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エイリアンー優
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『俺の恋愛対象はβだけだよ。他バースとの恋愛などあり得ない』
智則の言葉に、あの日の後悔を思い出した。優が、これを淡い思い出に変えられる日がいつか来るのだろうか
智則が稽古場に来なくなって暫くたったころ、優の父に会いに智則がきた。
なんの相談だろうか、客間の扉の影で気配を殺してそっと盗み聞きをした。多分、父にはバレてはいるのだろうけど。
「αに告白されました。そんな感情もないので断ったのですが、お試しでもいいと。でも、僕は……αが………」
父が智則の言葉を遮る
「それが、正確だ。覚悟があるならいいが、そうでないなら、お試しすらやめておけ」
「感情も、なのか、僕は優達をみてると分からなくなる」
「何度もいうが、αは狡猾で純粋で」
αが、何だと言いかけたのか、それに、どいつが俺の智則に告白したのか。俺が何だというのか
苛ついてしまったせいか、智則に気づかれた
「いつからそこに?」
「今着たばっか」
「……そう。叔父さん、ありがとうございました。今日はもう帰ります」
ペコリとお辞儀をして、智則は去った。
「……なんで、父さんばっかり。俺に頼れっつーの」
「ま、大人魅力ってやつだろう」
ジト目で父を見る。まあ、確かに?イケメンだし、落ち着きはあるし、……いやいや、肯定してどうする。
「智則は何を言いかけたの?」
「………お前には、理解できんよ。それに、わからない方がいい事もある」
「決めつけるなよ!」
「まだ、お前は小さい。俺はお前にまだいらないものを見せたくない」
「……でも、智則が見ている世界なんだろ。俺は智則が何を考えているのか、知りたい」
父がじっと見つめてきた。目を逸らさず見返してやる
軽くため息をつかれた。
「明日の朝、お前に鍛錬メニューを渡す。それが消化できるようになったら、教えてやる」
父が持ってきたメニューは凄かった。初日は朝のメニューだけでクタクタになり、学校を遅刻した。なんの嫌がらせだ。
それでも、文句も言わず、続けていった。
こなせるようになり、父に報告した。
「そうか。そのメニューは、智則がお前に挑めるようおれが組んだやつだ」
「………智則が」
翌日、智則の事を考えながらメニューをこなした。
分かってしまった。
智則はβなのだと。
こんなメニューを熟しても、適当に鍛錬していたαの優には敵わなかった。
寧ろ、こんなこんなメニューを熟しても、あの程度までしか身体能力が上がらないのか。一睡もできなかった優にストレート負けする身体。まるで、そう、まるで、同じ人間なのに、別の貧弱な生物のようだ。
………
そうか、智則からしたら俺が別の生物に見えたんだ。化け物、ではないけれと、自分と異なる生物。
だから、優と意見が合わない時に、直ぐ折れる。理解出来ない生物との口論なんて無駄だだから。
あの日、智則の中で俺は………
母が入ってきた。
父に様子見を頼まれたのだろう。
「なあ、母さん。なんであの時、智則に部屋に行くように伝えたの?」
「智則君の努力は知ってたから、ペナルティー位与えてもいいかなって。智則君が勝てば、貴方にとっても良い事になるし。母さんも分かってはいたつもりただったけど、あんなにも努力する智則君をみていたら、夢を見ちゃったのね、努力すればβだってαを超えられるって、そしたらΩだって努力をすればって。バースなんて、超えられる」
「………」
あの日、勝負に勝って喜んでいたのは優だけだった。母は泣いていて、父が慰めていた。その父も苦しそうだった。智則の拒絶をいずれ優が知る日がくるから。αの伴侶への想いは深く繊細だ。智則の拒絶に優が耐えられるのか父親として、心配をしたのだろう。父も智則に勝ってほしかったのだ。だからこそ特別メニューに個別指導。前日に我が家に泊まらせて。ただ、αの想いもわかるから母の様に拷問な一夜を過ごさせる事までは画策しなかった。
でも、だって、そこまで重要な勝負だと思ってなかったのだ。
戻れるなら試合前に戻りたい。
でも、戻れたとしても、態と負ける?それが正しいのか?
