努力に勝るαなし

認認家族

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あの試合の後悔はいつまでも……ー優

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目指さす大学が大学なので私立高校に行くと思われて智則だったが、公立高校に行った。

共に通えると思っていた優は、猛抗議した。
「開城高校受かったんだよ。なんで公立なんか」
「う~ん。父さんとの交換条件なんだよ」
「なんのっ!」
「優にしか言ってないけど、俺、投資色々やってんじゃん?でも、βの中坊なんか、信用ないから父さん名義でやってて、父さんが名前貸す条件に、公立を指定してきたからさ」

『βの中坊』
そうだ。

αの中には既に起業している者もそれなりにいる。でも、βは稀だ。
だからといって……

「だからって、智則が開城高校を諦めるなんて違うっ俺が親父さんに抗議してやる!」

「……優。あれは、契約だ。色々考えた上でサインした。それを破るような人間に俺はなりたくない」

智則はもう、決めている。優が何を言ったところで考えは変えないだろう。

「……分かった」


智則のいない日を狙って、智則の父親の悠一に会いにいった。
抗議したところで、智則自身が約束を違えるつもりもないのだから、そんな無意味なことをするつもりはない
ただ知りたいのだ、なぜ智則を公立高校に行かせるのか
お金が不足しているようにも見えない。何がしかの理由があるのだろう

「小学校中学校と智則に選ばせた。結果、智則は幸せだったか?嫌がらせを受けていることも知っていた。だから転校の提案もした。だが、転校を強いしたりはしなかった。本人が転校したかったのであれば別だが、智紀との約束を守った。私は息子達に約束を守る人間になれと教育してきた。その私自らが智則との約束を破るわけにはいくまい」

『契約を破る人間にはなりたくない』智則はそう言っていた。この親にしてこの子ありと言うか…
ただ、意外にもこの父親も智則のことを見ていたんだなあと思わされた。長男の一馬にしか興味がないものだと思っていた

「智則は約束は守るけれど一馬さんにはそんな誠実なイメージないけどな」

「一馬は一馬でちゃんと約束は守るよ。私は誠実であれとは言っていない。というより守れない契約はするなと言ってあるだけだ」

あまり好きになれない考え方だ

「私が智則との約束を守った結果、智則は楽しい学生生活を送れたか? 世間的には大多数であるβがあの空間では少数派だ。この辺りでβはあまり生まれないし、生まれたとしても裕福な家庭が多いから、その子はイジメられてると分かっている公立よりも私立に通わせられる。そこなら、βが普通なのだ。智則が希望する帝都大学もそしておそらく智紀が進む先も、異常にαが多い世界となる。ならば高校生のうちだけでもβが大多数で、自分を卑下する必要もない世間一般を味あわせてやりたい、そう思ったんだよ」

「………」

「智紀が名義貸しを依頼してきた時、渡りに船だと思ったんだよ。智則は合理的だ。合理的に判断するのであれば帝都大学入学には高校は開城高校がいいと判断する。だけど、私は智紀に高校生の間だけでもいいから、αをこす努力なんてしなくても良い、そんな時間を与えてやりたかった。だから、智則に選ばせた」

この男は、智則に大した関心も示さず、それもあって、智則は優の父猛に対して父性を見ていたように思う。だが、意外にも智紀の父親として悠一なりに悩み、自分なりの選択をしていたのか。

智則に通じでなければ意味ねーよと優は思った。それは盛大なブーメランではあるがそこには気がつかない

「ちょうどよかった。君にお願いがあったんだ。智紀は普通のつまりはβばかりの社会に出させる。意味わかるよね」

「………マーキングを止めろということですか」

「そういうこと。アルファのマーキングは一部のベータには脅威だし、あの子には本当にそういうの関係ない時間を味合わせてやりたいんだ」

「………」

自分が好意を持つものに対してマーキングを行うことでアルファは安定が保てる。これはアルファの位が高いほど、その傾向は強くなる。
悠一はαとしては、平均か下位よりだ。番に対する執着もそのぶん弱い。上位である優のこのマーキングにもあまり共感は示せないのだろう。

「智則が猛さんに憧れて、それで努力をした。彼は素晴らしいし、そこまでは良い。だが、智紀はきみを越えようと頑張った。頑張りすぎた。手足に血豆ができ、猛さんとの鍛錬で体中に打撲痕、食事を撮る気力体力も無いが食べなければ体がもたないから時に点滴もしながら、吐いても食べていた。けれど、君は………それを見ているだけしかできない親の気持ちって分かる?普通のβばかりの小学校に行かせていたら違ったのだとどれだけ後悔したか。もう、解放してやってくれ」


ああ、またか。
あの頃の優の幼すぎる行動が、身勝手な行動が今返ってきたのだ。

そうだ、『失礼がないように稽古場では白を着るべきだ』そう言っていた智則がいつからか黒ばかり起きるようになった。そして長袖長ズボンになった。父が滑る対策に着用させていたと思っていたが、もしかしたら違ったのかもしれない。黒い靴下は血豆を隠すために、長袖長ズボンは打撲痕を隠すためだったのかもしれない。

自分の息子が幼馴染を超えるために頑張っている。その幼馴染は息子の努力も知らずに怠けている。
けれど時折、優と道で合っても悠一はそんな話は全くしなかった。ただただにこやかに、内心色々思っていたであろうに。

「わかりました」

優に言えたのはそれだけだった。





だけど、違う対応をしていたら、どんな未来があったのだろうか、

優はこの時のことをよく思い出すのだ。




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