努力に勝るαなし

認認家族

文字の大きさ
上 下
21 / 178

バースー智則

しおりを挟む
俺には大切な幼馴染みがいる。

THE α

という、感じの幼馴染みだ。
実際上位のそれもかなり上のα様だ。

小さい頃は、α様な優に敵わないのが悔しくて仕方なかった。

今はもう、遺伝子設計が違うのだからと諦めたけど。



優とは、幼稚園からの付き合いだ。
智則がβと判明しても、態度を変えなかった数少ない友人だ。

βと分かって離れていった奴はどうでもいい、ただ、βを下に見てからかってくる奴らがウザかった。
無視をすればβのくせに生意気といい、返答すれば慇懃無礼だという。正直、面倒くせえ。
幼稚園の頃に自分に告白した黒歴史なんて人に言いふらしたりしないから、こっちの存在なんて忘れろ。そっちが構わなきゃこっちも忘れられるんだよ。まさか、黒歴史を覚えておいてほしいとかっていう、マゾか?

基本的に負けん気の強い智則が泣いたりすることはなかった。
自分で言い出した以上は、父に泣き言をいうわけにもいかなかった。
ただ、『お前は正しいよ』『智則が一緒の学校で俺は嬉しい』『あんな馬鹿どもは無視してりゃいいんだよ』『βだって判明する一分前と一分後で智則の何がかわったの?変わってない』そんな風に言い続けてくれた優に愚痴をこぼしていた。

特に兄の一馬からの嫌がらせはしんどかった。
「お前がβだったから!俺は被害者だ」
と、両親のいない日に腹を蹴ってくる。

ある日の事だった。
両親から夜遅くなると、連絡があった。
両親がいないのは久々で、ストレスを溜め込んだ兄の八つ当たりがひどくなるのは予測がついた。

優の所へ行くか?

さっさと動かなかったことが敗因だろう。

一馬がご丁寧にも靴を履いて智則の部屋にやってきた。

智則のお腹を何度も蹴り上げた一馬は、確かに嗤っていた。変なニオイがした。幼い智則にはそれが、精液とαのフェロモンが混じったニオイとはわからなかった。反応が鈍くなってきた智則につまらなさを覚えた一馬は覚えたてのプロレス技をかけた。余りの痛みに智則は絶叫した。近隣に響き渡った。焦った一馬は、智則の口を押さえようとしたが歯にあたり、噛まれるのではという恐怖から、首をしめるほうに切り替えた。

このあたりは、高級住宅街で、その為、近所に派出所がある。住民の防犯意識も高い。
薄れゆく意識の中、警官が智則の部屋に入ってきたのが見えた。。

目が覚めた時、知らないベッドの上だった。全身が痛くて、おそらくここが病院なのだと思った。
知らない女性がドアの前に立っていた。

「あの、僕は……」

なんでここに?そう聞こうとして、こえが出ない事に気が付いた。

「無理に話さなくていいよ。喉をやられているから…。起き上がる必要もないわ。私は警察です」

ああ、あの時、入ってきたのは警察だったのか。

「いくつか質問するわね。ハイなら親指をたてて、いいえならグーで。答えたくないならパーで。何があったかは覚えている?」

親指を立てる

「貴方のその状態はお兄さんのせい?」

どうせ、バレてるしな。親指をたてる。

「貴方には昨日以外の打撲痕があった。以前からお兄さんに?」

答えるのに躊躇いがある。
何が正解なのか、答えることで、なにが起きる?答えない事で何がおきる?

指を動かせないでいた。

「そっか、そうだよね……」

ノックの音が響いた。男が入ってきた。思わず体が逃げようとし、痛みにうめいた。

智則のそれを見て、男は出ていった。

「あ、すみません、俺……」

「気にしなくていいの。それより、声、無理しないで。」


また、ノックされ、今度は女性が入ってきた。
またも、智則は後ずさり痛みにうめいた。

自分はこんなに人が苦手だったか?
初めからいた婦人警官は、平気だったのに?
女性が智則に手をのばした時、智則は耐えきれずに悲鳴をあげ、そして意識を失った。

3日後、智則の元に両親が面会にきた。だが、やはり智則は恐怖を覚えた。

婦人警官はその様子を見ていた。両親から智則への暴力は確認されていない。だが………。
暴力にあったΩはフェロモンを出しているα、つまり、精通後のαを反射的に忌避する。智則には同じ症状が出ていた。確認のため精通していないアルファーのと智則を合わせたが、智則がその子供α等を怖がることはなかった。
ならば、退院後に自宅へ返す事は難しい。智則は特例で、暫く病院から学校に通う様になった。無論、智則にアルファ恐怖症のことは伝えていない。
また今回の言葉兄弟喧嘩として処理された。
一馬がまだ小学生であること、一馬の精神科への通院、ヘルパーを複数人雇い、一馬と智則が二人だけになる瞬間を作らない事を約束したからだ。


久しぶりに学校に行くと優が飛んできた。
『どうしたんだよ』と聞かれたが兄弟喧嘩をしたとだけ答えた。答えながら自分が優まで怖がるような人間になっていないことに智則はホッとした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。 (作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

悪役令息(?)に転生したけど攻略対象のイケメンたちに××されるって嘘でしょ!?

紡月しおん
BL
美園 律花。 それはとあるBL乙女ゲーム『紅き薔薇は漆黒に染まりて』の悪役令息の名である。 通称:アカソマ(紅染)。 この世界は魔法のあるファンタジーな世界のとある学園を舞台に5人のイケメンを主人公が攻略していくゲームだ。 その中で律花は単純に主人公と攻略イケメンの"当て馬"として動くが主人公を虐めるような悪いことをする訳では無い。ただ単に主人公と攻略イケメンの間をもやもやさせる役だ。何故悪役令息と呼ばれるのかは彼がビッチ気質故だ。 なのにー。 「おい。手前ぇ、千秋を犯ったってのはマジか」 「オレの千秋に手を出したの?ねぇ」 な、なんで······!! ✤✤✤✤✤ ✤✤✤✤✤ ✻ 暴力/残酷描写/エロ(?) 等有り がっつり性描写初めての作品です(¨;) 拙い文章と乏しい想像力で妄想の限りに書いたので、読者の皆様には生暖かい目で見て頂けると有難いですm(*_ _)m その他付け予定タグ ※タグ付けきれないのでこちらで紹介させて頂きます。 ・ヤンデレ(?)/メンヘラ(?)/サイコパス(?) ・異世界転生/逆行転生 ・ハッピーエンド予定 11/17 〜 本編ややシリアス入ります。 攻略対象達のヤンデレ注意です。 ※甘々溺愛イチャラブ生活&学園イベント(ヤンデレ付き)はまだまだ遠いです。暫く暗い話が続く予定です。 ※当作はハッピーエンドを予定しています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

高スペックな義兄弟が出来たのですが。

ぱふぱふ
BL
▷ 高 ス ペ ッ ク な 義 兄 弟 が 現 れ た ! どうする? →逃げる →諦めて捕まる →引きこもる◀ ▷ 鍵 が か か っ て い る !! どうする? →逃げる ◀ →諦めて捕まる ▷ 回 り こ ま れ て し ま っ た!! ・・・無理ゲーじゃね? ──────────────────── ▫ファンタジー要素を含みます。 ▫主人公の周りがヤバいです。 ▫過激な表現(R18に引っかかりそうなもの)がある場合は※をつけます。 ▫本番の時、又はそれに近い行為の時は※※をつけます。 ▫おかしな表現などございましたらそっと目を瞑ってやってください。 ▫話は完全に作者の趣味です。

処理中です...