外にも喜びとかはなかった。
「よし。智則は、次の段階だな。相手が軽傷ですむ攻撃の会得」
そう言われて、そうか、と思った。自分は人を怪我させる術をえたのだ。一馬のような化け物になるのだろうか?人を傷つける事で笑う様な?
優は怪我をしなかった。だから、自分は笑ってないのか?
痛がっていたら、笑っていたのか?
「優はあらゆる意味で猛省しろ」
「はぁい。イテテ」
「優っ怪我したの!?」
「あ~、いや、ちょっと打っただけ、大した事ないから、安心しろ」
「そ、そう。」
ホッとした。優が大きな怪我をしてなくて。痛がる優を見て喜ぶ自分でなくて。
そして、嫌悪した。怪我をした優の心配より、自分の心配か。
「……智則、今日は泊まっていけ」
「はい」
夕食後、猛が部屋にきた。
「どうした?」
不安を口にした。
「俺も、あんなふうになるのでしょうか。怖い」
「確かに、人間には、嗜虐心というもがある。智則がそうならないとは限らない。けれど、智則は、優の怪我を心配した。お前は気がついてなかったが、優が痛がっていた時、恐怖に震えていたよ。今の智則のままなら、大丈夫だ」
「そう、でしようか。そうならいいな」
翌朝、優が怯えた目で、智則を見た。
「??」
「智則、俺が怖くないの?てっきり、怯えられるかと」
「??なんで、俺が優を怖がるの?」
「………それはそれで落ち込む」
猛が笑いながら、優の背中を叩いた。
「頑張れ、性少年」
それから、一年が過ぎた。
たまたま、一馬と二人きりなった。そうならないように、両親は家政婦さんを複数雇っていたのだが、偶然が重なり、誰も来れなくなった。
一馬は、苛ついていた。
その雰囲気に智則は怯えカタカタと震え出した。それが、一馬の嗜虐心に火を付けた。
にやりと嗤い、殴りかかろうと手を伸ばした。智則の悲鳴が心地良く響いた。それなのに、何故か、床に転がっていた。背中を強かに打った。
智則も呆然としていた。
二人共理解できないまま、再び一馬が攻撃してきた。やはり智則は悲鳴をあげ、そして、一馬も悲鳴をあげた。一馬の手を捻りあげていた。
猛が悲鳴に飛び込んできた。たまたま悠一から、家政婦が来ない事を聞いて心配で様子見にきてくれたのだ。
状況を大体察した猛はとりあえず、二人を離した
「一馬君、智則にいうことは?」
「俺が、傷つけられたんだ!」
「智則の悲鳴が聞こえた。先に手をあげたのは君だね。それでも、言うことがないの?」
「俺が怪我したんだ!過剰防衛だ」
「うん、でも智則が抵抗しなかったらどうなってた?小6と小3の体躯差で、また、骨を折るの。いや、今度は逆か、証明されたもんね」
「……」
「智則、一馬君をもう一度正面から見なさい」
ホネ、と言われてまた怖くなって智則は下を向いていたが、猛に言われて顔をあげた。
……あれ?
一馬はこんな顔だったっけ?
もっと……
「とりあえず、悠一さんには連絡をしておく。それと、智則、今日はウチに泊まれ」
食事を終えて、客間のベッドに入ると、ノックが響いた
ドアを開けると猛だった。
「智則、ドアの鍵を閉めろといっただろ」
「だって、ここは家じゃない。安心だもん」
「う~ん。安心安全とは言えないんだが、まだ、智則には理解できないかな」
「さて、俺はお前の悲鳴を聞いた………が、さっき、一馬君を見て、智則、お前は何を思った?
怖かったか?」
首を振った。
「分からない、さっきの兄さんは怖くなかった」
「智則が今まで怖がっていたのは、αに特有の嗜虐心だ。人間、誰にでもあるものだが、αは特に強くて、それがフェロモン……体臭になって出る。一馬君は、暴力を振るおうとしていたから、智則は怖くなった。そして、転がされた一馬君は、逆に智則に怯えたから、智則は怖くなくなった。嗜虐心って、自分より弱い者へと向かうからな」
「俺は、父さんも母さんも怖いよ。二人は俺を傷つけたかったってこと?」
「いいや、智則は自分に向けられたものだけに反応しているわけじゃない。αは狩猟本能が強い。狩猟本能には嗜虐心も含まれる。それを抑え込めるαとそうでないαがいる。一馬君は、より本能に弱い」
「じや、なに?足を折ったのも、由希兄が俺の腕を折ろうとしたのも!?全部αの本能だと!?」
「………そうだ。だが、智則、お前が、それを
怖がる必要があるのか?」
「え?」
「お前は、αを退けられる力がある。お前に攻撃も出来ないものをお前より弱いものを怖がる意味は?」
「………」
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