………違う
鍛錬をさぼらず、智則と同じだけの努力をしていたら、智則は負けても、αをエイリアンの様に思うことはなかったのはずた。
全て、自分が悪かったのだ………。
智則に壁を作られた日から、優は努力をするようになった。
今更、過去は変えられないのだ。
ただ、将来、『あの時、努力をしておけば良かった』と、また思いたくないのだ。
そうして、中一になった今、周囲には優に敵うものは皆無となった。
『俺の恋愛対象はβだけだよ。他バースとの恋愛などあり得ない』
智則の中で、αはやはりエイリアンのままだった。
智則の言葉に、あの日の後悔を思い出した。優が、これを淡い思い出に変えられる日がいつか来るのだろうか
智則が稽古場に来なくなって暫くたったころ、優の父に会いに智則がきた。
なんの相談だろうか、客間の扉の影で気配を殺してそっと盗み聞きをした。多分、父にはバレてはいるのだろうけど。
「αに告白されました。そんな感情もないので断ったのですが、お試しでもいいと。でも、僕は……αが………」
父が智則の言葉を遮る
「それが、正確だ。覚悟があるならいいが、そうでないなら、お試しすらやめておけ」
「感情も、なのか、僕は優達をみてると分からなくなる」
「何度もいうが、αは狡猾で純粋で」
αが、何だと言いかけたのか、それに、どいつが俺の智則に告白したのか。俺が何だというのか
苛ついてしまったせいか、智則に気づかれた
「いつからそこに?」
「今着たばっか」
「……そう。叔父さん、ありがとうございました。今日はもう帰ります」
ペコリとお辞儀をして、智則は去った。
「……なんで、父さんばっかり。俺に頼れっつーの」
「ま、大人魅力ってやつだろう」
ジト目で父を見る。まあ、確かに?イケメンだし、落ち着きはあるし、……いやいや、肯定してどうする。
「智則は何を言いかけたの?」
「………お前には、理解できんよ。それに、わからない方がいい事もある」
「決めつけるなよ!」
「まだ、お前は小さい。俺はお前にまだいらないものを見せたくない」
「……でも、智則が見ている世界なんだろ。俺は智則が何を考えているのか、知りたい」
父がじっと見つめてきた。目を逸らさず見返してやる
軽くため息をつかれた。
「明日の朝、お前に鍛錬メニューを渡す。それが消化できるようになったら、教えてやる」
父が持ってきたメニューは凄かった。初日は朝のメニューだけでクタクタになり、学校を遅刻した。なんの嫌がらせだ。
それでも、文句も言わず、続けていった。
こなせるようになり、父に報告した。
「そうか。そのメニューは、智則がお前に挑めるようおれが組んだやつだ」
「………智則が」
翌日、智則の事を考えながらメニューをこなした。
分かってしまった。
智則はβなのだと。
こんなメニューを熟しても、適当に鍛錬していたαの優には敵わなかった。
寧ろ、こんなこんなメニューを熟しても、あの程度までしか身体能力が上がらないのか。一睡もできなかった優にストレート負けする身体。まるで、そう、まるで、同じ人間なのに、別の貧弱な生物のようだ。
………
そうか、智則からしたら俺が別の生物に見えたんだ。化け物、ではないけれと、自分と異なる生物。
だから、優と意見が合わない時に、直ぐ折れる。理解出来ない生物との口論なんて無駄だだから。
あの日、智則の中で俺は………
母が入ってきた。
父に様子見を頼まれたのだろう。
「なあ、母さん。なんであの時、智則に部屋に行くように伝えたの?」
「智則君の努力は知ってたから、ペナルティー位与えてもいいかなって。智則君が勝てば、貴方にとっても良い事になるし。母さんも分かってはいたつもりただったけど、あんなにも努力する智則君をみていたら、夢を見ちゃったのね、努力すればβだってαを超えられるって、そしたらΩだって努力をすればって。バースなんて、超えられる」
「………」
あの日、勝負に勝って喜んでいたのは優だけだった。母は泣いていて、父が慰めていた。その父も苦しそうだった。智則の拒絶をいずれ優が知る日がくるから。αの伴侶への想いは深く繊細だ。智則の拒絶に優が耐えられるのか父親として、心配をしたのだろう。父も智則に勝ってほしかったのだ。だからこそ特別メニューに個別指導。前日に我が家に泊まらせて。ただ、αの想いもわかるから母の様に拷問な一夜を過ごさせる事までは画策しなかった。
でも、だって、そこまで重要な勝負だと思ってなかったのだ。
戻れるなら試合前に戻りたい。
でも、戻れたとしても、態と負ける?それが正しいのか?
………違う
鍛錬をさぼらず、智則と同じだけの努力をしていたら、智則は負けても、αをエイリアンの様に思うことはなかったのはずた。
全て、自分が悪かったのだ………。
智則に壁を作られた日から、優は努力をするようになった。
今更、過去は変えられないのだ。
ただ、将来、『あの時、努力をしておけば良かった』と、また思いたくないのだ。
そうして、中一になった今、周囲には優に敵うものは皆無となった。
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