努力に勝るαなし

認認家族

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幼馴染みの父親ー智則

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結局あれから一月ほど優の家に泊まった。

優の父親の猛はやはり智紀を安心させる雰囲気があって、父親以上に懐いた。

家に帰るとなった時に智則はこっそり泣いた。ちゃんと泣けるような子供であったなら、保護施設なりに行けたであろうに、智則の負けん気の強さが、ケースワーカーの誤診を招いた

家に帰り、両親や一馬に合う度にピクリと緊張した。悲鳴を上げそうになる自分を何とか抑え込む。恐怖の余りに震えそうになる。そんな智則を両親も、もてあましていた。

怯えと戦っていた智則の救いになっていたのが、猛だ。

優が投げ飛ばした日、周りがギャイギャイ五月蠅かったときの、鶴の一声。あんなふうに、手を上げなくても周りを圧倒させる強さ、それに憧れた。

自分も、猛のように強くなれば、こんなに怯える生活を、優の陰にかくれる生活をしなくなれるのだろうか?

足が治って、猛の朝のメニューを真似た。と言っても、智則が観察出来た分だけだが。それでも、小学生の自分に出来る量ではなかった。学校を休んででも続けた。学校を休む事に両親は何も言わなかった。猛のメニューを真似る前は、部屋に鍵をかけて毛布にくるまって床で丸まって寝ていた智則が、ベッドに倒れ込むように寝るようになった、それだけでも、安堵したのかもしれない。


智則は兎に角、猛のメニューを真似し続けた。
いつか、猛のようになって、強さを。αを見るだけで恐怖に叫び出しそうになる自分と決別したい。

猛に師事する、そんなだいそれたことを願ったりはしない。自分の分は弁えている。

ただただ、真似をした。



ある日、優に、一緒に修行しようと言われた。

猛叔父さんが、家に挨拶に来てくれた。
『智則君に教えたい』と。『智則君の強さに惹かれた』と。

それからは時々、優の家に泊まった。優の家は、柔らかくて、体を酷使しなくてもベッドでゆっくり眠れた。

質の良い睡眠と悪い睡眠の差は鍛錬中に露骨に現れる。粗方を察した猛は、月の半分位を深澤家に泊めた。

智則にとって、安心出来る寝場所をくれた猛は、ヒーローだ。




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